第10魔:やっぱギル×セレは尊いにゃ~
「……おはよ。相変わらずあなたは何の悩みもなさそうで、毎日幸せそうね」
「えへへ~、セレナさんに褒められちゃった~」
褒めてねーわ!!!
いい加減行間を読めよ!!!
この子はぶぶ漬け出しても帰ってくれなさそう(迫真)。
ハァ~、やっぱこの子だけは、どうしても苦手だわぁ。
「あ、そうだ! 今日はセレナさんに、是非お渡ししたいものがあって! はい、これどうぞ!」
「え? ……!」
ぽやちゃん(ぽやぽや魔法使いちゃんの略)が差し出してきたのは、一枚のクエスト依頼書だった。
「こ、これは……!」
「へえ、『アンノウン』の討伐依頼か。俺、初めて見たよ」
ギルが翠の瞳を、キラキラ輝かせている。
「私も流石にアンノウンは初めてよ」
アンノウンというのは、冒険者ギルドに登録されていない、新種の魔獣のことだ。
大半の魔獣が調べ尽くされた今の世の中で、新種が見付かるのは奇跡に近い確率。
もしかしたらこれ、最近キングオークとかのレア魔獣の出現が頻発してることと、関係あったりするのかしら?
この数ヶ月だけで、かれこれ狩ったキングオークの数は、20体を超えるもの。
複数のキングオークに襲われた村が壊滅したなんてこともあったし、キングオークによる死傷者の累計は、100人はくだらない。
――まあ、何にせよ、アンノウンの討伐となれば、凡人にはとても任せられないわよね。
どんな未知の力を持ってるかもわからないんだから。
一丁ギルドの稼ぎ頭である、私たちが華麗に討伐してやろうじゃない!
「よし、この依頼、受けるわよ、ギル」
「ああ、了解、セレナ!」
「わあ! セレナさんならきっと楽勝ですよね! イイ報告楽しみにしてますね~」
何だかぽやちゃんの手のひらで踊らされてるみたいで若干癪だけど、まあ背に腹は代えられない。
これも仕事だしね。
私は依頼書を、受付のキャミィさんのところに持って行った。
「これ、受注します」
「にゃ! やっぱりギルセレが受けてくれるのにゃ。二人なら安心して任せられるにゃ」
キャミィさんも、私たちが受けると予想してたのか。
この人の先見の明も、相変わらず恐ろしい……。
それにしても、今日もキャミィさんの頭には、フワフワの猫耳がぴょこぴょこしていて、何とも愛らしいわ……!!
嗚呼、いつかキャミィさんの猫耳を、存分に撫で回したい――。
「……でも、くれぐれも気を付けてほしいにゃ」
「「――!」」
常にニコニコしてるキャミィさんが、珍しく神妙な顔をした。
「今回のアンノウン出現と、最近のレア魔獣頻出は、無関係ではないと思うのにゃ」
「ああ、キャミィさんもそう思われますか。それは私も感じてたとこです。何かしらの理由で、急激に生態系が変わったんですかね?」
「――もしくは、誰かが意図的に変えたか、にゃ」
「――!」
そんな――!
「でもそんなこと、本当に可能なんですか? 仮に可能だとして、いったい何の意図があって……」
「それはまだ何とも言えないにゃ。――ただ、もしこれが人為的なものなんだとしたら、多分『闇ギルド』の仕業だにゃ」
闇ギルド――!
暗殺者ギルドや人身売買ギルドといった、反社会的なギルドの総称。
所謂『悪の組織』的なものだ。
……やれやれ、随分フィクションめいた展開になってきたわね。
「ハハ! 上等じゃないですか。これが闇ギルドが仕込んだことなんだとしたら、天才である私とギルが、そいつらの企みごと灰燼に帰してやりますよ! ねえ、ギル」
「ああ。任せてください、キャミィさん」
「にゃふふ、やっぱギル×セレは尊いにゃ~」
キャミィさん!?
今、『ギル』と『セレ』の間に、『×』を入れてませんでした!?
――こんな感じで、アンノウンの討伐依頼を受注した私とギルは、アンノウンの目撃地点である、ニャッポリート大森林へと向かった。
「何だか懐かしいわね」
「うん、そうだね」
ニャッポリート大森林に着いた私は、思わずそう感想を漏らした。
――数ヶ月前、この場所でギルと出会い、パートナーになった。
第一印象は、両手に盾を持ってる変な奴だったけど、まさか今じゃこうして、頼れる相棒になるなんてね。
ホント人生って、わからないものだわ――。
「グロロロロロオオオオ」
「「――!!」」
その時だった。
前方から、聞き覚えのない魔獣の鳴き声が響いてきた。
――どうやらアンノウンのお出ましみたいね。
「俺が行く!」
「ええ、お願い!」
いつものように、ギルが両手に盾を構えながら、鳴き声のしたほうに突貫する。
私はその後を、一歩引いた位置から、慎重について行った――。
「グロロロロロオオオオ」
開けた場所に出ると、ギルと同じくらいの背丈の、全身が銀色の分厚い鱗で覆われた、二足歩行のゴリラみたいな魔獣が、ギルと相対していた。
間違いない、アイツがアンノウンね――。
「俺が攻撃を引き付けるから、セレナは魔法を頼む!」
「了解!」
さあて、一丁ブッ放しますか!




