眼鏡屋は、等価交換をもちかける 4
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「それから、救急病院にかけつけた俺は
人工呼吸をつけ青白い顔をした祖母に会いました。
心筋梗塞で、意識もなく・・・・その数時間後に亡くなりました。」
「そうだったんですね・・・」
保さんは、静かに頷きながら初対面の俺の話を親身になって聞いてくれていた。
祖母が亡くなって一か月、ずっと心の中に溜めていた想い。
「俺は・・・謝りたかったのに
酷い事を言って、ゴメン・・・って・・・
婆ちゃんの作る飯・・・好きだったよって伝えたかったんだ」
謝罪の想いは募るばかり。
でも、その言葉を伝えたい人はもういないことに、俺は悲しみさえ感じなくなっていた。
保さんにポツポツと溢す言葉が、頑なになっていた心を緩々と解いていく。
ポロポロといい歳をした男が涙を流すのを、保さんは落ち着くまで待っていてくれた。
「すみません・・・いい男が泣いてしまって」
「男が泣いたらいけないっていう決まりはないよ」
ポンポンと俺を落ち着かすように頭を撫で、俺が笑みを返すと保さんは
「一つ提案があるんだ」と持ちかけた。
「僕の目は色が分からず、眼鏡屋をやるには少し不自由をしてるんだよね。
手伝ってくれる人を探していたんだ。
願いを叶えるには、それなりに対価が必要だから・・・
キミが ここでバイトをしてくれるなら・・・
今、キミが会いたい人に会わせてあげますよ」
ボサボサの頭で、接客業と思えない風貌。
ふんわりとした言葉使いに、声色。
死んだ人に会わすという不思議な提案をする、
限りなく怪しい彼の言葉に、俺は何故か考える間もなく「お願いします」と返事をしていた。