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眼鏡屋は、色のない夢をみる  作者: 水野綾
眼鏡屋は、等価交換をもちかける
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3/16

眼鏡屋は、等価交換をもちかける 3

「これをかければ、婆ちゃんが視えるのか?」


半信半疑で、受け取り俺はその眼鏡をかけた。

何の変りもない、普通の眼鏡で特に度も入ってないようだった。


「特に、何も変わらないけど・・・」


「そうですね、伊達メガネですから」


ボサボサ頭をかきながら、悪びれた風もなく笑顔を向けてくる。


「ばっ・・・馬鹿にしてるのか!!!俺は帰る!!」


「緊張を取ろうとしたんですが・・・失敗でしたかね・・・」


「は?」


(こいつ、絶対頭がおかしい!!)

うむっと、腕を組む保さんを残してドアに手をかけた。


「理くんに怒ったり悲しんだりしてないって伝えてくれって

言ってましたよ」


「え?」


「理くんのお婆ちゃんからの伝言です。

怒らせてしまってすみませんね。

ほら、お茶を淹れなおしますから座ってください」


理さんの不思議な雰囲気と、どこからか香る祖母がまとっていたお線香の匂いにつられ、俺は渋々腰をおろした。


お茶が机に置かれ、勧めれたお茶に口をつけると

どこか懐かしい味がした。


「懐かしい・・味がする」


「でしょ、キミのお婆ちゃんおススメのお茶だからね」


その言葉を疑問に思いお茶を置くと、保さんは”本題にはいろうか”と切り出した。


「色々、疑問に思うところはあるだろうけど

理くん、キミが悩んでいたことを聞かせてくれるかい?

キミの悩みを取り除いてあげる事が、キミのお婆ちゃんとの約束だからね」


穏やかに微笑む保さんと懐かしいお茶の香りに、俺はいつの間にか警戒心を解き

少しづつ祖母との思い出を語り始めた。


**


共働きの両親より俺の幼少の記憶は、祖母との記憶で溢れていて

何処に行くのも一緒で、生みの親は母で育ての親は祖母だった。

祖母は昔人間で、躾も厳しかったけどその分大事にもしてくれたから

俺は祖母の事が大好きだった。


もちろん、高校に通う俺の弁当も朝早くから祖母が入れてくれていた。


炊き立てのご飯と魚の焼ける香ばしい香りで、目を覚ますのが日課で

今思えばとても贅沢な事だったと思う。

弁当は決まって、焼き魚に、玉子焼き、煮物、野菜のお浸しという

健康食が並んでいた。


「理の弁当って地味だよな」


ふっと言われた友人の言葉。

そのどれも、好物だったけど友人の弁当に並ぶ鮮やかな色とは違い

地味な色合いに、俺は恥ずかしさ覚えた。


でも、あの頃の俺はそれがもう食べれなくなるなんて思ってもいなくて、

その贅沢が当たり前で、ありがたみなんて分からなかった。


だから、俺は祖母を傷付けた。酷い言葉で。

大事なことは、無くして気付く・・・・よく言ったものだと思う。



「理、お弁当忘れてるよ」


学校へ行こうと、玄関に向かった俺に祖母はお弁当を抱えてきてくれた。


「いらない」


「どうして?ほら、今日も理の大好きな玉子焼きいれてるからね」


「・・・・・」


「理?ほら遅刻するよ」


押し付けられた弁当を払いのけると、弁当箱はカランと悲しい音をたてた。


「そんな地味な弁当食えるかよ!!」


玄関を飛び出た時一瞬振り返ると、弁当箱を拾う悲しそうな祖母の表情がみえた。

そして、その日の夕方 家に帰る足が重たく街をぶらつく俺に

母から連絡がはいった。


祖母が、倒れたっと・・・・・



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