眼鏡屋は、しゃぼん玉の夢をみる 3
「やっぱり、理くんは鋭いな。
詳しくは、話していなかったけど出会いが出会いだからね」
ポリポリと頭をかきながら、保さんは困ったように笑った。
”会いたい人に会わせてあげる”と言って、亡くなった祖母に保さんは会わせてくれた。会わせてくれたっという言葉には語弊があるかもしれない。祖母の霊に会ったのか、それとも幻をみたのか定かではないし保さんもその事については触れなかった。
確かな事は保さんがだしてくれた料理は、どれも祖母の得意料理で祖母の味がした。
「あれは・・・不思議な体験でしたから」
「ねぇ、理くん。僕の事怖くない?」
黒縁眼鏡の奥は、いつもの通り柔らかく弧を描いていたけど、どこか寂しげだった。
保さんと知り合って、数か月。
その間にも不思議な体験をいくつかした。
俺たちには見えない何かを、保さんには見えている。
それが何かは分からないけど・・・
でも、不思議と保さんを怖いとも、彼が特別だと思った事はなかった。
のんびりとしたバイト先の店主。
「怖くないですよ。ってか怖かったらバイト続けていませんから」
「そっか・・・・・助かるよ。
僕は、みんなと違って不思議なものがみてるんだ。
その事は、いつか話すから。それまで待ってもらえるかな?」
「いいですよ。保さんは保さんですから」
色のない世界で、保さんが見ているのもが気にならない訳じゃない。
でも、それを追求しようとは今は思わなかった。
今の俺があるのは、まぎれもなく保さんのお陰だから・・・・・
「ほら、ラーメン奢ってくれるんですよね?
餃子と半チャーハンもつけてくださいよ」
「え・・・っと・・・任せて!」
ポケットから慌てて財布を取り出し中身を確認する保さんの背を押す。
フワフワと背後から飛んでくるしゃぼん玉に押されるように。
**
「しゃーぼん玉飛んだ♪ 屋根まで飛んだ~屋根まで飛んで~壊れて消えた♪」
父親の膝に座り、光に反射して虹色に輝くしゃぼん玉をみるのが好きだった。
歌を歌うと、”上手いね”と大きな手で頭を撫でてくれる。
その時だけ、虐められてるのを忘れられる。皆に見えないものが見える僕を、同じ年の子は”嘘つき”だと僕を馬鹿にした。
「人に見えないものが見えるなんて、凄い事だよ。何も気にすることはない」
優しい父。大好きだった。
キラキラ光るしゃぼん玉
一つが紅く染まる・・・・
母の紅いネイルの色に・・・・・
しゃぼん玉には、いい思い出と嫌な思い出が入り混じる
泡沫のように、消えればいい・・・
大好きな父が消えた様に・・・あの人も。




