眼鏡屋は、しゃぼん玉の夢をみる 2
「自分から言い出しておいて、なんてざまですか」
「・・はぁはぁ・・・。いや・・だって・・ほら」
俺が公園についた時、保さんはスタート地点から公園までの中間地点にいた。それから、暫くして保さんは公園に着いたが肩で息をして言葉さえままなっていない。
「若くないのに、無理するからですよ・・・」
軽くため息を漏らす俺に何か言いたげに口をパクパクとさせたが、それさえ言葉になっていなかった。
「ぷは、保さんもう少し体力つけた方がいいですよ」
「眼鏡屋は、体力いらないからいいんだよ!!」
息を整えた保さんが、俺に抗議しながら公園の入口にあるベンチに腰をかけ、しゃぼん玉をする親子に目をやった。
「飯、買いに行かないんですか?」
「うん・・・まだちょっとね、もう少しだけ付き合ってくれるかな?」
柔らかく微笑む、保さんの横へ腰かけた。
昔、父親とやっていた。と言っていた保さんは、もしかしたら父親の事を思い出しているのかもしれない。そう思い俺は声をかけず、風に舞い踊るしゃぼん玉を一緒に眺めていた。
あの岡田眼鏡店は、亡くなった父親の後を継いだと以前保さんから聞いたから。
「そろそろかな・・・」
保さんは公園の時計に目をやり、ベンチから立ち上がる。
「行こうか、理くん」
「え!あっはい」
保さんの行動に不思議に思いながらも、俺もベンチから腰をあげ保さんの後に続いた。
いつものようにゆっくりな足取りで公園の入り口に向かう。
風に舞うしゃぼん玉が俺たちを抜かした時、背後から女性の叫び声響いた。
「まぁくん!!危ない」
その声に、振り返るとしゃぼん玉を追って子供が俺たちの横を駆け抜けようとしていた。
公園の前は、歩道のない道で車が行きかっている。子供を追いかけるように両親が駆け寄っていたけど、間に合わない・・・
そう思い、俺が手を伸ばそうとした時、保さんは既に体を屈めて公園の外に飛び出そうとする子供を抱き抱えていた。
「飛び出したら危ないよ、僕」
そうニッコリと微笑み、ポケットから飴玉を一つ取り出し男の子に渡し、
心配そうに駆け寄る両親に子供をたくした。
「すみません、助かりました」
「いえいえ、今度から目を離さないであげてくださいね」
そう言いながら、子供に手を振り 「じゃ、行こうか」と俺たちは公園をあとにした。
「あーさっきの競争負けたから、僕がお昼奢らないといけないね。
買って帰るんじゃなくて、食べて帰る?
美味しいラーメン屋知ってるんだよ」
「あー。いいですね・・・・・」
浮かれる保さんに生返事を返すと、保さんは心配そうに俺の顔を覗きこんできた。
「どうしたの?」
「・・・・保さん・・・」
「ん?」
俺は、子供の助けた時の保さんの行動に疑問をもっていた。
運動神経は、明らかに俺より劣っている保さんが両親の声を聞いて俺より早く動けるはずがない。
保さんは、両親が叫んだ時にもう振り返り体を屈めていた。
子供が、しゃぼん玉を追いかけて公園から飛び出すって知っていたとしか思えなかった。
「子供が、飛び出すって・・・知ってたんですか・・・
だから、あの公園に行こうっていったんですか?」
俺の問いかけに、保さんは優しく微笑んだ。




