眼鏡屋は、しゃぼん玉の夢をみる 1
俺 津田理は、ひょんなことから不思議な力を持った、店主岡田保さんが経営する眼鏡屋でバイトをすることになった。
保さんは、病気で色が判別できないモノクロの世界で生きる代わりに、俺たちが見えない不思議なモノが見えていて、その傍らで俺自身その不思議なモノを感じていた。
「は~あ。いい天気ですね」
「そうですね」
2月も半ばになると、寒いながらも日は長くなり陽気がよくなる。
休みの今日は、朝からバイトに入っていた。「ねぇ、お昼ご飯買いに行こう」と保さんの急な提案で、休憩中と看板をだし店を二人して空けていた。
何故か、近くのスーパーやコンビニにはいかず「散歩がてら、少し遠いところへ行こう」と川沿いを歩いていた。
確かに、天気がいい。ちらほらの菜の花も咲き始め、道行く梅の木は蕾を膨らませていた。
二人他愛もない話をしながら歩いていると何処からともなく、光を反射して虹色に光るしゃぼん玉が飛んできた。
保さんは、それに嬉しげに手を伸ばす。
「懐かしいな」
手が触れそうな所で、しゃぼん玉は弾けてしまった。
「残念」と肩を落とす保さんの背後から無数のしゃぼん玉が風に乗って飛んでくる。
飛んでくる先をみると、川を挟んだ公園で小さな子供が両親としゃぼん玉をしていた。
「あんな所からでも、飛んでくるんですね」
「そうだね。僕も昔よく父としたな。
キラキラと虹色に光るしゃぼん玉を追いかけるのが好きでさ」
「虹色に・・・・光る・・・」
俺が疑問に感じてるのを感じた保さんは、笑みを溢しながら自分の目を指さした。
「僕の目、元々は色がみえていたからね。だから、何色っと言ってもらえれば、記憶の中でなんとなく色のイメージは分かるよ。
まぁ幼い頃過ぎて、アバウトな感じなんだけどね」
「そうなんですね。病気で・・・っていうのは聞いてたんですが
どこまで踏み込んでいいか分からなくて・・・」
すみませんと謝る俺に、「遠慮しなくていいのに」と保さんは微笑む。
そして、癖だらけの髪を揺らしながら、しゃぼん玉を追いかけ始めた。
俺より10歳も離れているのに、無邪気な子供にみえ思わず笑ってしまう。
「あ!何笑ってるの!!」
「・・・なんでもないですよ」
「むむうう・・絶対僕を馬鹿にしてるな・・・
そうだ!理くん、あの公園まで競争ね!!」
「え?ちょっと保さん昼飯は?」
「僕に買ったら、お昼ご飯奢ってあげるよ」
と俺の返事を聞く前に、保さんは走り出していた。




