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伝説の勇者様!? ……いえ、補助職の僧侶です  作者: 田山照巳
第三章 ポッシの山道 編

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第十六話 仲間

──俺達は巨大カマキリを退治し、安堵のひとときが流れていた。山小屋からセップが出てくる。

 

「テルアキ、ユナ、サキ、ご苦労じゃったな。この山小屋を守ってくれたこと、礼を言わせてもらうぞ」

「いえ、当然のことです」

 

「今日は戦闘で疲れたであろう。大したもてなしはできぬが、今夜はここで休んでいくといい」

「わぁ、いいんですか? ありがとうございますっ! サキちゃん、一緒に寝よー!」

 

「馬鹿かお前はっ! 何でそうなるんだよ!!」

「ほっほっ。ユナ、サキと仲良くしてやってくれ」

 

──こうして俺とユナは、セップの山小屋で一晩泊まることになった。夕食を終え、夜を迎える。俺とユナは警戒のため、山小屋の周囲を見回りしていた。

 

「僧侶様、ココは星が綺麗だね」

「ああ、そうだな。街に比べると明かりが少ないからな。……ちょうどあの辺りに、二人座れそうな大きな木の枝があるな。上って星でも眺めよう」

 

 俺はユナの腕を掴み、ムーヴを使って木に上り、大きな枝に座った。二人で星を眺めて話をする。

 

「僧侶様? 枝の端に近いと怖いから、……もう少しそっちに寄るね」

 

 ユナは俺と肩が触れ合うくらいまで近づいた。

 

(……なっ!? ち……近いっ!?)

 

 俺は緊張と喜びを悟られないように、星空を見上げる。ユナが会話を続ける。

 

「この綺麗な星空も、魔物が増えたら安心して見られなくなっちゃうんだね」

「そうだな。俺に魔王討伐の協力がどこまでできるか分からないけど、少しでも役立てるよう頑張らないとな」

 

「僧侶様ならきっと大丈夫だよ。すっごく強くなって……、勇者様と一緒に魔王をやっつけちゃったりして」

「おいおい、簡単に言うなよ。でも今日、クランの毒の治療をして自分の力不足を思い知ったよ。まだまだ修業と経験を積まないとな」


「うん、そうだね。僧侶様が頑張るなら、私ももっと頑張るよ。目指せ! 大魔法使い!! みたいな」

「ははっ。そうなるといいな。でも、今日俺はひとつ決めたことがあるんだ」

「何を決めたの?」

 

「魔法は、キャラクターレベルに応じた『魔力』と魔法の使用回数に応じた『熟練度』を上げることで威力が増すだろう?」

「うん、そうだね」

 

「だから、俺は今日から毎晩眠る前に、MPが無くなるまで魔法を使って熟練度を上げていこうと思うんだ。そうしたら、毎日少しずつでも『熟練度』を上げられるだろう?」

 

「……そっか。努力の積み重ねは大切だもんね。そういう努力ができるのは凄いなぁ。ねぇ、僧侶様?」

「うん? 何だ?」

「何か……、カッコイイよっ」

 

……ユナの笑顔が俺の心に突き刺さる。

 

(……なっ!? か、可愛いっ!?)

 

「ば、馬鹿っ! そういう台詞をいきなり言うんじゃない!」

「あはは。僧侶様、ちょっと照れてるぅー」

 

……ユナは人差し指で俺の胸元をツンツンと押しながら笑顔を見せる。

 

「……あ! 当たり前だろっ。お前みたいな可愛い女の子に、そんなことを言われてっ!普通でいられるかっ!」

「わわわっ! 僧侶様こそ、いきなり何言っちゃってるのっ!?」

 

「お返しだよ。どうだ? 不意にこんなことを言われたら照れるだろ?」

「もぅっ! 僧侶様の意地悪っ!」

 

 ユナは顔を赤くし、下を向く。

 

(もぅっ、僧侶様、『可愛い女の子』だなんて! ……ズルイよっ)

 

「ははっ。さて、そろそろ山小屋に戻るか。周囲に魔物もいないみたいだしな」

 

──その頃、サキはセップの部屋の前にいた。

 

「セップさん、サキです。お話したいことがあるのですが……」

「サキか? 入りなさい」

 

……ガチャ。サキが扉を開けて部屋に入る。

 

「どうかしたかの? こんな夜に改まって……」

「セップさん、あの、アタシ……。ココを出て行こうと思います」

 

「そうか。もう成人の年齢を超えたからな。愚問かも知れぬが、ココを出てどうするのじゃ?」

「はい、あいつら……、テルアキとユナについて行こうと思います」

 

「……テルアキとユナは何と言っておる?」

「いえ、まだ二人には話していません」

 

「そうか。いい返事がもらえるといいな。儂の方は了解じゃ。そろそろ二人も戻ってくるじゃろう。早速、話してみるといい」

 

 俺とユナは周囲の見回りを終え、セップの部屋に戻った。

 

「セップさん、ただ今戻りました」

「テルアキ、ユナ、入りなさい」

 

 二人で部屋の中に入る。

 

「周囲に魔物はいませんでした」

「うむ、ご苦労じゃったな。ところでテルアキ、ユナ……、サキから大切な話があるそうじゃ」

 

「えっ? そうなんですか? サキ、どうかしたのか?」

「あ、あぁ……、その、何て言うか……」

「……うん? どうしたの? サキちゃん」

 

 サキは照れくさそうに目を閉じ、俯いたまま大きな声を出した。

 

「……あぁっ、もぅっ! ……頼むっ! アタシをっ、お前らの仲間にしてくれ! お前らと一緒に行きたいんだよっ!」

「えっ!?」

「サ、サキちゃん!?」

 

 俺とユナは互いの表情を見た。それだけで答えの確認は充分だった。

 

「サキ! そう言ってくれてありがとうな。これからよろしく頼むぞ!」

「わーいっ、サキちゃん! 大好きー!」

「わっ、ユナ! 抱きつくなっ!」

 

 三人のやりとりを見ていたセップも喜びの表情を浮かべている。

 

「ほっほっ。サキ、よかったのう」

「セップさん、アタシ、アタシ……」


「……サキ、皆まで言うな。成人になれば出ていくのがココの決まりじゃ」

「うぅ……セップさん…。今まで……育ててくれて、ありがとうございましたっ!」

 

「うむ。そのひと言だけで充分じゃの。サキ、お主は優しい子じゃ。今まで小さな子供達の世話をたくさんしてくれてありがとうな。これからお主には様々な出会いがあるじゃろう。お主を大切に想う者、お主が大切に想う者……。そうした人々との出会いこそ、お主の宝じゃ。出会いと人を大切にな。……いつか、お主に大切な家族ができて、儂に会わせてくれる日がくることを楽しみにしておるぞ」

 

「……うぅ、セップさん。分かりました!」

「テルアキ、ユナ、サキのことをよろしく頼むな」

「はい! セップさん」

 

「他の子供達には明朝伝えようかの。今夜はゆっくり休むといい」

「わーいっ! サキちゃん! 一緒に寝よー!」

「だからっ! 何でそうなるんだよ!」

 

──翌朝、セップは子供達を集合させた。

 

「みんな、おはよう。突然じゃが、サキの話を聞いてくれ」

 

 サキは皆の前で深呼吸し、ゆっくり話し始める……。

 

「皆、いきなりで済まないけど、アタシはココを出ていくことにした。これからは、テルアキ、ユナと三人で冒険をしようと思う」

「えぇっ!? サキ姉ちゃん、行っちゃうの!?」

「そんなっ! 寂しいよっ!!」

 

 子供達に囲まれるサキ。みんな別れを惜しんでいる。そんな中、クランが俺の方にやってきた。昨日、毒の治療をした女の子だ。

 

「テルアキお兄ちゃん! 昨日は魔法で治療してくれてありがとう! あのあと少しずつ良くなって、もうすっかり元気だよ!」

 

 どうやら毒の症状は完治しているようだ。

 

「私、お勉強好きなんだけど……、いっぱい勉強したら、テルアキお兄ちゃんみたいに魔法を使えるようになるかなぁ?」

「うーん……どうだろう? でも、魔法を使えるようになるといいな。しっかり勉強するんだぞ」

 

 俺はクランの頭を優しく撫でながら笑顔で言った。

 

「そしたらね!! 私も僧侶になって、……それでねっ!! ……お兄ちゃんのお嫁さんになるのっ!」

 

(……なっ、何っ!?)

 

 クランは俺の袖を掴みながら、とびっきりの可愛い笑顔を俺に向ける。

 

「……えへへ。よかったね、僧侶様っ! 女の子にプロポーズされちゃったよ?」

 

………ゴゴゴゴッ。

 

 笑顔のユナから、不穏な雰囲気が感じられる……。

 

「……おい、ユナ。俺の足を踏むな。そして、その足で強めにグリグリするのをやめるんだ」

「うん? あれ? 何かね……、そうしたい気分なの……」

 

 俺達の様子に気づいたサキが寄ってくる。

 

「ははっ。よかったなぁ、テルアキ。クランは今でもこんなに可愛いから、将来はきっと凄い美人になるぞ」

「なっ!? サキ! お前も変なことを言うなっ。で! ユナは俺に向けてブリザードを撃とうとするのをやめろっ」

 

「……あれ? うーん、何て言うかね……。僧侶様、照れてて顔が熱そうだから。冷たいの欲しいかな? ……と思って」

 

 皆との挨拶を済ませ、セップがその場をまとめる。

 

「ほっほっ。皆、サキと別れの挨拶は済んだようじゃの。サキ、元気でな。たまには顔を見せに来なさい」

「セップさん、ありがとうございます! では、そろそろ行きます。皆っ! 元気でなーっ!! セップさんの言うことをよく聞くんだぞ!」

 

「サキ姉ちゃん! バイバイー!」

「サキ姉ちゃん、元気でねーっ!!」


──こうして俺とユナは新しい仲間『サキ』と共に、港町ブレゼスを目指すのであった。

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