プロローグ 『未完の大魔導士』
始めたものを終わらせることが、ずっと怖かった。
だから少年は、完成直前のものばかりを抱え込んだ。
これは、その少年が十七年後――三百二十四の未完と、最後まで残した一件を背負い、世界の結末を選ぶ場面である。
※お急ぎの方は第一話から読んでいただいても構いません。
空を埋め尽くしていた白い軍勢が、同時に槍を掲げた。
数は――もはや、数える意味がない。
崩れた城壁の向こうから、罅割れた地平線の果てまで。白磁の鎧をまとった神兵が、雪原のように隙間なく並んでいる。
その頭上では、幾千、幾万もの光輪が回転し、重なり、噛み合い、空そのものを巨大な【世界術式盤】へ変えていた。
雲が消えた。
風が止んだ。
戦場から、赤も、青も、黒も失われていく。
残るのは、すべてを一つの正解へ塗り潰す白だけ。
世界そのものへ、ただ一つの結末を刻み込み、二度と選び直せなくするための光だった。
『【世界結着】マデ――十二秒』
未完の大魔導士レイル・アルヴァートの隣で、黒銀の髪が舞った。
そこに立つのは、人間ではない。
腰まで届く黒銀色の長髪。髪の間から伸びる猫科の耳。細身ながらも成熟した女性の身体を、半透明の精霊光と実体化した魔力繊維が形作っている。
白い肌の一部には銀色の獣紋が走り、肘から先と膝下は、実体と粒子の境界で淡く揺らいでいた。
腰から伸びる一本の環状尾は、戦闘演算へ入ると二条の光帯へ分かれ、無数の術式文字を空中へ描き出す。
獣の肉体特性を持ちながら、精霊のように実体化の密度を選び、魔導器のように世界を演算する存在。
半獣にして半精霊。
かつては腕輪の上で丸くなり、黒銀の猫としてレイルを見上げていた疑似人格。
【万式魔導環】が、十七年の記録と、【七環時獄】で積み重ねた七年分の経験を経て獲得した最終形態。
【|完全人型・半獣半精霊形態】――ニア。
金色の瞳の奥で、閉じ切らない七つの環が高速回転した。
『神槍、右方三。第一槍、対魂。第二槍、対術式。第三槍、対使用者。――単独迎撃ヘ移行シマス』
白い閃光が三本、空を裂いた。
ニアが大地を蹴る。
半透明だった脚が完全に実体化し、砕けた石床を踏み抜いた。黒銀の残光が跳ね、右手に形成された【精霊獣爪】が一本目の神槍を横から打ち払う。
切断ではない。
槍を構成する対魂術式の接続点だけを爪先で抉り、完成先を失わせた。
二本目には、二条へ分かれた環状尾が巻きついた。
尾の表面を走った術式文字が、神槍の構造を一瞬で読み取り、標的条件をレイルから上空の空間座標へ書き換える。
神槍は軌道を折り、何もない空で爆ぜた。
三本目だけがニアの頬をかすめ、レイルへ迫る。
「一発残ってるぞ」
『意図的デス』
「俺を囮にしたのか」
『否定。迎撃不要。アレハ――剣神ノ間合イデス』
「それ、リィナに言ったか?」
『言エバ反対シマス』
「言わずにやるのは、相談じゃない」
『使用者カラ学習シマシタ』
「そこを学ぶな」
赤栗色の閃光が、二人の間を駆け抜けた。
迫っていた神槍が斜めに両断される。切断面から遅れて紫電が噴き出し、白い破片を内側から吹き飛ばした。
「勝手に人の獲物を残さないで!」
白銀の軽装鎧をまとったリィナ・アルセイルが、雷を帯びた長剣を肩へ担ぐ。
濃紺の外套は何箇所も裂け、左頬に残る細い傷が白い光を受けて赤く浮かび上がっていた。
『最適配置デス』
「あとでその尻尾、ほどけないくらい固結びにしてやるから」
『脅迫ヲ記録シマシタ』
「今は戦闘記録だけ取って!」
『使用者及ビ剣神ノ会話傾向カラ、重要度ヲ高ク判定シマシタ』
「俺まで一緒にするな」
『レイルノ責任デス』
「そこだけ妙に流暢だな」
『十七年、学習シマシタ。貴方ガ責任ヲ取ラナイ場合、周囲ガ取ラサナケレバナラナイコトモ』
「それは私も覚えた」
「二人とも、今言うことか?」
「今じゃなきゃ、また倒れたふりして逃げるでしょ」
「倒れたふりじゃない。大体、本当に倒れてる」
「もっと悪い!」
ニアの唇が、ほんのわずかに弧を描いた。
機能として作られた表情ではない。
それを笑顔と呼べるようになったのが、いつからだったのか。
レイルには思い出せなかった。思い出せないほど長く、当たり前に隣へいた。
『【世界結着】マデ――十一秒』
黒髪の女性――【未完目録官】フィア・レコードが、宙に浮かぶ記録板を指で弾いた。
無数の札が開き、レイルの左腕から胸へ伸びた術式痕と呼応して赤く明滅する。
「戦術未完記録、三百二十四件。第一番から第三百二十三番まで、結着条件を確認。即時完成可能です」
「第三百二十四番は?」
「未確定です。ノア・エルグラム設計、【広域因果焼却術式――天墜獄炎】。第一触媒が、先ほど消失しました」
『消失ではありません! 予定より早く、燃焼工程を終えただけです!』
通信越しに、ノアの抗議が響いた。
レイルは血の混じった息を吐く。
「正常な術式は、使う前に燃え尽きない」
『燃え尽きたのではありません! 必要な仕事を、必要以上の情熱で終えたのです!』
「それを燃え尽きたって言うんだ」
『残り〇・〇一パーセントなど、誤差です!』
「その誤差が、世界を焼くか俺たちを焼くかの違いだろ」
『だからこそ、最後の一工程を貴方が持っているのです! 私の魔法は不完全なのではありません。完成する相手を選んでいるのです!』
「初めて聞いた言い訳だな」
「訂正」
フィアが無表情のまま記録板を操作する。
「同種の発言は過去に二百七十一回。今回は表現のみ新規です」
『フィアさん!?』
「記録官に言い訳するな。全部残るぞ」
『ならば正確に記録してください! 私の術式は、理論上は常に完璧です!』
「理論の外に現実があることを、そろそろ認めろ」
『現実の方が、私の理論へ追いついていないのです!』
「追いつく前に世界が終わるぞ」
別の通信が割り込んだ。
『口論している余裕があるなら、第二十七術式群の位相を確認してください! レイル、貴方が勝手に解放順を変えたせいで、五群目と十一群目が干渉しています!』
凛とした女性の声。
【並列術式官】セレネ・グランツだった。
「変更したのは一件だけだ」
『一件を勝手に動かせば、後ろの三百二十二件がずれるのです!』
「一件くらい余白があった方が安全だ」
『ありません!』
「即答だな」
『貴方が十七年間、余白を勝手に増やし続けた結果です! 今度という今度は、一文字たりとも残っていません!』
「世界の終わりにまで余白管理か」
『世界の終わりだからです! それと、貴方は自分が死にかけると急に手順を省略します。今回は省略させません』
「死にかけてる時に手順が増える方がおかしくないか?」
『増やしたのは貴方です』
「俺か」
『貴方です』
『レイルノ責任デス』
「ニアまで重ねるな」
レイルは小さく息を吐き、フィアへ目を向けた。
「第三百二十四番を完成できる条件は?」
「三つです。術式群の再配列。代替触媒の確保。そして、指定結着位置の形成」
「代替触媒は?」
『理論があります!』
「物を聞いてる」
『……ありません』
「正直でよろしい」
『屈辱です!』
「指定結着位置は?」
「剣神リィナ・アルセイルが、世界術式盤の中枢へ到達する必要があります」
リィナが剣を肩から下ろした。
「要するに、あそこまで斬ればいいんでしょ」
「簡単に言うな。前方神兵、推定二万以上。光輪防壁が七層。魂固定槍と空間縫合槍が混ざってる」
「で?」
「到達率は――」
「数字を聞いてない」
「リィナ」
「レイル。私が聞いてるのは、行けば終わらせられるのかってこと」
「……行ければ、第三百二十四番を完成できる」
「じゃあ行く」
「返事が早すぎる」
「あんたの説明が長すぎるの。心配なら道を作って」
「最初からそのつもりだ」
「なら、ちゃんと言って」
「何を」
「“行ってこい”って」
「命令みたいになるだろ」
「こんな時まで言い方を考えないで!」
白い槍の群れが、城壁を越えて迫る。
リィナは笑った。
幼い頃、朝練へ三分早く来ただけのレイルを、遅刻だと言って走らせた時と同じ顔だった。
「私が前を見る。あんたは、後ろと横を見て」
「……分かった」
レイルは杖を持ち上げた。
「行ってこい、リィナ。道は俺たちがつなぐ」
「うん。絶対、置いていかないでよ」
「それは俺の台詞だ」
「じゃあ、二人とも守ればいい」
リィナが大地を蹴った。
神兵の前列から、数百本の白槍が突き出される。
槍の穂先には、異なる術式が刻まれていた。
炎を消す槍。
雷を奪う槍。
空間を縫い止める槍。
魂へ直接、終わりを刻む槍。
リィナは止まらない。
長剣を斜めに振り下ろす。
だが、刃は最後まで振り抜かれなかった。
斬り下ろしの途中で手首が返り、刃先が突きへ変わる。突きは神兵の胸へ届く直前に横薙ぎへつながり、横薙ぎは身体を沈めた回転斬りへ移る。
一つの技が完成する前に、次の一撃が始まる。
終わらない。
だから、途切れない。
それが【無終剣】。
かつて、レイルの傍では剣技の最後が完成しなかった。
ならば、最後まで振り抜かなければいい。
斬撃の終わりを、次の斬撃の始まりへ変えればいい。
最弱の少年の隣で戦うために生まれ、十七年の鍛錬と、七環時獄で積み重ねた敗北を越え、神さえ斬る剣へ至った、リィナだけの剣術だった。
「レイル――風を寄越して!」
「未完記録、第七十二番――【蒼嵐付与】。完成!」
リィナの長剣を、蒼い風が包んだ。
本来なら直線へ飛ぶはずだった風の斬撃が、終わらない剣の軌道へ引かれて螺旋を描く。前方の神兵十体が、白磁の鎧ごと宙へ巻き上げられた。
「まだ軽い! 次!」
「第九十一番――【紫電纏刃】。完成!」
風の螺旋へ紫電が走る。
浮き上がった神兵を雷が連鎖し、頭上の光輪を内側から焼き切った。
リィナは雷をまとった剣を振り切らず、刃を地面へ突き立てる。余剰の雷撃が地中へ流れ、白い軍勢の足元を網の目のように走った。
「足を止める! 冷却!」
「第百三番――【白凍結界】。完成!」
熱と流動を組み合わせた冷却術式が大地へ広がった。
白い霜が神兵の足元を覆い、雷で制御を失った関節を一気に凍りつかせる。
リィナは凍結した戦列の中央へ飛び込んだ。
斬る。
突く。
蹴る。
身を沈めて槍をかわし、剣の腹で腕を跳ね上げ、返す刃で首元の光輪だけを切り飛ばす。
斬撃を完成させないまま、風圧、雷撃、冷却、熱――異なる現象を次々と剣へ受け入れ、一つが尽きるより先に次の術式へつなげていく。
魔法剣でありながら、一つの属性へ固定されない。
剣術と魔法が互いの終わりを奪い、次の始まりへ変換し続ける。
【無終魔法剣・連環】。
『前方、神兵密度二百七十。剣神、右斜メ前方ヘ七歩。最短突破経路ヲ表示シマス』
ニアの環状尾が二条の光帯へほどけ、戦場に黒銀の線を描く。
「七歩もいらない!」
『六歩デハ包囲サレマス』
「五歩で全部斬る!」
『理論上、不可能デス』
「なら、理論の方を置いていく!」
『――再演算。剣神ノ無謀ヲ前提条件ニ追加』
「無謀じゃない! 最短!」
『一般的ニ、ソレヲ無謀ト呼称シマス』
「ニア。リィナは行く」
『把握シテイマス』
「止めないのか」
『停止勧告ハ、既ニ十七年間無視サレテイマス』
「それも俺のせいか?」
『半分ハ』
「残り半分は?」
『剣神本人デス』
「聞こえてるからね!」
リィナが五歩で踏み込んだ。
一歩目。
神槍の穂先を剣の腹で滑らせる。
二歩目。
槍の柄を蹴り、反動で身体を反転。
三歩目。
回転の途中で剣へ熱を宿す。
「レイル! 燃やせ!」
「第百七十九番――【獄炎魔剣】。完成!」
刀身を紅蓮の炎が包んだ。
四歩目。
リィナが炎の剣を横薙ぎに振るう。
だが、斬撃は終わらない。
途中で刃を立て、炎を前方ではなく、これまでに刻んだ剣閃の軌跡へ流し込む。
五歩目。
神兵の胸へ剣を突き込み、リィナは叫んだ。
「遅れて咲け――私が斬った全部の傷から!」
剣を引き抜いた瞬間、数百体の神兵を貫いていた過去の斬撃痕が、一斉に紅蓮へ変わった。
白い戦列の内側から、無数の火柱が噴き上がる。
『指定結着位置マデ、残距離百八十七』
「まだそんなにあるの!?」
『剣神ガ推奨経路ヲ無視シタ結果デス』
「近道したのに増えてる!」
「敵を斜めに押し込んだ。中枢が後退したんだ」
「逃げる中枢って卑怯じゃない?」
「世界を一つに固定する術式が、正々堂々を守ると思うか?」
「じゃあ追いかける!」
『ソノ結論ハ予測済ミデス』
ニアがレイルの隣から消えた。
黒銀の粒子となって神兵の頭上へ転移し、次の瞬間には完全実体化して白い槍の柄へ足を乗せている。
一本、二本、三本。
槍を足場に駆け、両手の獣爪で術式接続部だけを切り裂く。白槍が次々と制御を失い、リィナへ届く前に地面へ落ちた。
『剣神。前方ヲ開ケマス』
「単体行動するなら、もっと早く来て!」
『使用者ノ生命維持ト優先度ガ競合シマシタ』
「レイル、また何か隠してるの?」
「何も」
『生命結着留保ヲ除ケバ、現時点デハ』
「ニア!」
「あとで聞く!」
リィナの声が一段低くなった。
「絶対、あとで聞くから。そこで死んで逃げたら許さない」
「死なないために留保してる」
「そういう言葉遊びをするなって言ってるの!」
「今は前を見ろ!」
「帰ったら全部話して!」
「帰ったらな」
「約束!」
「……約束する」
その一言を聞くまで、リィナは次の一歩を踏み出さなかった。
レイルが言い切ると、彼女はようやく剣を構え直す。
「ニア。道!」
『了解。剣神ノ直感ヲ、最優先演算項目ニ変更シマス』
「最初からそうして!」
『精霊演算器トシテ、強ク抵抗ヲ感ジマス』
「相棒として信じなさい!」
『……了解。相棒トシテ、貴女ヲ信頼シマス』
ニアが両腕を広げた。
銀の獣紋が輝き、環状尾が巨大な術式帯へ変わる。
迫る白槍を、自らの爪で切り払う。
魂を固定する光輪へ身体ごと飛び込み、半透明化で中心をすり抜け、内部から実体化した指を食い込ませた。
『術式中枢、把握』
ニアが両手を左右へ引き裂く。
光輪の構造が歪み、一瞬だけ白い軍勢の中央に空白が生まれた。
「今デス!」
リィナが一歩、前へ出た。
白槍が頬をかすめる。
二本目が左肩へ迫る。
それを剣の鍔で跳ね上げ、三本目の穂先へ足を乗せた。
槍の上を駆ける。
四本目が腹部を狙う。
リィナは身を捻り、紙一重でかわした。外套だけが切り裂かれ、赤栗色の髪が風へ舞う。
ニアの予測より、一歩深い。
だが、その一歩が神兵の隊列を内側へ引き寄せ、中央に小さな空白を生んだ。
リィナはその空白へ剣を突き立て、全身の魔力を刃へ流し込む。
「ここが――あんたの魔法が終わる場所だ!」
剣を振り上げる。
光輪の中枢まで、一直線の裂け目が走った。
「道、開けた! レイル!」
「見えてる!」
「だったら迷うな! あんたは世界の最後まで準備した! 残ってるのは、選ぶことだけでしょ!」
『【世界結着】マデ――八秒』
フィアの声が響く。
レイルは杖を握り直した。
黒灰色の多層式魔導外套の下では、折れた肋骨が肺へ食い込んでいる。脇腹を貫いた白い槍は抜け落ちていたが、傷口から流れる血は止まっていない。
心臓は三度、すでに動きを止めかけていた。
止まっているのは――死へ至る、最後の一工程だけだ。
『生命維持率、二・一パーセント』
ニアが転移でレイルの正面へ戻った。
金色の瞳が、至近距離から彼を見つめる。
『心肺損傷、拡大。魔力経路、十八パーセント断裂。左肺、機能停止。心筋収縮率、危険域。保持環、第六及ビ第七、限界寸前デス』
「あと八秒なら持つ」
『ソレハ生存計画デハアリマセン』
「【勝利計画】だ」
『勝利後ノ帰還工程ガ未設定デス』
「終わってから考える」
『ソノ回答ハ、十七年間、一度モ信用ニ値シテイマセン』
「一度くらいあっただろ」
『記録検索――該当ナシ』
「検索が速すぎる」
『貴方ノ無計画ハ、最優先参照項目デス』
「成長したな」
『使用者ガ成長シナイタメ、代替処理シマシタ』
ニアはそう言って、レイルの血に濡れた右手へ自分の手を重ねた。
精霊体でありながら、今の彼女は触れられる。
指先は人間と同じ温度ではない。
それでもレイルには、不思議と温かく感じられた。
「レイル」
機械的だった声から、一瞬だけ抑揚が外れた。
「私ハ、貴方ガ勝ツ確率ヲ計算デキマス。貴方ガ死ヌ確率モ、世界ガ残ル確率モ、全テ数値ニ変換デキマス」
ニアの獣耳が伏せられる。
「デモ――貴方ガ帰ッテクル未来ダケハ、計算デハ足リマセン」
金色の瞳が揺れた。
「命令デハアリマセン。演算結果デモアリマセン。相棒トシテ、私自身ノ意思デ要求シマス」
血に濡れた手を、強く握る。
「勝ッテ。生キテ。私ノ隣ヘ帰還シテクダサイ、レイル」
レイルは答えなかった。
答えれば、声が震える気がした。
「《《レイル》》」
銀灰色の髪を風に揺らし、【不眠聖女】ミレア・ノクスが背へ手を添えた。
紫の瞳の下には、濃い隈が刻まれている。
「ふわぁぁ......眠いです。でも――意識を固定します。あと八分です。眠った瞬間、あなたごと戦場が完成します」
「八分もあれば十分だ」
「あなたの“十分”は、一般人の遺言と同じ程度に信用できません」
「ニアと意見が合うようになったな」
「私たちの意見が一致したのではありません。あなたの無茶が、全員の共通敵になっただけです」
『同意シマス』
「二対一は卑怯だろ」
「安心してください。リィナとセレネとフィアも同意見です」
『当然です!』
「賛同を記録済み」
「多数決か」
「いいえ」
ミレアの目が細くなる。
「患者に拒否権がないだけです」
ミレアの術式が脊髄を焼いた。
固有律【覚醒】。
意識が強引に引き上げられる。
薄れかけていた痛覚が戻り、折れた骨、裂けた肺、焼けた魔力経路、そのすべてが鮮明になった。
レイルの喉から潰れた息が漏れ、右目に浮かんでいた閉じ切らない輪が大きく開く。
「眠らせません」
ミレアは静かに告げた。
「壊れないようにするとは言っていません。痛みを消すとも、死なせないとも言っていません」
背へ添えた手に力がこもる。
「私が保証するのは一つだけです。あなたが自分の意思で最後を選ぶ、その瞬間まで――意識だけは、絶対に手放させません」
『【世界結着】マデ――六秒』
空が白く染まった。
光輪の中央から、都市全体を覆う神光が降る。
触れたものを焼く光ではない。
存在を一つの正しい形へ固定し、抵抗も後悔も未来も奪い去る、神の結末そのもの。
その前へ、白銀の騎士が踏み出した。
「ここは俺が引き受ける」
アルド・クロイツが大盾を突き立てる。
地面が陥没し、神光が盾を削り、鎧を溶かし、白銀を赤熱させた。
それでも、アルドの足は一歩も退かない。
固有律【完遂】。
一度始めた行動を、定めた目的へ届くまで運び続ける力。
「お前が途中で止めた攻撃を、俺が敵まで運んだ。お前が止めた崩落を、俺が避難の終わりまで支えた。お前が完成を恐れた時、俺はお前を臆病者と呼んだ」
アルドの両腕から血が噴き出す。
盾の縁が崩れ落ち、焼けた鎧が肉へ食い込む。
「だが、今なら分かる。始めたものを終わらせるだけでは足りない。誤った道なら途中で止まり、正しいと信じた道なら――手段を変えてでも、最後まで運ぶ」
神光が一段強まった。
アルドの膝が沈む。
それでも、立ち上がる。
「レイル・アルヴァァァァァァァァァァァァート!」
騎士は吠えた。
「お前が始めた勝利を、俺が最後まで運ぶ! 世界の終わりが降ってこようと、神が正解を押しつけようと、この盾の後ろへは一欠片たりとも通さん!」
大盾を、さらに深く地面へ突き立てる。
「だからお前は迷うな! 完成させろ! お前が十七年かけて選び続けた、俺たちの未来を!」
「人の台詞を勝手に決めるな」
「十七年来の付き合いだ。お前より、お前の決断を知っている」
「付き合いの長さなら、私の方が上だもんね!」
神兵の海を切り裂き、リィナが駆け戻ってくる。
長剣には熱、冷却、雷撃、風圧、光――複数系統の魔法残滓がまとわりつき、互いを食い合うように明滅していた。
「道は私が開いた!」
リィナは長剣で迫る白槍を弾き飛ばす。
「あんたが怖がって、迷って、立ち止まって、それでも捨てずに持ってきた全部を――私たちがここまで運んだ!」
次の槍を斬る。
返す刃で神兵を崩し、熱をまとった蹴りで白磁の胸を砕く。
「あんたは昔から、失敗しない準備ばっかりしてた! でも今は違う! 失敗しても、壊れても、私たちと一緒に直すための準備をしてきた!」
「簡単に言うな!」
「簡単じゃないから、十七年も隣にいたの!」
リィナが叫ぶ。
「また『もう少し準備してから』なんて言ったら、世界より先に私があんたを斬る!」
「脅しになってるぞ!」
「脅しじゃない! 約束!」
「約束の使い方がおかしい」
「死なないって約束よりは、あんたに効くでしょ!」
言われなくても、準備は終わっている。
剣撃。
転移。
治癒。
結界。
熱。
冷却。
雷撃。
風圧。
光。
地質固定。
流動制御。
空間断絶。
魂の保護。
契約の破棄。
光輪の分断。
そして、七つの環を代表する者たちが、それぞれ異なる未来を選び取った【受諾破棄】。
仲間たちが命を削って形成し、レイルが最後の一工程だけを奪った三百二十三の現象。
そのすべてが、魂の内側で完成を求めて軋んでいた。
祈りが流れ込む。
殺意が流れ込む。
焦り、恐怖、怒り、帰りたいという願い、死にたくないという声。
三百二十三の未完が、三百二十三の結末を要求している。
レイルの血管が浮き上がる。
左腕から胸へ走る術式痕が赤熱し、皮膚の下で無数の環が回転した。
「保持媒体、第三層亀裂!」
通信越しに、ドルガの怒声が響く。
『レイル! その杖は壊れる前提で作った! だが、壊していいとは言ってねえぞ!』
「矛盾してないか?」
『壊れる場所を俺が決めたって意味だ! 勝手な場所から壊すな!』
「注文が細かい」
『職人だからな! 俺の仕事まで未完にしたら、神を殴り終わった後でお前を殴る!』
「全員、俺を殴る予定があるのか?」
『生きて帰った後の予定を作ってやってんだ! ありがたく帰ってこい!』
『保持環、全基接続』
ニアの下半身が光へほどけた。
黒銀の女性型半獣精霊が、無数の文字と七つの巨大な環へ変わっていく。
第一環、【基礎現象】。
第二環、【実戦術式】。
第三環、【複合術式】。
第四環、【精神・空間・契約】。
第五環、【生命・魂】。
第六環、【未完目録】。
第七環、【世界術式】。
七つの環はレイルの背後で重なり、大魔導杖と左腕の術式痕へ接続された。
それでも、ニアの上半身だけは彼の隣に残っている。
金色の瞳は、レイルだけを見つめていた。
『完成順、フィア・レコードノ目録ト同期』
「同期確認。第一群から第二十六群、全件接続」
『セレネ・グランツ、並列形成を維持します! レイル、私が崩れる前に終わらせてください!』
『ノア・エルグラム、第三百二十四番を再構築中! 触媒はありませんが、理論はあります!』
「理論だけで撃つな」
『理論があれば魔法は撃てます!』
『通常は触媒も必要です!』
「セレネ、後でノアを止めろ」
『今止めたら術式が落ちます!』
「じゃあ今は褒めろ」
『ノア、よくやりました! 帰ったら反省文です!』
『扱いが理不尽です!』
フィアが記録板を閉じる。
「第一番から第三百二十三番。完成順、確定しました」
彼女は初めて、数字から顔を上げた。
「訂正します。安全に完成できる記録は、ありません」
「最初から期待してない」
「追加訂正。生存可能性を示す記述も撤回します」
「それは残しておけ」
「根拠がありません」
「俺たちが根拠だ」
「非数値的回答です」
「たまには数字の外を見ろ」
「……記録します」
フィアは、ほんの少しだけ目を細めた。
「未確定要素――仲間を信頼することで発生する、計算不能の余白」
「その余白は認めるのか」
「今回のみ、特例です」
『使用者、心拍低下』
「ミレア」
「固定しています」
『剣神、指定位置到達』
「いつでも!」
『完遂騎士、防御限界マデ一・四秒』
「構うな!」
『全術式、結着待機』
『二十六群、整列完了!』
『第三百二十四番、再構築率九十九・九パーセント!』
『杖は、あと二回なら耐える!』
「世界結着まで――三秒」
ニアの声が、戦場全体へ響いた。
レイルは杖を地面へ突き立てる。
砕けた大地の下へ、閉じ切らない輪が広がっていった。
一人では届かなかった。
一人なら、とっくに眠っていた。
フィアが順番を記録した。
セレネが術式群を束ねた。
ノアが完成しない大魔法を設計した。
ドルガが壊れる場所まで決めた媒体を鍛えた。
ミレアが意識をつないだ。
アルドが完成を運ぶ。
リィナが完成する場所を斬り開いた。
ニアが十七年分のすべてを、今、この一瞬へ接続している。
だからこそ。だからこそだ――。
最後の判断だけは、他の誰にも渡さない。
「未完記録、第一番から第三百二十三番――」
白い光が都市へ触れ、
アルドの盾が砕けた。
ミレアの指から血が流れた。
フィアの記録板へ亀裂が走る。
セレネの通信から、苦痛を堪える息が聞こえる。
ノアの第三百二十四番が、今にも崩れようと震える。
ドルガの杖が内部から軋む。
リィナが剣を構える。
ニアの環状尾が、戦場を包む巨大な環となった。
「《《レイル》》」
ニアが、最後に囁く。
「貴方ガ選ンダ結末ヲ――私ガ世界ヘ接続シマス」
レイルは右目を見開いた。
「【連環完成】――開始!」
三百二十三の未完が、同時に結着へ向かった。
炎が天を焼いた。
雷が光輪を内側から打ち砕いた。
冷却術式が神兵の関節を奪い、風圧が砕けた白磁を空へ巻き上げる。
転移した斬撃が、地平線の向こうまで走る。
空間断絶が神兵の増援路を切り落とし、契約破棄が神兵と完成神をつなぐ白い糸を断ち切った。
そして七つの【受諾破棄】が、それぞれ異なる未来を宣言する。
一つは、人間だけの未来を拒んだ。
一つは、魔王種だけの未来を拒んだ。
一つは、精霊だけの完成を拒んだ。
一つは、帰れない異邦人へ一つの故郷を強制することを拒んだ。
一つは、契約を永遠に閉じることを拒んだ。
一つは、死者の選択を生者が決めることを拒んだ。
そして最後の一つは――全員が同じ幸福へ至ることを、幸福とは認めなかった。
世界術式盤が軋んだ。
白い光輪の回転が、一斉にずれる。
フィアの記録板へ、赤い表示が走った。
【七環受諾:不一致】
【唯一未来:定義不能】
【世界完成条件:不成立】
【世界結着――中断】
世界を覆っていた白へ、初めて無数の色が戻った。
「止めた......!」
リィナが息を呑む。
「でも――まだ終わってない!」
レイルが叫ぶ。
世界結着は止まった。
だが、神兵軍は残っている。
完成神との接続を断たれた白い軍勢が、命令を失ったまま一斉に暴走を始めた。
『神兵全軍、最終自壊命令ヘ移行!』
「自爆する気!?」
『推定爆発範囲、都市全域』
「第三百二十四番は!」
『再構築率、九十九・九九!』
「また〇・〇一か!」
『今回は本当に誤差です!』
「ノアの誤差は信用できない!」
『私を信用してください!』
「術式を信用できる根拠を出せ!」
『私が百二十年、諦めなかったことです!』
通信の向こうで、ノアが息を吸った。
『今度こそ完成させます。私一人ではありません。セレネが並べ、フィアが記録し、ドルガが媒体を作り、ニアが計算し、リィナが場所を作り、貴方が最後を返す』
いつもの大げさな声ではなかった。
『私の百二十年を――私たちの魔法として、世界へ証明してください』
レイルは返事をしなかった。
代わりに、リィナへ視線を向ける。
「最後の位置を作れるか」
「作る」
「今までの連環は、全部使い切った」
「剣は残ってる」
「付与は?」
「いらない」
リィナは長剣を両手で握った。
「これは、私一人の剣だから」
無終剣は、技を終わらせない剣だ。
終わらせないから、次へ進める。
だが、リィナは十七年かけて知った。
すべてを終わらせなければいいわけではない。
次へ進むために、今ここで終わらせるべき一撃もある。
神兵軍が白い光を膨張させる。
都市を呑み込む自壊が始まる。
リィナは一歩、踏み込んだ。
斬り下ろし。
横薙ぎ。
突き。
返し。
回転。
これまで終わらせずにつないできた全ての型を、一つの剣へ戻していく。
レイルの能力を借りない。
魔法付与も受けない。
リィナ自身が始め、リィナ自身が運び、リィナ自身が終わらせる。
「これが――私だけで完成させる、最後の無終剣!」
刀身が、透明な光を帯びた。属性ではない。
十七年分の踏み込みと、受け流しと、斬り返し。
七環時獄で何度敗れても、同じ正解へ屈しなかった記憶。
自分が選んだ道を、自分の足で最後まで進む意思。
「【無終剣・最終奥義】――」
リィナが、長剣を振り抜いた。
「【終天・万象帰刃】ッ!」
初めて。
ただ一度だけ。
無終剣の一撃を、最初から最後まで、リィナ一人の意思で完成させた。
地平線が割れた。
暴走する神兵軍の中央へ、一本の斬線が走る。
白い軍勢は斬られたことにも気づかず、自壊の光を膨らませ続ける。
次の瞬間。
数万の神兵を貫いていた斬線が、同時に開いた。
軍勢の中央から世界術式盤の残骸まで、一直線の空白が生まれる。
第三百二十四番が完成するための、唯一の結着位置。
『指定座標、完成!』
『第三百二十四番、再構築完了!』
「レイル!」
リィナが振り返る。
「私の剣は終わらせた! 次は、あんたの番!」
レイルは杖を掲げた。
「未完記録、第三百二十四番――」
杖の内部で、最後の破断板が開く。
ドルガが決めた位置から亀裂が走り、余剰魔力が外へ逃げる。
セレネが二十六群の術式を一本へ束ねる。
フィアが完成条件を確定する。
ニアが両腕を広げ、世界へ接続する。
ノアの百二十年が、ようやく現実へ追いついた。
「【天墜獄炎】――完成!」
空が燃えた。
天から落ちた炎ではない。
リィナが切り裂いた空間そのものが灼熱へ変わり、暴走する神兵軍を因果ごと焼き尽くす。
白い軍勢が、空間ごと消滅した。
遅れて襲った爆風を、幾重もの結界が受け止める。
一枚。
二枚。
十枚。
百枚。
透明な壁が次々と砕け、そのたびに衝撃が弱まっていく。
「アルド!」
「俺が――運ぶ!」
盾を失ったアルドが両腕を広げ、最後の結界へ【完遂】を重ねた。
「この勝利は、誰一人置いていかん! 爆風も、破片も、神の残骸も――最後まで俺が押し返す!」
崩れかけた結界が再び前へ進む。
爆風が城壁の外へ押し返され、空の彼方で消えた。
最後の結界が砕けた時。
轟音も、光も、風も止んだ。
地平線まで続いていた白い軍勢は――一体も残っていなかった。
空には、白だけではない色が戻っていた。
赤い夕焼け。
紫の雲。
青黒い夜の入り口。
不揃いで、混ざり合い、どれか一つへ決められない空だった。
「戦術未完記録、全件消失」
フィアが告げる。
亀裂の入った記録板に、最後の数字が刻まれた。
「三百二十四件――全件、結着を確認」
アルドが盾の残骸を落とし、片膝をついた。
ミレアの手が震える。
通信越しにセレネが大きく息を吐き、ノアが泣き笑いの歓声を上げ、ドルガが杖の損傷を罵っている。
リィナは息を切らしながら、剣を地面へ突き立てた。
ニアの【オムニア・アバター】が再構成される。
だが、先ほどまでの完全な姿ではない。
右の獣耳が欠け、片腕は肘から先が光の粒となって崩れていた。環状尾も途中で途切れ、閉じない半円となって揺れている。
『全保持環、緊急停止』
ニアがレイルを振り返る。
『戦闘終了。帰還処理ヘ移行シマス』
レイルの膝が沈んだ。
ニアの残った腕が伸びる。
光で作られた身体が完全に実体を持ち、倒れ込むレイルの肩を抱き止めた。
『生命維持率、〇・八パーセント』
「思ったより残ってるな」
『楽観的判断ヲ禁止シマス』
「禁止できるようになったのか」
『相棒権限ヲ、今、追加シマシタ』
「勝手だな」
『使用者カラ学習シマシタ』
ニアの声が、わずかに震えた。
『戦術目標ハ達成シマシタ。次ハ、生存目標ヲ達成シテクダサイ』
「善処する」
『ソノ回答ヲ禁止シマス』
「じゃあ、努力する」
『不十分デス』
「要求が多いな」
『十七年分デス』
ニアはレイルの身体を抱きしめるように支えた。
『帰還シテクダサイ、レイル。勝利ダケヲ完成サセテ、自分ノ人生ヲ未完ノママ捨テナイデクダサイ』
駆け戻ってきたリィナが、レイルの外套をつかんだ。
「残りは?」
フィアの記録板には、戦術記録は何も残っていない。
三百二十四件。
すべて完成している。
だが、ニアの最深部と、ミレアの生命記録、フィアの封印欄には、戦術記録とは別の一件が赤く明滅していた。
【生命結着留保:一件】
【対象:レイル・アルヴァート】
【完成条件:死亡】
【解除判断:本人】
リィナの手に力がこもった。
「何を残してるの?」
レイルは、胸に空いた穴へ目を落とした。
血は流れている。
肺は潰れている。
心臓は、次に止まれば二度と動かない。
それでも。
死だけが、彼へ届かずにいる。
「戦術未完記録は、全部終わった」
レイルは掠れた声で言った。
「残ってるのは、戦うための魔法でも、敵の攻撃でもない」
リィナが息を呑む。
ニアの閉じ切らない尾が、力なく揺れた。
「じゃあ、何を残してるっていうの?」
レイルは笑った。
今にも途切れそうな、弱い笑みだった。
「俺の――」
心臓が一度、大きく脈打つ。
次の鼓動へ移る直前で、止まる。
停止ではない。
まだ、終われない。
死という結末だけが、世界へ届かない。
「《《死亡》》だ」
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
十七年前。
六歳のレイル・アルヴァートは、原稿の最後の一行を前に、三時間もペンを握り続けていた。
勇者は長い旅を終え、故郷の扉へ手をかけている。
傷だらけの手を伸ばせば、扉は開く。
その向こうでは、ずっと待っていた少女が立っている。
あとは、扉を開き、「ただいま」と言わせるだけだった。
だが、紙の上では勇者の指先が扉へ触れたまま、止まっている。
六歳のレイルは、三日間、その続きを書けずにいた。
「......もう少し、考えてからにしよう」
その瞬間。
隣の部屋で、母の悲鳴が上がった。
【今回の登場人物】
・レイル・アルヴァート
三百二十四件の戦術記録を完成させながら、自身の死亡だけを別枠で留保した未完の大魔導士。
・リィナ・アルセイル
レイルの能力や魔法付与へ頼らず、単独の最終奥義【終天・万象帰刃】を完成させた剣神。
・ニア
人型・接触・単独行動を可能とする【オムニア・アバター】へ成長し、戦闘と演算の両面から相棒を支えた半獣半精霊。
・アルド・クロイツ
固有律【完遂】で、砕けた盾の先まで勝利と仲間の帰還を運び続けた騎士。
・ミレア・ノクス
レイルが最後の判断を選ぶ瞬間まで、痛みごと意識をつなぎ止めた不眠聖女。
・フィア・レコード
三百二十四件の戦術未完と、別枠の生命結着留保を記録した未完目録官。
・セレネ・グランツ
膨大な術式群の順番と位相を並列管理し、一件の勝手な変更も許さなかった並列術式官。
・ノア・エルグラム
触媒を燃やし尽くしても理論を捨てず、百二十年越しの【天墜獄炎】を仲間との魔法として完成させた術式研究者。
・ドルガ
壊れる位置まで指定した杖を鍛え、戦場の外から弟子へ帰還後の予定を押しつけた職人。
三百二十四件の未完記録も、最初はたった一行を書けなかったところから始まりました。本作の続きを一緒に完成へ運んでいただける方は、レビュー、ブックマーク、フォローで応援していただけると嬉しいです。




