表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解願師〜人の願いは呪いへと。最強の能力者に拾われた俺、同じ境遇の少女と世界のカラクリをぶち壊す~  作者: 一式鍵
第4章:ハルベーデラを討て

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/40

04-06: 息を吐け!

 人肉人形(ベデンド)はその見た目に反して俊敏だった。ベスの槍を変幻自在に操り、三節棍すら使いこなしてきた。長剣一本しかない俺にはその全方向から放たれる中距離攻撃を前に、()す術がなかった。


 ゲミトルードでなければ、その重たい一撃を止められなかったかもしれない。受け流そうにも衝撃が両手を痺れさせてくる。防戦一方、活路が見い出せない。


 迂闊(うかつ)に前に出れば突かれて終わり。左右に動いてもその長槍の柄で払われる。動かないことが正解だが、あと数撃耐えている間にヤミが戻ってきてくれなければ……それも無意味だ。


 そもそもこいつには、どこか弱点があるのか? 闇雲に斬り付けても意味がないのではないか? そんな不安が脳裏を(よぎ)る。


 そしてこんな時に限って、例の予知夢的な現象は起こらない。


 その時、人肉人形(ベデンド)が動いた。肉の胴体を床に引きずるようにして、前に出てきた。一気に仕留めようという目論見(もくろみ)だろう。見た目は鈍重なのに、その動きは俺よりも速かった。


「はっ」


 強く意識して息を吐く。息を吐けば頭がクリアになる。おのずと冷静になれる。


 吸うのは生存本能が勝手にやる。だから、吐く。息を吐くことだけに集中する。


 槍の穂先が右の頬を掠める。鋭い痛みが奔る。首を左に倒していなければ串刺しだった。


 この回避によって、槍の引き戻しが遅れる。遅れるが、どういう仕掛けなのか、それが三節棍に変じる。穂先の部分が後ろから襲い掛かってくる。


 後ろから?


 俺にはそれが見えていた。この両目で正面にある人肉人形(ベデンド)の不気味な一つ目を(とら)えているにも関わらず、俺には背後の様子が見えていた。


 俺は勢いを殺さずに仰向けに倒れた。槍の穂先が俺の眼前を通り抜けていく。


 そのまま床を滑り、人肉人形(ベデンド)の右脇腹辺りに斬りつける。


『キャァァァァァ!』


 女の悲鳴が上がった。発信源は、この不気味な敵だ。そのギャップと、確かにこの肉たちはかつて人間だったのだという確信に、俺は吐き気を覚える。


 そのまま人肉人形(ベデンド)の背後に回った俺は、その後頭部に向けてゲミトルードを打ち下ろした。が、その回避行動に追い付けず、右肩を大きく(えぐ)るにとどまった。


 再び上がる悲鳴。


 そのあまりの絶叫に、俺の意識が朦朧となる。集中力がプツンと切れたのを冷静に実感する。


 槍の柄が俺を(したた)かに打ち、俺はたまらず吹っ飛んだ。辛うじてゲミトルードでの防御は行えたが、体勢が悪かった。床を転がり、最終的には石壁に激突して止まる。せめて軽鎧でも着ておくんだったと後悔する。身体が痺れて動かない。


 ――視界が明転した瞬間、室内の惨状が目に飛び込んできた。


 部屋の奥は薄暗かった。床には真新しい血液が池を作り、あちこちに手や足や臓物のようなものが散らばっていた。そして部屋の奥の奥、ほとんど真っ暗なところにヤミの背中が見えた。その景色の中で、白い髪だけがやけに浮いている。


「レア」


 ヤミの(くら)い声が響いた。


「その人形を殲滅(せんめつ)しな」


 そうしたいのはやまやまだけど、身体が……。


 声もうまく出せない。


「あんた、勇者の末裔だろ。やってみせな」


 ヤミはゆっくりと立ち上がった。その足元には目を見開いたベスがいた。ここに至るまでの惨状を目にしたのだろう、おそらくは強いショック症状にある。


「ベス……」


 動く。右手を少し動かせた。


 視界の端に人肉人形(ベデンド)がいる。それは蛇のように胴体をのたくらせながら、俺に迫ってくる。血の池にそのぶよぶよとした肉が浸かり、びちゃびちゃと不愉快な音を響かせる。


「レア!」


 聞いたことがないほど鋭いヤミの声に、俺の全神経が一気に正常化する。これも解願の一種なのだろうか――などと漠然と思った。


 俺は壁を蹴って人肉人形(ベデンド)に迫る。槍での連撃が襲ってくる。穂先が右肩と左の腿を(かす)ったが、今は痛みを感じない。


「力を貸せ、ゲミトルード!」


 そう叫んだ瞬間だった。


 俺はひたすらに青い空間に放り出された――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ