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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第43話 収穫を前にして

 さらに二十日ほどが経ち、ようやく収穫の時期を迎える。

 植えた小麦や芋、それに野草の類がきちんと実っている。


「うひょー。俺たちが食ってたものって、こんな風になってたのか」


 目の前で実る作物に、カインもワムも目をキラキラと輝かせている。


「小麦ってパンになるんだよな。どうやってパンにするんだ?」


「……え、知らないの?」


 カインに尋ねられたシスイは、ものすごく呆れた表情をカインに向けている。本気で言っているのかと訴えているようだ。

 あまりにも予想外だったカインの問い掛けに、シスイは頭を押さえている。


「ちなみに、ワムは分かるかしら」


 ワムにも確認をしてみる。ところが、ワムの方も首を横に振るばかりである。

 冗談でしょ……。シスイは体をよろめかせてしまう。


「はぁ……。あたしが教えてあげるわよ。なんてったって精霊ですからね」


 頭が痛いというような態度を示しながら、シスイは二人にパンの作り方を教えることになったようだった。


 しばらくすると、カインは大きな石を持って小屋の近くに戻ってくる。


「ほら、一個じゃ足りない。もっと持ってくるのよ」


「なんでパン作りで、石が必要になるんだよ」


 カインはシスイにいわれたことに対して不満をぶちまけているようである。

 ところが、そんな不満をシスイが聞き入れるわけがない。パンの作り方を知っているのは本当らしく、カインにとにかく石を運んでくるように命じている。


「あの、シスイさん」


「なによ、ワム」


「私にできることはありますか?」


「ないわ。ワムって力仕事が厳しいでしょ。出番があるとしても、窯を作る時くらいね。そのためにはカインにまずは石をたくさん集めてもらわないと」


 ワムの質問に、ヒスイはきっぱりと言い放っていた。

 今のところは出番はないと言われて少し落ち込んだワムだったが、後で出番があるという言葉を信じて、カインが石を運んでくるのをじっと見守っていた。


 ずいぶんと時間が経過して、ようやくシスイが石はもういいと止めていた。


「ぜえぜえ……。こんなに力仕事させられたのは久しぶりだぜ」


 カインは完全に息が上がっている。大量の石を運ばされたのだ、当然の結果である。


「ご苦労さま。ワム、ここにここらくらいまでの高さの土台を土魔法で作り出せるかしら」


「や、やってみます!」


 ワムは両手を前に出して、集中して魔力を練り始める。

 どのくらいの広さがいいのか、シスイに確認して、ワムは一気に魔力を解放する。


「土よ!」


 次の瞬間、ボゴッという音を立てて、地面が大きく盛り上がる。

 高さとしては、ワムの顔よりもちょっと下くらいで、幅と奥行きがワムの横幅二人分くらい。そんな土魔法の土台ができ上がった。

 ワムが土魔法で作った土台をチェックして、いい出来だと確認すると、二人の方へとくるりと振り返る。


「さぁ、カイン。その土台の上に、さっき運んできた石を乗せていくのよ。石一個の大きさは、あんたの拳三個分くらいに加工してからね」


「分かったよ」


 シスイに言われて、カインは渋々従っている。

 ワムが作った土台の上に、大きさを加工してそろえた石をドンドンと乗せていく。


「そうそう。前には物を出し入れする空間を忘れずにね。あっ、そこからはちょっとずつ内側に乗せていって。そうそう、いい感じ」


 シスイにあれこれ口を出されながらも、カインは黙々と石を積み上げ続ける。

 そうして石を乗せていったカインが完成させたのは、ちょっと大きさのある立派な石窯だった。


「うんうん、いい感じだわ。さて、ワムには仕上げをしてもらいましょうかね」


「仕上げ?」


「そう。この窯を安定させるために、石の隙間を土魔法で埋めていくの。あっ、後ろの方は何か所か隙間を作っておいてね。じゃないと中で燃やした煙が逃げないわ」


「分かりました。やってみます」


 再び構えたワムは土魔法を使い、カインが積み重ねた石を土魔法ですっぽりと覆ってしまった。もちろん、背面には覆っていない部分を残してである。

 石窯の周りをぐるりと回り、シスイはそのできばえに大変満足しているようだ。


「うん、これでパンが焼けるわ。あとは小麦を挽いて粉にできれば、パンを焼くことが可能になるわよ」


「お前、よく知ってるな、そんなこと」


 嬉しそうに話すシスイに、カインはなんとも疲れた表情で話し掛けている。

 そしたらシスイは、「精霊だから当然よ」というだけだった。

 精霊とは一体……。


「シスイさん、物知りですね」


「それほどでも」


「俺の時と態度が違うぞ」


 ワムに言われた時は、得意げながらも照れているようだった。さすがにカインも突っ込まざるを得なかった。


「さぁ、生活を充実させるためにも、明日、ちょっと出かけてくるわよ」


「何しに行くんだよ」


「だって、こうなったら足りないものがあれこれあるんだもの。イストスにでも作ってもらうわ」


「ああ、もう。好きにしろ。どうせ俺たちには分からねえんだからよ」


 やる気を見せているシスイに対して、カインはかなりやけになっているようである。

 まるで口げんかのようなやり取りを見せる二人の様子を見て、ワムはおかしくて笑ってしまう。

 石窯を作り終えたのはいいが、今日のところはいつものように肉と野菜をぐつぐつと煮込んだ料理を味わったのだった。


 収穫の時期を迎え、この魔瘴の森での三人の生活は、ますます盛り上がりを見せているようだった。

 翌日、シスイは宣言した通り、ワムの武器をこしらえた鍛冶師であるイストスのところへと出かけていったのだった。

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