第38話 厄介払い
「ほれっ、こいつらも無事だったぜ」
ワムたちのところに戻ってきたカインは、どさどさっとならず者たちを投げ捨てている。
白目をむいてはいるものの、どうも生きているらしい。
「ワム、ガラックを捕らえたようにぐるぐる巻きにしてやってくれ」
「はい! 土よ!」
カイン言われたワムは、土魔法を使っている。すると、地面からにょきにょきと草が生えてきて、ガラックと同じようにしっかりと地面へと縛り付けてしまった。
どうやら、ガラックの体を縛り付けたのはワムの魔法のようである。
「カインさん、よく分かりましたね」
「シスイは水、メイベルは光の属性が得意なんだ。となれば、こんな芸当ができるのは、地面を大爆発させていたワムしかないんだろう?」
「もう、それは言わないで下さいよ!」
土を耕そうとして大爆発をさせてしまったことを、ここでいじられてしまうワムである。ところがその怒る姿がまた可愛らしくて、カインたちの笑いを誘っていた。
こんなに笑われてしまえば、ワムがへそを曲げてしまう。不機嫌そうに頬を膨らませて、カインたちから視線を外してしまっていた。
ワムの態度は分からなくはないが、これからどうするべきか、カインたちはガラックたちへと視線を落としている。
「ここを知られたからには殺すのが一番だろうが……、そうしない方がいい気がするな」
「あら、どうして? 私たちを襲ってきた連中よ?」
カインの意見に、メイベルが疑問を呈している。
その疑問に対して、カインはガラックたちに視線を向けながら、真剣に考え込んでいる。
「いや、俺とワムが指名手配になったままだろう? だとしたら、いずれはまたこいつらのようにここへとやってくる連中が出るかもと思うんだ」
「ああ、確かにそうねえ。あたしが街で見てきた限り、相当な金額がかけられてたからね」
カインが可能性を述べていると、シスイが頷いている。
「さっきの戦いの中の話からすると、多分、ガラックだろうな、俺に勇者殺しの嫌疑がかかるようにしたのは」
「うその証言をしたということかしら」
「そういうことになる。その状況で、俺たちが勇者のいない状態で、この剣を持って帰ってきた。疑わしく思っていたところに状況証拠が揃ったんだ。これなら、その後に受けた扱いに納得がいくってもんだ」
「だったら、余計こいつらのことが許せないじゃないの」
カインとメイベルの話を聞いていたシスイはものすごく怒っている。
「本当ですよ。うそをついて悪い人に仕立て上げたなんて、許せる話ではないじゃないですか」
ワムも目の前のガラックたちに対して怒りを爆発させている。
ところが、こんな状況であっても、カインはものすごく落ち着いていた。
今後、自分たちが落ち着いて暮らせるようにする方法を思いついたからだ。
「こいつらに、俺たちを殺したといううその記憶を持たせることはできるか?」
「えっ?」
カインが言い出したことに、三人がそろって驚いている。
「俺たちを殺したという証拠と記憶をこいつらに持たせて、街へ帰らせるんだ。そうすれば指名手配は解決済みとして取り下げられる。そうすれば俺たちを探し回るやつはいなくなる」
「な、なるほど……」
「それに、こいつらも俺たちを仕留めたことによって莫大な賞金が手に入るだろ。俺を始末したがっていたあの国の愚王たちも大喜びだ。どうだ、誰も不幸にならねえだろ」
「それは確かにそうだけど……」
カインが長々と語った作戦に、シスイとメイベルは納得しながらも、戸惑いを隠せなかった。
ところが、ワムだけは反応が違った。カインの身の上のことをよく知らないからかもしれない。
「私は賛成ですね。このまま、ここでのんびり暮らせるのなら、それでいいかと思います。いずれは、故郷のコボルトの集落に戻ってはみたいですけれど……」
今の暮らしが続けられるのであれば、ワムはカインの考え出した作戦を受け入れるようである。
しかし、やはり自分のために命を投げ出してくれた故郷のみんなのことは気になっているようだ。ワムは力強く話していたかと思ったら、段々と声が小さくなっていっていた。
そんなワムを見たメイベルが、そっと声をかける。
「私がコボルトの故郷に行ってきたわ。焼け落ちていて生き残りは期待できないけれど、見つけた人たちはみんな弔っておいたから」
「あ、ありがとうございます……」
集落のみんなのことを弔ってくれたと聞いて、ワムは涙ぐみながらお礼を言っている。襲撃から逃げた後から、ずっと気になっていたのだ。当然というものだろう。
メイベルは、涙ぐむワムをそっと抱きしめていた。
「で、うその記憶をどうすれば持たせられるんだ?」
カインは空気も読まず、メイベルに対して、了承もしていなのに作戦について相談をしている。
「光魔法の中には、そういうのもあるはず。幻影魔法の一種だから、一応使えることは使えるわ」
「よし、頼むぞ。勇者の使っていたこの剣にもそういう能力はあったと思うのだが、俺にとっちゃただの剣だから使えないんでな」
「分かったわ。自信がないから、成功するように祈ってて」
「ああ、成功するように祈ってるぜ」
メイベルは渋々、カインからの頼みを聞き入れることにした。
作戦が決定したので、早速メイベルは光属性の魔法の中の幻影魔法を使い、ガラックたちに偽の記憶を植え付けることにする。
成功すれば、賞金首生活からも解放され、魔瘴の森の中で気ままな生活ができるようになる。
カインとワムは、その成功を信じ、祈るような気持ちでメイベルが魔法を使う姿を見守り続けた。




