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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第35話 先を急ぐ聖女

 男たちよりも先に行動を起こしたメイベルは、一足先に魔瘴の森へと向かっていく。

 それというのも、男のたちの一行にメイベルたちにとって因縁の相手が混じっていたからだ。

 聖女であったメイベルをして”あいつ”と呼ばしめる男は一体何者なのだろうか。

 とにかく、メイベルは男たちよりも先にカインたちのところに到着するために、気配を消す魔法や移動速度を上げる魔法などを駆使して、突き進んでいく。


 コボルトの集落跡から移動すること十日と少しをかけて、ようやくメイベルは魔瘴の森へと到着する。

 少し森に入ったメイベルは、意識を集中させてとある魔法を使う。


「バード!」


 魔法を使った瞬間、メイベルから魔力の塊が飛び出し、みるみるうちに形を変えていく。魔力の塊は鳥へと姿を変える。それを空へと解き放ち、周囲の様子を窺う。

 バードという魔法は、鳥として宙を舞い、周囲の様子を探る魔法だ。メイベルのように鳥の形の魔力を飛ばす方法もあれば、空飛ぶ鳥に意識を移すというものもある。

 だが、どちらの方法を取ったとしても、魔法を使用中は動けなくなってしまうという欠点がある。動くとその場で効果が切れるため、本来は安全な場所で行う探索魔法である。

 ではなぜ、メイベルは魔瘴の森に入ったところで魔法を使ったのか。

 それは、自分の魔力に森の瘴気を混ぜ込むことで、使用者と特定できないようにするためだ。

 今回このバードの魔法で探る相手はかなりの手練れである。もしかすると、自分のことが気付かれるかもしれないと感じたからだった。

 メイベルはバードの魔法を使い、魔瘴の森の近辺の様子を探っていく。


(いたわっ!)


 探りを入れてしばらくすると、目的の男たちを発見する。なんてことだろうか、かなり急いで先回りをしたというのに、男たちは魔瘴の森の近くまでやって来ていた。

 あまりにも近い場所にいたために、メイベルは愕然としてしまう。


(なんて近さなの。あいつら、ワムちゃんの気配を確実に追いかけているっていうわけ?! ……あいつにそんな特技があったなんて、完全に想定外だわ)


 メイベルは驚きを隠せなかった。

 が、驚きはそれだけでは済まなかった。


「うっ!?」


 メイベルの意識が一瞬揺らぐ。

 ふと我に返ったメイベルは、顔を青ざめさせて、手を当てている。一体何があったというのだろうか。


「私のバードの魔法が攻撃されたですって?! ばかな、そんなことがあるだなんて……。これは、一刻も早くカインたちに知らせなきゃ……」


 そう、上空高くから見下ろしていたメイベルのバードが、例の男によって攻撃されたのだ。

 メイベルの使った魔法は魔力の塊だったので、バード自体はその場で霧散してしまったが、意識をそこに同調させていたメイベルは、攻撃された瞬間に意識が途切れてしまったのである。

 バードは撃破されても術者の意識は一瞬で戻るので、メイベルは一瞬だけ意識を失っただけで済んだというわけである。

 ところが、バードを勘付かれた上で攻撃されるというのは、はっきりいって想定外のできごとだった。だからこそ、メイベルはこれほどまでに慌てているというわけである。

 どうやらメイベルが知る例の男は、メイベルが知っている時よりも確実に実力を上げているということなのだろう。いくらカインが手練れの冒険者とはいえど、勝ち目があるかどうかわからない。ましてやターゲットは幼いコボルトのワムなのだ。

 焦りを覚えたメイベルは、とにかく魔法を駆使して先を急いでいく。


 やがて、カインたちの住む沼へと到着する。


「カイン!」


「おう、メイベルじゃねえか。どうしたんだ、そんなに慌てて」


 突然現れたメイベルにもあんまり驚くことなく、カインが反応している。


「こんにちは、メイベルさん」


 近くで一緒に畑の作業をしていたワムも、メイベルに挨拶をしている。


「まったく、とりあえず水でも飲んで落ち着きなさいよね」


 大きな声に反応してやってきたシスイは、魔法で水を出してメイベルに飲むように勧めている。

 ありがたいと言わんばかりに、メイベルはシスイの出した水を飲んでいる。


「メイベル、慌てて来たみたいだけど、何があったのか説明してくれる?」


 水を飲ませたシスイは、その雰囲気がただ事じゃないことを語っていると察して、メイベルに事情を聞こうと声をかけている。

 シスイの水でどうにか少し落ち着きを取り戻したメイベルは、カインたちに危険が迫っていることを伝えようとする。


 その時だった。


 妙な気配を感じ取って振り向くと、ものすごい衝撃波が飛んできた。


「ライトシールド!」


 ようやく気持ちが落ち着いたところだというのに、メイベルはとっさに魔法を使って攻撃を防ぐ。

 防いだのはいいものの、魔法で作り出した盾は、無残にも衝撃を相殺して砕け散ってしまった。


「ははっ! さすがは聖女様だなぁ。この俺様の攻撃をたやすく防いでくれるたぁよぉっ!」


「なんで、あんたがここにいるのよ」


「ふん、人の周りをちょろちょろしてたのは知ってたぜ。だが、それを逆に俺様に利用されていたとは気が付いてなかったようだな」


「なんですって……?!」


 メイベルたちの前に、でっかい斧を担いだ男が現れたのだった。


「ほう……。ターゲットのコボルトどころか、カインまでいやがるな。はっ! こいつぁまったくついてるぜ、ひゃーっはっはっはっ!」


 周りを見回した男は、カインとワムの姿を見つけると思いっきり大声で笑い始めたのだった。

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