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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第33話 嬉し恥ずかし

「よぉ、おかえり」


「ただいま」


 無事に注文を終えたシスイが戻ってくる。

 シスイが戻ってきた時、カインとワムは今日も木の棒で打ち合いをしていた。


「おかえりなさい、シスイさん」


 息が上がっている状態だというのに、ワムはとことことシスイへと駆け寄ってきている。日に日に体力が上がってきているようだ。

 そのにこやかな笑顔を見て、シスイはついワムの頭を撫でてしまう。


「わわっ、シスイさん?!」


「本当に頑張り屋さんよね、ワムは。なんかつい撫でちゃうわ」


「そ、そうなんですか?」


 歯を見せながら笑うシスイの言葉に、ワムは驚いてしまっている。

 タイミング的にちょうどいいので、食事を取りながら、シスイの話を聞くことにする。


「で、どうだったんだ、シスイ」


「どうって。無事に注文は出せたわよ。ワムの武器の作製とあんたの武器の修繕」


「そっか。よかった、シスイの話も無事に聞いてもらえて」


 肉を頬張りながら、シスイの報告を聞いてほっとしているようである。

 話のよくわからないワムは、聞き耳を立てながら、同じように肉にかぶりついている。


「いや、それにしても参ったわよ」


「何があったんだ?」


 注文を出してきたという報告をした後、シスイはものすごく困った顔をしながらおまけのできごとを話し始める。

 それは、イストスの工房を訪れた時に、いきなりハンマーが飛んできたことである。

 この話を聞きながら、カインは思いっきり笑い出す。対照的に、ワムの方はおろおろとしながらシスイのことを心配している。ただ、心配しながらもしっかりと肉は握ったままだった。


「それは災難な場面に出くわしたな。あのおっさん、気に入らねえ奴がいるとそうやって物を投げつける癖があるからな。俺も最初の頃はよく投げつけられたもんさ」


「か、カインさん。それは笑い事ではないですよ?!」


 ワムは肉を握りしめたまま、カインに詰め寄っている。

 その態度を見ながらも、カインは笑ったままだった。


「なあに、心配要らないさ。その後も諦めずに通い続けて、今じゃ認められてるからな。まぁ、認められるまでにはずいぶんと苦労させられたもんだがな」


「……もう。カインさんってば」


 笑いながら話すカインに対して、ワムはものすごく呆れたような反応をしている。

 その態度が自分を心配してくれていることから来ていることが分かっているので、カインはそれ以上ワムに対しては何も言わなかった。

 再びシスイの方へと顔を向けて、再び武器の話に戻している。


「で、どのくらいかかるって言ってた?」


「鉱石の選定から入るから、十日ほどだって言ってたわよ。でも、魔法を制御する杖の機能と、普通の剣とを組み合わせた武器なんて、そう簡単に作れるものかしらね」


 シスイは疑わしい表情をしながら、あごを抱えている。カインの紹介だから信じてはいるのだろうが、シスイ自身が聞いたことのないものだから、本当にやってくれるのか疑ってかかっているようだ。

 ところが、カインの方はまったく気にしていないようだ。


「心配するな。あのおっさんは作るといったらちゃんと作るからよ。でき上がることを信じて、俺たちはおとなしくそれを待つだけさ。一応、ワムの手の特徴は伝えておいたんだよな?」


「え、ええ」


 イストスのことをかなり信頼しているようで、まったく表情を変えずに淡々と話している。その様子には、シスイは驚きを隠せないようだ。

 一体カインは、どうしてそこまでイストスを信用できるのだろうか。


「なら大丈夫だな。とにかく信じて、十日後もう一回、おっさんのところへ行ってくれ」


「分かったわ」


 はっきりと言いきるカインの態度に、シスイは同じようにイストスのことを信じることにしたのだった。なにせ、自分を救ってくれたカインがいうことなのだから。

 話を聞いていたワムは、話の内容を聞いて肉を食べる動作が完全に止まっていた。それでも離さないあたりはさすがは肉好きのコボルトである。


「えっと。わ、私のために、わざわざそのようなことをして下さっているのですか?」


「ああ、そうだよ。頑張っているワムのための褒美だよ」


「そ、そんな……。私はそんなことをしてもらうだけの存在じゃないですよ」


 戸惑うワムがカインに問いかけるも、笑顔で返されてしまって、ワムは下を向きながら度惑っている。

 その態度を見たカインは、ワムの肩に手を置いて、再びにっこりと微笑みかける。


「ワムが気にすることじゃないさ。俺たちが贈りたいって言っているんだから、素直に受け取ればいいんだよ」


「……はい。ありがとう、ございます……」


 カインから改めて言われると、ワムは完全に顔を伏せてしまっていた。

 ただ、背中を見るとしっぽが左右に大きく振られていたので、喜んでいることはすぐに分かった。顔を上げないのは恥ずかしがっているということのようだ。


「よし、それじゃ食べ終わったら、再び特訓だな。そんな風にいうのなら、それにふさわしい人物になってもらうだけだからよ」


「は、はい、頑張ります」


 声をかけられたワムは、元気よく返事をしていた。

 その表情を見たカインとシスイは、ついつい笑ってしまうのだった。

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