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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第32話 ドワーフの鍛冶職人

 カインに頼まれたシスイは、ため息をつきながらも教えてもらった場所へと飛んでいく。

 だが、飛んでみてびっくりした。


「げっ、ドワーフ……」


 そう、街の中をうろついている人物たちを見て警戒したのである。

 ドワーフは精霊とは違うものの、土属性を持ち合わせていて、水の精霊であるシスイとはそれとなく相性が悪いのだ。それゆえに、シスイは顔をのぞかせた瞬間に顔を引きつらせたのである。

 とはいえ、カインに頼まれたことだ。渋々、街の中へと進んでいく。

 擬態しているとあってか、思ったよりは誰にも気を止められることなく進んでいく。

 カインに教えてもらった店へと向かうために、シスイは我慢をしながら道行きながら場所を尋ねて回っている。


「うん、ここか……」


 ようやくシスイは、目的地へと到着していた。

 看板には『イストス工房』と書かれている。

 意を決して、シスイは工房の中へと入っていく。


 入った瞬間だった。


 ボゴッ!


 ひどい音が響き渡る。

 何が起きたのかと思えば、壁にハンマーがめり込んでいる。シスイをかすめるように飛んでいったものの、シスイはどうにか無傷だった。


(こっわっ!)


 ハンマーがポロリと落ち、粉々になった壁を見ながら、シスイは青ざめている。


「こんな店、もう二度と来ねえよ!」


「ふんっ! 自分の実力も分からんようなやつはおととい来やがれってんだ!」


「おらっ、どけっ!」


「おっと……」


 怒鳴り声が聞こえてきたかと思うと、男がシスイにぶつかりそうな勢いで歩いてくる。とっさに躱したものの、なんとも感じの悪い男だった。


「なによ、あれ。全身から小物臭がするわ。べーっだ!」


 店に入ってきたばっかりでいろいろとひどい目に遭ったシスイではあったものの、カインからの頼まれものがあるために、気を取り直して奥へと顔を向ける。

 そこには、口ひげにあごひげがこれでもかと生えたドワーフが立っていた。


「えっと、ちょっとお話はいいかしら」


「なんだ。今のわしは機嫌が悪い。話など一切聞かんぞ」


 シスイが話し掛けると、目の前のドワーフはご丁寧に反応してくれている。一切聞かないのではないのかと、複雑な表情になるシスイである。


「ふーん。カインが腕の立つ職人だって言ってたからどういう人かと思ったけど、人の話を聞かない偏屈親父だったってわけか」


「……おい、今なんて言った?」


 シスイが愚痴をいうと、ドワーフはぴたりと動きを止めてシスイに声をかけてくる。


「偏屈親父」


「違う、その前だ!」


 悪口を繰り返すと、ドワーフは怒って否定してきた。

 その反応を見て、どこのことを指しているのか、シスイは大体理解した。


「カインから話を聞いてここに来たのよ。すっごく腕の鍛冶職人でいろいろ作ってくれるっていうからね」


「……ちょっと奥に来な」


 ドワーフに呼ばれたシスイは、不思議に思いながらも後をついて行く。

 奥へと入ると、すべてが石で造られた、まさに鍛冶職人の作業場といった感じの光景が広がっている。


「すごい……」


 シスイは見慣れない光景だけに、息をのんで部屋の中を見回している。


「そこに座んな」


 ドワーフはすみっこの方にあるテーブルを指してシスイを誘導する。シスイはそれに従い、ちょこんと腰掛けている。


「さっき、カインって名前を出したな」


「え、ええ……」


 ごろりと睨まれるように顔を見られたので、シスイは属性相性もあってか縮こまってしまう。


「あいつは元気してんのか? まったく、こないだ武器の納品に向かったら、手配書なんぞ出てたからな。はっきり言ってビビっちまったぜ。何やったんだよ、あいつは」


「あたしも詳しくは知らない。ただ、魔族狩りからコボルトを助けたのは事実よ。どうもカインは、世間に嫌気がさしているみたいだったから」


「ふむ……」


 シスイに話を聞いたドワーフは、腕を組んで黙り込んでしまった。

 あまりにも黙り込んでいるものだから、とりあえずカインから預かってきたものを取り出し、シスイはドワーフに見せている。


「ほう、カインに作ってやった剣じゃねえか。それとこっちは、ミアズマディアーの角か」


「見ただけで分かんの?!」


「当たり前だ。わしくらい極めると、見ただけで何か分かっちまうぞ。まあ、用件だけ聞こう」


 職人は腕を組んだままシスイを見つめている。その雰囲気にのまれそうになるものの、シスイはカインから頼まれたことをしっかりと伝えている。

 シスイからの頼まれものを聞いたドワーフは、への字口をしながら妙な表情をしている。


「剣と杖を組み合わせた武器なぁ……。またおかしな注文を出しよる」


「ええ。カインが助けたコボルトなんだけど、剣の扱いはできているし、魔法だってかなり強力なものが使えるみたいだから。それで、一本で両方を扱えるものが作れないかって話になったのよ」


「ふむ。……できなくはない。よかろう。あやつの頼みなら、いっちょやってやろうじゃないか」


 ドワーフは立ち上がってにぃっと笑っている。


「ありがとう。あたしはシスイ。カインに助けてもらった水の精霊よ」


「ほう、水の精霊か。どおりでわしを見て怯えているはずだな。わしはイストス。あやつの剣を鍛えたことのあるドワーフだ。注文は、魔法の制御もできる剣と、あいつの剣の修復でいいかな?」


「はい、よろしくお願いします」


「分かった。特殊な武器ゆえに時間がかかる。そうだな、十日くらい待っておくれ。鉱石の選定からせねばならぬからな」


 話がまとまると、シスイは改めて頭を下げている。

 一方のイストスの方は、相変わらず歯を見せながら得意げに笑っていた。

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