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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第28話 迷える聖女の一人旅

 カインたちと別れたメイベルは、今日も放浪の旅を続けている。

 その中で、シスイと再会した魔瘴の森の近くの街とは別の街へとたどり着いた。

 街へとやってきたメイベルは、冒険者ギルドへと赴く。

 その冒険者ギルドの前で、メイベルは掲示板を眺めている。


(……この街でも、カインとワムちゃんのことが貼り出されているわね。改めて見てみても、結構な高額な賞金がかけられているわ)


 メイベルはじっと掲示板を見つめ、あごに手を当てながら、何度も頷いている。


(貼り出されているということは、必死に探している人はいるんでしょうけれど、まだ誰もその行方を突き止められていないってことね。まっ、あそこじゃ簡単には見つからないでしょうね)


 小さく笑うと、メイベルは冒険者ギルドの中へと入っていく。

 扉を開けて中に入ると、ギルドの中にいた人物から一斉に視線が向く。こんな時間にもかかわらず、これだけ人がいるということは、思ったよりもこの街の冒険者たちは暇をしているようだ。

 メイベルはあんまり依頼を期待できないと思いつつも、カウンターへと近付いていく。


「ちょっと聞いてもいいだろうか」


 ローブをかぶったまま、くぐもった声でカウンターに座る受付へと声をかけている。


「なんでしょうか。依頼でしたら、今現在はこれといったものはございませんよ。あるとしても常設依頼くらいです」


 メイベルが問いかけると、受付からはそんな冷たい言葉が返ってきた。

 どうやらこの街では、ちょうど依頼を切らしてしまっているらしい。冒険者ギルドがそれでいいのかと、メイベルは心の中で呆れてしまう。


「だったら、ちょっと外の掲示板のことについて質問をしても大丈夫だろうか」


「ええ、お聞きしたいことがあるのでしたら、答えられる範囲でお教えいたしますが……。なにか?」


 メイベルの質問に、なぜか不機嫌そうに反応している。


「何をそんなに怒っているのかな」


「……別に?」


 メイベルが態度が引っかかったので聞いてみると、ふいっと顔を背けるようにしながら受付の人物は答えていた。


「まったく、そんな態度では困るというものだ。まあいい、私が聞きたいのはあのコボルトの方だ」


「なんだ、そちらですか。では、お答えいたしますよ、何を聞きたいのでしょうか」


 メイベルがコボルトのことだと答えると、受付の態度が急変する。どうやら、この受付の人物はカインのことで不機嫌になったようなのだ。

 少し引っ掛かりを覚えるものの、メイベルはワムのことについて受付から話を聞き出すことに成功した。


「なるほど、そんなところにコボルトの集落があったのですか」


「はい。しかし、そこに行かれてももう焼け野原のはずですよ。話では火を放って全滅させたそうですからね」


「ならば、そこに戻っていることは考えられる。全滅させたということは、当面、人が来ないことが考えられるからね」


「ふむふむ、確かに考えられますね。それにしても、私はカインさんが賞金首になっていることの方が信じられないんですけどね。あれを見せられた時は、驚きましたから」


 ワムのことで話を聞いていたはずなのに、受付の人物はカインのことに言及してきた。これには正直なところ、メイベルはびっくりさせられている。

 周りの目が気にはなるところだが、こそこそと詳しく聞いてみることにする。

 それによれば、受付の人物はカインの容疑について否定的な立場を取っているらしい。手配書が回ってきたので、仕方なく貼り出したそうだ。


「私はカインさんとは何度かお会いしたことがありますからね。勇者殺しなんて、私は信じていませんよ。ただ、表立っていうと何をされるか分かりませんからね。それと、元仲間であるあなたに対して、嘘は言いたくありませんので、このようにお話しさせていただいています」


「なんだ、気付いていたのか」


 こそこそと話をしている受付の人物の言葉に、メイベルは驚かされていた。

 ローブで全身を隠し、装備品で声すらもよく分からないようにしているのに、この受付の人物には気付かれてしまったようだ。


「信用している方じゃないと、情報をおいそれと話したりなんてしませんよ。カインさんたち、ご無事ですといいんですけどね」


「ああ、そうだね」


 受付の人物の言葉に、メイベルはつい笑いながら答えてしまった。


 ワムの故郷について情報を得たメイベルは、冒険者ギルドを後にする。

 必要な情報は得たので、長居は無用とすぐに街を出発することに決めたようだ。


(私のことにまで気が付くとは……。あの受付嬢、なかなかに侮れないわね)


 メイベルは笑みを浮かべて、街を離れていく。

 世の中には、カインのことについて信じてくれている人もいるのだと思うと、ちょっとだけ嬉しくてたまらない。


(さて、ワムちゃんの故郷に向かうとして、誰かにつけられないようにだけは気をつけないとね)


 辺りを見回したメイベルは、誰もないないことを確認してさらに魔法を使う。

 現状、カインの居場所を知っている人間は自分だけである。自分の行動から発覚しないように念には念を入れているのだ。


(さあ、向かいましょうか、ワムちゃんの故郷へ)


 メイベルは一人、コボルトの集落のあったとされる場所へと向けて歩き出したのだった。

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