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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第27話 新しい服で再スタート

 翌日、ようやくカインは新しい服に身を包んでいた。


「おっ、ぴったりじゃねえか」


 思ったよりしっくりくる服に、カインはとても驚いているようだ。

 早速だが、軽く体を動かしてみる。シスイが注文してきた服は、思ったよりも動きを阻害しない。腕を振り回しても宙返りをしてみても、まったく問題はなかった。


「うわぁ。カインさん、とっても似合ってらっしゃいます」


 どたばたと物音がするので、気になったワムがカインの部屋にやってくる。そこでカインの服を見て、ワムは素直に感想をこぼしている。


「ああ、サンキュな。てか、ワムも新しい服が似合ってるじゃねえか」


「あ、ありがとう……ございます」


 カインの服に感動していたワムは、急に褒められたものだから、恥ずかしそうに体を縮こませながらお礼をいっている。指をちょんちょんと突き合わせる行動が、また可愛らしいというものだ。

 今回新しく作ってもらったワムの服装は、ワンピースではなく、裾の少し長い上半身の服になっている。ちょうど股くらいまでの丈である。下半身は少しふわっとした感じのパンツルックになっている。コボルトということで、足首までではなくひざ下までの七分丈ほどのパンツルックだ。

 股上は少し浅めに作ってあり、紐で縛って固定するタイプになっているために、しっぽへの影響もだいぶ考えられた服装になっているようだ。


「今回は上下の別れた服装なんだな」


「はい。以前のですと、ワンピースの裾がしっぽでめくれてしまいます。それを気になさったシスイさんが、わざわざこのような服装を注文して下さったそうです。これなら、以前のものに比べて、しっぽが苦しくありません」


「ふむ、よかったな」


「はい」


 カインがあごを擦りながら服に関して話をしていると、ワムは握った手をあごの下あたりで近付けながら、笑顔で話している。よっぽど嬉しかったようだ。

 今回の服装も、前回と同じミアズマスパイダーの糸で作られている。瘴気のクモではあるが、その糸は軽くて丈夫という不思議な糸だ。ただ、解毒してからでないと使えないという代物だが、その分、その手の類に対しての耐性を持っている。なにかと危険の多い魔瘴の森では、この上ない防具ともなるのだ。


 服を着替えた二人は、外へと出てくる。そこではシスイが朝食の支度を始めていた。


「あら、おはよう。似合っているわね」


「おう、シスイ。まったく、服も靴もぴったりでびっくりしたぜ」


「ふふん。あたしは精霊よ? このくらい把握できてなくてどうするっていうのよ」


 素直な感想をぶつけるカインに対して、シスイは得意げな表情を見せている。

 精霊だからという理由もあるが、シスイはカインに対して正気に戻してもらったという恩もある。だからこそ、変なものは用意できないというわけなのだ。精霊は思ったよりも義理堅いのである。


「ワムの方も、今回の服もしっかり合っているみたいね」


「はい。とても動きやすいですし、しっぽもこの通りですよ。ありがとうございます、シスイさん」


「いいってことよ。気にしないで」


 両手をそろえて、深々と頭を下げるワム。その姿を見て、ちょっと照れくさそうにするシスイなのであった。

 くるりとカインたちに背を向けると、シスイは朝食の支度を再開させる。その姿を見たカインとワムは、くすりと笑い合うのだった。


 その日の朝は、畑仕事に打ち込んだカインとワム。

 お昼からはというと……。


「今日は剣の稽古をお願いします」


「おう、しっかりと稽古をつけてやるから、覚悟しろよ?」


 魔法が使えるようになったワムは、今度は剣の稽古を再開させることにしたのだ。

 それにしても、ワムはかなり意欲的である。

 正直なところ、カインは魔法が使えるようになったところで、ワムは満足すると思っていた。ところが、翌日にはこの状態だ。そのやる気にびっくりしている。


「やるからには、しっかりと指導するからな。さっ、今日も剣の素振りを二十回だ」


「はいっ!」


 稽古というから打ち合うのかと思ったら、カインは剣の素振りから入っていた。

 それというのも、ワムが剣に対してまだ十分に親しんでいないというのがある。いきなり剣を持たせて打ち合いをするのもいいのだが、剣に慣れ親しんだカインと素人のワムでははっきりいって勝負にならないだろう。だからこそ、素振りをさせているというわけだ。

 カインに素振りを言い渡されたワムは、それはとても真剣な表情で剣を振っている。

 二十回なんてあっという間だろうが、たったこれだけでも素人のワムからは汗が噴き出てくるくらいだった。


「はあ、はあ……。に、二十回、終わりました……」


 持っている木の棒を支えにするような状態で、息も絶え絶えという感じだった。


「うん、まだ剣を振っているというよりも、振り回されているって感じだな。まずは体力づくりからしっかりしないと、打ち合いをするにしてもすぐにばててしまうぞ」


「は、はい。が、頑張ります……」


 カインの言葉に、ワムは肩で息をしながらもしっかりと答えていた。

 シスイが魔法を使ってワムに水を飲ませている間も、カインはじっとワムのことを見ていた。

 魔法のこともそうだが、このワムというコボルトには可能性を見出しているようだった。

 水分を補給して元気になったワムを見つめながら、カインは将来が楽しみだとつい微笑んでしまうのであった。

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