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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第26話 状況は一段落

 夕方を前にして、シスイが戻ってくる。その手には服が入っているだろう箱が抱えられている。


「ただいま。服を受け取ってきたわよ」


「よっ、おかえり。毛皮とかはどのくらいで売れたんだ?」


「まぁ、このくらいね。服の代金で結構消えちゃったけどね」


 戻ってきたところにカインが売り上げのことを聞くと、シスイはお金の入った袋をじゃらりとぶら下げていた。ジャラジャラと音がするので、それなりに中身は入っているようだ。

 服のことは気になるカインだが、今はそれよりも見せることがある。シスイに荷物を置くように伝えると、カインは小屋の外で待っている。


「もう、なによ。せっかく買ってきたのに、まだ着ないっていうわけ?」


 服を小屋の中に置いてきたシスイは、強く不満を示しているようである。それというのも、また街の中で後をつけられていたからだ。

 人間の街に出かける時のシスイは、結構な美人の姿になっている。なので、どうしても悪い虫がついてしまうようだった。それを振り払って戻ってきたのだから、先に服を着てもらいたいという気持ちがあるらしい。

 しかし、カインの声が少し弾んでいたように感じたので、文句は言いつつもカインたちのところへと向かっていった。


 シスイがカインのところへやって来ると、そこにはワムも一緒に立っていた。


「シスイさーん」


 シスイの姿を見つけたワムは、かなり明るい声で、手を振りながら大声でシスイを呼んでいる。


「ワム、どうしたのよ。ずいぶんと嬉しそうに見えるけど」


 コボルトということもあって、しっぽもぶんぶんと振られている様子が見えてしまう。なので、とにかく嬉しそうなのは一目瞭然なのだ。だからこそ、シスイはこんな風にいうのである。

 それに対して、ワムはただ照れくさそうに笑っているだけだった。シスイはまったく理由が分からず、腰に手を当てながら首を捻ってしまっている。


「まぁ、これからちょっと今日の成果を見せるから、そこに立っていてくれよ」


 わけが分からないシスイに対し、カインもなんとも意地悪そうな表情で笑っている。

 二人揃って気持ち悪いくらいに笑っているものだから、シスイはしょうがなく二人と向かい合うようにして立つことにした。


「それじゃ、この辺を見ててくれよ。さぁ、成果を見せてやるんだ、ワム」


「はい、カインさん」


 カインに声をかけられたワムが、昨日までに大穴を開けられてボコボコになった地面に向けて両手をかざしている。一体何をするのだろうかと、シスイもその手の先をじっと見つめている。

 しばらく目を閉じて集中したワムは、カッと目を見開く。


「土よ!」


 カインが魔法を使う時のように、ひとつ掛け声を言い放つ。

 次の瞬間、ワムが今まで見せたことのない魔法の効果を発動していた。


「おおっ?!」


 その様子を見ていたシスイも、大きく目を見開いてしまっている。

 大穴の周囲から土が掘り返され、大穴が埋められていっているではないか。なんとも初めて見るまともなワムの魔法に、シスイも驚きを隠せない。


「すごいじゃないの。ちゃんと魔法をコントロールできてるわ」


「えへへへ」


 感心するシスイの言葉に、ワムは嬉しそうに笑っている。

 ただ、それがどうして可能になったのだろうか。シスイはカインへと視線を移している。


「カインってば、どうやってこれを可能にしたのよ。あたしがいくら教えてもできなかったいうのに」


 自分ができなかったことをやり遂げたカインに対し、シスイがぐいぐいと迫っていっている。そのあまりの勢いに、よく知っている相手とはいっても、カインは困ってしまっているようだった。


「落ち着け。これから説明してやるからよ」


 困り果てたカインは、近寄れないようにシスイの肩に手を置いて押し返している。まったく、シスイがここまで興味を示すというのも珍しいものだ。

 カインが説明した内容は、とにかくどういう魔法が使いたいのかということを徹底的にイメージさせたということだった。

 聞かされた内容に、シスイはなんとか納得がいったようである。


「そっかぁ。単純にあたしの説明が下手だってことね」


「まぁ、そういうこったな。精霊って、そういうところは大雑把すぎるからな」


「悪かったわね」


 ところが、不用意に言い放ってしまったせいで、シスイは不機嫌そうに頬を膨らませていた。その通りではあるものの、はっきり言ってくれるなということなのである。

 その様子を見ていたワムは、なんだかよく分からない様子で何度もまばたきしていた。

 そうかと思えば、急に笑い出してしまう。


「ちょっと、なによワム」


 突然笑い出したワムの様子に困惑したシスイは、つい不機嫌そうな声をかけてしまう。


「いえ。やっぱりお二人って仲がいいんだなって思いまして。なんだか知らないですけれど、そう思った瞬間につい笑ってしまったんです。申し訳ありません」


 シスイに怒られたことで、ワムはつい謝ってしまっていた。

 ところが、この態度を見たカインとシスイは、顔を見合わせてしまう。


「まったく、少しは状況を考えろよな」


「うるさいわね……。まあとにかく、魔法がうまく使えるようになってよかったわね、ワム」


 カインに咎められたシスイは、ちょっとバツが悪そうな顔をしながら、改めてワムを褒めていた。

 新しい服も届き、ワムの魔法の腕前も上達した。

 これで、少しは状況がよくなるだろうかな。

 目の前で戯れるシスイとワムの姿を見ながら、カインはそう思ったのだった。

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