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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第24話 不可解な衝撃

 ワムやシスイと別れたカインは、一人で魔物を狩りに来ている。

 次の訪問でシスイが服を取りに行けば、それを最後に街へと行くことはなくなる。それを前に、最後の収入を得ておこうと思ったからだ。

 もちろん、日々食べる肉を手に入れるという目的もあるが、お金というのはいつ必要になるか分からない。なので、少しでも持っておいた方がいいと考えているのである。

 今日の討伐対象は、定番となっているミアズマディアーだ。肉はちゃんと処理をして乾燥させれば、そこそこもつ保存食になる。

 そしてなにより、毛皮と角はそれなりの値段で売れる代物だ。そこらのディアーに比べれば丈夫なのだから当然だろう。

 カインはちょっとは楽をできるようにと、この日ばかりは気合いを入れてミアズマディアーを狩っていた。


「よっし、こんなもんかな」


 カインは討伐したミアズマディアーを解体している。

 以前の感覚を取り戻したために、ミアズマディアーの倒し方や処理の仕方はかなり手慣れたものになっていた。毛皮これでもかというくらいに、きれいな状態で取れるようになっていた。

 ただ、これだけきれいな状態で取れるようになってくると、魔瘴の森で暮らすようになってすぐの頃の毛皮と入れ換えたくなってくるというものだ。自分のはボロボロでいいが、ワムの分はもう少しきれいにしてやってもいいかなと考えるようになっていた。一応、女の子への気遣いはできるらしい。

 そんなことを思いつつも、今回のは売り物だと、結局カインは割り切っていた。

 ミアズマディアーの毛皮、角、そしてメインの肉を手に入れると、ワムたちの待つ開けた場所へと戻っていった。


 小屋のところまで戻ってきたカインは、目の前の光景にちょっときょとんとしてしまっている。

 小屋の近くの開けたところでは、シスイがワムに対し魔法の指導を行っていたはずだ。

 話では魔法の基本的なことだけを教えるということになっていたはずなのだが、そこで見た光景に驚かされていた。


「おいおい、なんでこんなことになってるんだよ」


 持ち帰ってきた荷物を小屋の入口に無造作に置くと、カインはワムたちのところに駆け寄っていく。

 カインがこれだけ驚くのにもわけがある。

 シスイとワムが立っているのはいいのだが、その周辺の土が何かで掘り返したかのようにえぐれていたからだ。出かける前にはこんなことはなかったのだから、そりゃ驚いても当然というわけである。

 ところが、声をかけてもワムもシスイもまったく反応しない。ということは、ついさっき起きたことということなのだろう。

 だが、そうなるとカインの方が今度は首を傾げる。ここに戻ってくるまでに、魔法が使われたような形跡がなかったからだ。

 普通、魔法を使うと個人差や魔法による差があるものの、それなりに魔力が漏れ出るものだ。

 目の前では地面が掘り返されるほどの魔法が発動したのであれば、魔法は大して使えないカインでも、何らかの反応を示していたはずである。ところが、それがまったくなかったのだから、カインがこんな反応を示すのは当たり前なのだ。


「ああ、カイン。お帰り」


「ただいま。って、なんで今まで呆けてたんだよ」


 あまりのシスイの反応の遅さに、カインは責め立ててしまう。


「そんなの、見れば分かるでしょうに」


 カインが文句を言うものだから、シスイは目の前の惨状を改めて見せつけている。

 シスイの目を向ける先には、さっきから散々目撃したえぐれた地面が見えている。


「どうしてこうなったんだ?!」


「ワムに魔法を教えていたら、こんな風になったのよ。意外と筋がよかったから、なんでもいいから魔法使ってみてって言ってみたら、結果がこれなのよ。コボルトなのに、なんなのよ、この魔法の威力は!」


 どうやら、ワムが魔法を使った結果がこれなのだという。

 シスイですらも混乱しているようなので、魔法を使ったワムに問いかけることにしてみている。


「ワム、これは一体どうやったんだ?」


 がっちりとワムの両肩をつかんで、しっかりと目を見ながらカインは状況を確認している。

 あまりにも衝撃が強かったのか、ワムはしばらくまったく反応を見せなかった。


「おい、ワム。しっかりしろ!」


「わっ、か、カインさん?!」


 つかんだだけでは反応がなかったので、カインはやむなく前後に揺らしていた。そうすると、ようやくワムは我に返ったようだった。


「いったいこれ、どうやったんだよ」


「えっ?」


 我に返ったワムだったが、カインの質問にすぐに答えられないようだった。


「わわっ、なんですか、これは?!」


 きょろきょろを視線を移し、自分の目の前の地面の惨劇を見て、なぜかびっくりしていた。


「ワム、あなたがやったのよ、これ」


「えっ、ええっ?!」


「とりあえず、シスイ。俺に分かるように説明をしてくれ」


 頭を抱えるカインは、なんとか冷静さを取り戻したシスイに状況を聞く。

 なんでも、魔力を扱えるようになったワムに、なんでもいいから適当に魔法を使ってもらったら、目の前の酷い状況になったそうだ。

 驚きすぎたワムは、その時の記憶がどうやら飛んでしまっているらしい。話を聞いても、カインはまったく理解できないようだった。


「うん、シスイ」


「なによ」


「当分、魔力の扱い方をしっかり基礎から教えてやってくれ。これじゃ、せっかく建てた小屋も壊されかねないからな」


「了解」


 地面を吹き飛ばしてしまったワムは、魔力を完全に制御できるようになるまで、魔法は使用禁止になってしまったようだった。

 その後、落ち着いて徐々に状況を思い出してきたワムは、小屋の中ですっかり落ち込んでしまったようだった。

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