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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第20話 カインの過去

 カインとメイベルは、ワムに対してすべてを話した。もちろん、シスイとの出会いについてもだ。

 とんでもない話をいきなり聞くことになったので、ワムの目はどこを見ているのかまったく分からないくらいに意識が飛びかけていた。


 それによれば、カインは元々ただの村人で、メイベルもただの聖職者の一人にすぎなかった。

 二人の運命が変わったのは、この世界における神の手によって、勇者が召喚されたことだった。

 神の手によって選ばれた勇者には、自分が必要とする仲間と必ず出会うという妙な能力が備わっており、それによってえらばれたのが、カインとメイベルだったのだ。

 勇者との出会いによって二人は秘められた能力に目覚め、異世界よりやってきた勇者と魔王を倒す旅に出た。


 魔瘴の森に寄ったのも、その流れからだった。

 初めて訪れた時の魔瘴の森は、今よりももっと瘴気が濃く、呼吸すらもままならない場所だった。

 今のようになんとか通れるほどに瘴気が薄まったのは、いうまでもなくメイベルの能力に寄るものである。

 だが、魔瘴の森に存在していた精霊や魔物たちは、森の瘴気に長年侵され続けており、完全に我を失っていた。シスイもそんな自分を失った精霊の一人として、カインたちに襲い掛かったのだ。

 結果は勇者たちに討たれ、メイベルの手によって自我を取り戻したのである。その後は森の中の案内人として、森を抜けきるまでの間、一時的に仲間として行動したのである。


「そ、それじゃ、シスイさんも勇者の仲間だったってわけですか」


「まあ、そうね。とはいえ、その当時のあたしは森の外に出るなんてことはできなかったけどね。これだけ自由が利くようになったのは、この森に対する魔王の制圧が消えたからだと思うわ」


「そ、そうなのですね」


 ワムはしっぽをピンと立たせ、目をまんまるとした状態のまま、シスイに話しかけていた。

 ちょっとめんどくさそうにはしていたものの、シスイはワムの質問にはしっかり答えていた。

 最初こそカインのおまけみたいだったワムだが、長らく一緒に住んでいることで、シスイの意識もそれだけ変わったのだと思われる。


 ちょっと話はずれたものの、カインとメイベルの話はまだ続く。

 魔瘴の森を抜け、魔王の城に無事に到着したカインたちは、激闘の末、魔王を打ち倒した。

 普通ならば、これで勇者とともに戻って報告となるところだったのだが、そこで異変が起きた。

 魔王を倒した時点で、なんと勇者として召喚された人物が、謎の光に包まれて忽然と姿を消してしまったのだ。

 あまりにも突然のことで、カインとメイベルはまったく何が起きたのか理解できなかった。

 しかし、魔王を倒したことは報告しなければならない。

 魔王の城を出て戻ろうとしたカインたちに、勇者がいなくなったことで魔王の仇を取ろうとする魔族たちが襲い掛かってきた。

 カインとメイベルの二人だけという状況に加え、魔王との死闘が終わった後だったこともあり、カインとメイベルは苦戦を強いられた。

 どうにか命からがら、魔族たちの襲撃を潜り抜けて、カインとメイベルは勇者が最初に現れた国まで戻ってきた。

 そこで国王に報告した二人を待っていたのは、とても信じられない仕打ちだった。

 カインには勇者殺しの疑いをかけられ、そのまま投獄。メイベルも勇者を守れなかった責任を取らされて謹慎させられてしまった。

 魔王を討伐したというのに、勇者がいなくなっただけで真逆の対応をされてしまったのだ。二人とも、自分たちがしてきたことは何だったのかと、それは打ちひしがれたものである。

 だが、メイベルが目覚めていた魔法の力によって、カインは最悪の事態を脱し、そのまま放浪の旅に出たのだった。

 メイベルは自分の魔法の痕跡を消し、謹慎の罰を甘んじて受け続けたのだった。


「な、なんですか、それは……」


 カインたちの身の上話を聞いて、ワムはとても信じられない顔をしていた。


「魔王様を倒したということは、人間たちにとってはとても称賛されることではないのですか? なぜ、勇者がいなくなっただけで、そのようなむごいことを……」


 魔族であるワムですらも、しっかり理解できることだった。だが、人間たちはその当たり前が理解できなかったのだ。勇者がいないというただ一点を問題視し、功績を握りつぶしてしまったのだ。それどころか、勇者の殉職ではなく、殺害というとても捻じ曲げられた形でだった。

 カインがあれだけ無気力に振る舞っていたことも納得のいく状況だったのだ。


「残念だけど、事実なのよね。私の謹慎も解ける気配がなかったので、魔法で身代わりを置いて逃げ出してきたくらいよ。あの国の国王やその側近たちの頭は、とても理解できたものじゃないわ」


 メイベルも大きなため息をついていた。


「国の外に出れば、俺のことを可哀想に思ってくれる人もいたくらいだよ。ギルド証を見せても、少し驚くだけでそのまま通してくれるくらいにな」


「カインさん……。苦労なされてきたのですね」


 ワムはカインに同情しているようだった。自分の身も危険だというのに、お構いなしに自分を助けてくれたのだから。


 話を終えて、カインはメイベルに確認をする。


「お前はどうすんだ、メイベル」


「私はこのまま、世界を放浪する旅を続けるわ。聖女として目覚めた以上は、困った人を放っておけないもの」


「そっか……。お前らしいや」


 メイベルの答えを聞いて、カインは小さく笑っているようだった。


 複雑な事情を持つ者たちの顔合わせは、しんみりした雰囲気になりながらも、思ったよりも平和に終わったのであった。

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