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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第19話 再会する仲間

 数日後、シスイの誘いに乗ったメイベルは、魔瘴の森の中を進んでいた。


「ホーリーレイ!」


「ギャアッ!」


 魔物が襲ってきてもこの通り。冒険者をしているだけあってか、魔物も実に一撃である。

 だが、メイベルがこの魔瘴の森に来たのは、実は初めてではない。シスイと面識があるのだから、当然だろう。


(えっと、シスイと出会った時の沼はこの方角だったわね)


 記憶を引っ張り出しながら、メイベルは魔物を倒しながら、魔瘴の森を奥へと進んでいっている。


 やがて、やや視界の開けた場所に出てくる。

 その場所に到着した時、メイベルはなんとも懐かしい姿を見つけた。


「カイン?!」


 姿を見つけるなり、思わず声が出てしまう。


「うおっ、メイベル?! なんでお前がここにいるんだ」


 声が聞こえたので、カインもつい反応してしまう。くるりと振り返った先には、見知った顔があったのだ。

 金髪碧眼の整った顔の女性は、間違いなくカインの知る人物だった。


「あの、カインさん。あの方はご存じなのですか?」


 カインと一緒に畑の世話をしていたワムが、ついカインに尋ねてしまう。

 ワムに声をかけられたカインは、こくりと頷いている。

 ところが、その瞬間、メイベルの表情が険しくなる。


「その子、コボルトじゃないのよ。街で手配書に描かれていた子ね。本当にお尋ね者になっているなんて、何をしているのよ」


 メイベルはずかずかと歩いてきたかと思うと、そのままカインに至近距離まで迫っていた。あまりの勢いに、カインもたじたじといったところだ。


「落ち着け、メイベル。とりあえず事情を説明するからさ」


 メイベルの肩に手を置いて自分から離そうとするものの、メイベルの勢いは止まらず、まったく引き離すことができなかった。

 だが、事情を説明すると発言したことで、メイベルは一歩下がってくれた。頬を思いっきり膨らませてではあるが。


「しょうがないわね。意味もなく行動するような人じゃないから、事情くらいは聞いてあげようじゃないの」


「ああ、助かる」


 カインは困った顔をしながら、自分の後ろにある小屋の方へと視線を向ける。


「あそこに小屋があるから、ワムも交えて、話をしよう。ここで暮らし始めてからそんなに経ってないから、何も出せないがな」


 カインの申し出を受けて、メイベルは仕方なく小屋へと移動していく。その間、コボルトのワムには怪しむ目をずっと向けていた。その視線はとても怖く、久しぶりにワムの耳としっぽは力なく垂れさがっていた。


 小屋に入って、カインとメイベルは向かい合って座る。ワムはメイベルの視線から逃れるように、カインに隠れるようにしている。


「いや、どこから話をしたらいいんだろうかな。国に帰ってからいろいろあって別れたっきりだったしな」


「あれは、早合点した国の連中が悪いからそれはとりあえず置いておきましょう」


 頭をかくカインに対して、メイベルは長い話を求めていないようである。その興味は、カインの後ろに隠れるように座るコボルトのワムに向けられていた。

 さすがにカインも、鋭いメイベルの視線に気が付いている。

 一度ワムへと視線を向けたかと思うと、改めてメイベルへと向き直った。


「こいつはワムっていうんだ。魔族狩りども数人がかりに終われているところを助けたんだ」


「そうだったの。その代わりにお尋ね者になってちゃ、世話ないと思うんだけど」


「まあ、そういうなよ。俺たちは世界を救えると信じて、勇者に味方して魔王を倒したんだ。だが、どうしたものだ。ふたを開ければ、今度は人間が魔族を狩り始めた。やられたことをやり返しているようじゃ、結局同じことの繰り返しだろ?」


「……確かにそうだわね」


 今の世界の状況を、カインはかなり憂いているようである。ワムを助けたのも、そういった世界への抵抗からだったと話している。

 カインとは付き合いの長かったメイベルは、その言い分に素直に納得がいっているようだ。


「状況からして、ワムの一族は皆殺しにされているだろう。俺もちょうど表じゃ暮らしにくくなってたから、ワムを助けたついでに、こうやって魔瘴の森に引っ込んだってわけなんだ」


「なるほどね。確かに、勇者殺しの嫌疑をかけられたんじゃね……」


「ああ。魔王を倒して英雄としてまつり上げるはずの勇者が、忽然と消えてしまったんだからな。となれば、どうしても俺に疑いをかけたがるだろう。常に一緒だった仲間だしな」


「私は聖女だったから、その疑いから逃れられたのよね。でも、いくらなんでもひどい話だったわ」


 カインはメイベルといろいろと話をしている。

 昔の話まで出てきたせいで、ワムは目を丸くしてこてんと首を傾げてしまっている。


「勇者? 聖女? えっ、えっ?」


 いろいろ飛び出してきた単語に、完全に理解が追いついていないようだった。

 その様子を見たカインは、この状況では隠し切れないと見て、ワムに正直に話すことを決めたようだ。


「ああ、俺とこいつは、かつて魔王を倒すために勇者とともに旅をした仲間だったんだよ」


「えっ、ええええ~っ!」


 カインからの衝撃告白に、ワムのとんでもなく大きな驚きの声が、小屋を揺るがすくらいに響き渡るのだった。

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