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青年と少女コボルトの緩い自給自足生活  作者: 未羊


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第13話 シスイのエクセレント農業教室

 翌日、カインはいよいよ畑を作ることにした。

 はっきりいって、冒険者をやっていたのでほとんど知識はない。だが、水の精霊であるシスイがいるので、よく分からないことをしても大丈夫だろうと考えている。


「よくよく思えば、農作業の道具もないのに、どうやって畑をするっていうのよ」


「まっ、どうとでもなるだろうよ」


「……まったく見てらんないわ」


 何の手も加えていないところに芋を植えようとしているものだから、シスイは思わずカインを止める。


「ちょっと見てなさいよ」


 シスイはそういうと、ワムも呼んで畑の作り方を教え始めた。

 水魔法で鍬を作り出すと、ザクザクと地面を掘り返し始める。

 それにしても、すべてが水だというのに、地面に染み入ることなく地面を掘り返している。この精霊、ただものではない。

 シスイが地面を耕す様子を、カインとワムはじっと見つめている。


「こうやって、地面を掘り返して土を混ぜておいて、作物を受けるところは少し高くする。これが畑の基本よ」


「へぇ、シスイって物知りなんだな」


「これでも精霊よ? 自然に関することなら結構知識を持ち合わせているわ。能力が属性に長けているだけでね」


 説明を聞いたカインが感心していると、シスイは胸を張って自慢げな表情をカインたちに向けている。


「カインくらいの剣捌きができるなら、そこらの木から削り取って作れるでしょうよ。最初だからあたしがやってあげるけど、次からは自分でやりなさいよね」


「へいへい。任せてくれよな」


 シスイが面倒くさそうな表情を向けてくるので、カインは分かったよと言わんばかりの表情を向けている。はたしてこんな組み合わせでうまくいくのか、疑問になってくるくらいだ。


「あの……。私は何をすればいいのでしょうか?」


 話を聞いていたワムが、手を挙げて質問をしている。


「そうね。ワムはカインが耕した畑に、芋とかを植えればいいわ。この辺りの植物のことだったら、あたしに聞いてちょうだい。食べられるものかそうでないか、ちゃんと教えてあげるから」


「は、はい。分かりました」


 シスイから言われたワムは、戸惑いながらもしっかりと返事をしていた。


「それじゃ、あたしが服を取りに行く三日後までに、ひと通りのことは教えてあげるからね。自分のことは自分でやれなきゃ、生き残れないわよ」


「は、はい!」


「うむ、いい返事」


 話が終わると、それぞれ役割分担をして、畑を作る準備を始める。

 カインは畑を耕すための鍬を作るため、木を伐りに向かう。その間、ワムはシスイから育てて食べられそうな植物の説明を受ける。

 植物の説明を受けている間、ワムはやたらと植物を鼻に近付けてにおいをかいでいた。


「何をしてるの?」


「においを覚えているんです。私はコボルトですから、鼻には自信があるんです。においを記憶しておけば、似たような植物があっても間違えないと思いますのでね」


「なるほどね」


 ワムの言い分に納得のいくシスイである。

 近所を巡りながら、育てるのに適した植物を何種類か選んで帰ってきていた。


「他にも必要な植物があるなら、服を取りに行った時に種でも仕入れてくるわ。土の精霊じゃないからそこまでちゃんとできないけれど、これでも精霊の端くれだからちゃんと育ててみせるわ」


「そうだな。なら、小麦でもあると助かるな」


「了解。仕入れてくるわ」


 いつの間にか戻ってきたカインの要求に、シスイは驚くことなく返事をしていた。


「わわっ、カインさん。いつの間に?!」


「今さっきだよ。こんな感じでいいだな、シスイ」


「そうそう。ただ、そのままだと振り抜いた時にすっぽ抜けるわね。ちょっと貸してごらんなさい」


 カインが見よう見まねだけで作ってきた鍬を見て、シスイはダメ出しをしている。その鍬を受け取ったシスイは、水魔法で木の状態を調節していく。


「先端の方だけを少し細くして、そこにはの部分を差し込んで……。えいっ!」


 柄となる木の棒の先っぽに土を掘り返す部分を取りつけると、シスイは飛び出した先端部分に勢いよく水の塊をぶつけている。

 何事かとびっくりしていたカインとワムだったが、シスイは気にしないで同じ作業を数回繰り返している。


「よし、これで大丈夫よ。カイン、振り回してみて。ついでに地面にも突き刺して、少し引いてみてよ」


「分かった」


 カインはまずは数回そのまま空中で鍬を振り回す。それが終わると、勢いよく地面に突き刺して、ぐっと力を込めて手前に引く。

 土から取り出すと、鍬の先端は元の形が維持されていた。


「へえ、すごい」


「潰した部分が押さえになっていて、それで引っかかって抜けなくなっているの。柄の方も手で持つ方を太くすることで、下がってこなくなるしね」


「頭いいなぁ」


「へへっ、どうよ」


 シスイは再び胸を張っている。


「シスイさん、物知りです。私も賢い人になりたいなぁ」


「知識は持っていて、それをどう活かすかが大切よ。学ぶのも大切だけど、使えることが重要なんだから」


「はい!」


 ワムはものすごく鼻息を荒くしている。やる気に満ちているのか、しっぽがものすごい勢いで振られている。


 そんなこんなで、服の完成を待つ初日は、畑についての基本的なことで過ぎていってしまった。

 翌日は、カインが持っていた芋を植えて、いよいよ栽培が始まった。

 シスイからいろいろと教えられながら、いよいよ魔瘴の森での本格的な生活のスタートとなったのである。

 初めての農作業は、はたして見事な実りを迎えることができるのだろうか。結果が分かるのは、まだまだ先の話である。

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