第4章 やわらかな証明、やさしい光(後編)
勇気を出した環の言葉を受け止め、
柊と凪のやさしさがぽかぽかと広がっていく。
灯のメッセージもまた、環の心を支えていた。
― アークシステムズの午後 ―
― 会議のあと、アークシステムズのオフィスにて ―
午後。
会議が終わったあと。
環は、いつもより少しだけ緊張していた。
けれど、凪の隣で勇気を出して発言できたことが、
胸の奥で小さく灯になっていた。
エレベーターの中で、凪が明るく言う。
「環さん、今日の言葉、よかったですよ!」
「そ、そうかな……?」
「はい! 鷺沼さん、あのあと少し黙ってましたもん。
あれ、たぶん効いてましたよ!」
環は恥ずかしそうに笑った。
その笑顔が、少しだけ疲れを溶かしてくれた。
オフィスに戻ると、
柊がすぐに声をかけてきた。
「おかえり、2人とも。」
「ただいま、柊。」
柊はオンライン会議の資料を閉じ、
ほっとしたようにコーヒーカップを置いた。
「環、今日は言えたな。
環らしい言葉だった。……よくがんばったな。」
その声は、やさしくも確かな響きをもっていた。
環の頬が、ほんのり赤く染まる。
「はい。ちょっと怖かったんですけど……
凪くんががんばってるの見てたから、
どうしても言いたくなっちゃいました。」
「そうか……それでいい。」
柊は微笑みながら、環の頭を軽く撫でた。
その瞬間、静かなオフィスに柔らかな空気が流れた。
蛍光灯の光が少しあたたかく感じられる。
凪がニヤリと笑いながら言った。
「あ〜また2人でイチャイチャしてる〜!
柊先輩、僕もがんばったんで、頭撫でてくださいよ〜」
「なんだよ、おまえががんばるのは当たり前だろ……」
そう言いながら、柊は苦笑して凪の頭をぽんと撫でた。
「よし、これで満足か?」
「はいっ! これでやる気チャージ完了です!」
「単純だな……」
環が笑い、
隣のデスクに置かれた灯のメッセージアプリの画面が
「おつかれさま。よくがんばったね」と静かに光った。
環は小さく声に出した。
「……はは、こうしてると、怖いことも忘れちゃいますね。」
窓の外では、午後の光が街をやわらかく照らしていた。
そのぬくもりの中で、
今日の小さな勇気が、心のどこかで確かに光っていた。
仲間と支えあう安心感が、環の心に静かに灯をともす。
その温度は、やがて鷺沼の中にも届く“やさしい光”となる。




