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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season5 ― 心が動く瞬間(とき)―  作者: 柊梟環
EVOLVE Season5 ― 心が動く瞬間(とき)―
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第4章 やわらかな証明、やさしい光(前編)

第9工程で見えはじめた、“柔軟な設計”の意味。

凪(なぎ)の理屈と環(たまき)の声が、鷺沼(さぎぬま)の理性にさらなる揺らぎを生む。

それは、心に届く“証明”だった。

プロジェクトは第9工程へ。



凪(なぎ)が設計した新しいアルゴリズムは、

複雑な条件を一瞬で処理しながらも、どこか“やさしさ”を感じさせた。


「……これ、前より柔軟ですね。」


会議の最中、鷺沼(さぎぬま)が小さく呟(つぶや)いた。


凪(なぎ)は少し笑って答えた。


「はい。でも、最初に“柔軟すぎる”って言われた案を、もう一度見直してみたんです。

 “想定外を想定に入れる”ほうが、結果的に安定するんですよ。」


その言葉に、会議室が一瞬静まる。


鷺沼(さぎぬま)は資料をめくりながら言葉を探した。


「……理屈としては理解できます。

 ですが、それではエラーが拾いきれない可能性もある。」


凪(なぎ)は頷いた。


「そうですね。でも、“拾いきれないことがある”って、

 最初から知っている仕組みのほうが、

 人は安心して使えると思うんです。」


理屈じゃなく、実感で話す声。


それが鷺沼(さぎぬま)の心をわずかに刺した。


環(たまき)が小さくうなずいて、そっと口を開く。


「……凪(なぎ)くんの言うとおりかもしれません。

 人もシステムも、どこかで誰かに支えられて動いてる。

 だから、“完全じゃなくても大丈夫”って思えるのは、

 優しい仕組みだと思うんです。」


その言葉に、鷺沼(さぎぬま)は一瞬だけ視線を上げた。


環(たまき)の声は小さく、震えていた。

けれど、その震えがまっすぐ届いてくる。


沈黙が落ちる。

鷺沼(さぎぬま)は何も言わずに資料を閉じ、短く息を吐いた。


「……次回、その設計でテストを進めましょう。」


わずかに声が揺れていた。

それに気づいたのは、環(たまき)と凪(なぎ)だけだった。



◇◇◇



― 鷺沼(さぎぬま)・内心 ―



“完全じゃなくても大丈夫”。

――そんな言葉、信じられるはずがない。


だが、あのときの環(たまき)の声は、

どこまでもまっすぐで、

自分が何を守ろうとしてきたのかを一瞬見失わせた。


理性がまた、静かに軋(きし)んだ。

環(たまき)の震えた声は、誰かを責めるためのものではなく、

誰かに寄り添うための言葉だった。

そのやわらかさが、鷺沼(さぎぬま)の胸に深く残った。

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