日頃の行いの賜物
この前初めてチ金麦鍋?というものをつくりました。なかなか美味しいですね、あれ。
「リモコとミロが行方不明!?」
翌朝。
驚くべき回復力で目を覚ましたディスプくんに昨日の顛末を話すと、彼は予想通り焦燥の表情を浮かべた。
「うん。…ごめん」
「謝るなよ。キードのせいじゃないだろ」
「でも、責任はあると思うからさ」
「そんなことないだろ。その黒い翼の魔族だっけか?そいつのせいだって」
黒い翼を持った人型の魔族が隊長かもしれないということまでは、ディスプくんには伝えていない。ただでさえ二人を探しに飛び出してしまいそうなのだ。このことまで伝えてしまったら、まだ傷は癒えていないのに部屋を抜け出すに違いない。治るまでは黙っているつもりだ。
「ところで、どうやって探すか考えてるのか?」
「いや。…正直、どうしようか悩んでいるんだ。二人を探知できるような機械なんて持ってないしね」
「そうだな。何か二人が合図でも出してくれてたら探しようがあるんだけどな」
合図か。そういえば、遭難した時の過ごし方を授業で教えるとか、昔隊長が言っていたような。自分はその時もうすでに実戦部隊にいたし、習っていないんだけど。
「ねぇ、ディスプくんって遭難した時の過ごし方とかって授業で習った?」
「オレのとこにも学校はあったが、流石にそんなのは習ってないぞ」
そんなの自分だって同じだよ。
「学校じゃなくて、守護隊に来てからの話だよ」
「あぁ、そう言うことか。どうだったかなぁ、あったようななかったような…」
「重要なことなんだ、思い出してくれないかな?」
そう言うとディスプくんは唸りながら腕を組み、じっくりと考え込んだ。一の字に閉じていた口がだんだんと緩んでいく。
「思い出した!やった、やってたぞ!」
「本当!?」
「あぁ。もう忘れているけど、やったはずだ!」
忘れちゃダメでしょ。…いいや、一旦置いていこう。
「それでさ、はぐれたときの救助の待ち方とか習わなかった?」
「あー。だからもう何やったかは忘れちゃってて」
「何となくでいいから!」
「それだったらやったような…。確か雪山で遭難したら雪を溶かして飲みましょうとかそんなだった気がする」
「雪を溶かす…」
あぁ、それだったら聞いたことがある。水分を補うためにそこら辺にある雪を口に含むだとか。雑菌とかがあるらしいから、もし可能ならば鍋に入れてお湯を沸かすみたいにした方が良いらしいけども。
待てよ、別にお湯を沸かすだけじゃなくても、火は重要だよな。暖をとったり、灯りにしたり、獣避けにしたり。それに…。
「煙は目印になる…」
「あぁ、そうそう。そんな話もあったはずだ」
「そうだよね!もしかしたら、二人は火を焚いてるかも」
「なるほど、可能性は高いな。でもどうやって火を起こすんだ?」
「ほら、前にイオマくん達が簡単に火を点けることができる機械を作ってたじゃない。あれ、リモコちゃんが持ってたはずだよ」
「そんなのあったか?」
「あったの!」
ちょっと忘れすぎじゃないだろうか、彼。
とにかくそうと決まれば話は早い。二人が何か目印を上げている可能性があるのだから、それを探しにいってみよう。人数は…できるだけ多い方がいいな。だが移動手段などを考えると自分を除くと五人が限界か。動ける人間を考えるとキデンくん以外にあと四人。もちろんディスプくんは連れてけないし…。
「ねぇ、ディスプくん。今君がコーチしている中で、実戦部隊に入れてもいい人っているかな?」
「そうだな。教えてもいいが、一つ頼みがある」
「交渉のつもり?言っとくけど連れてかないよ」
「ぐっ」
図星か。
そんな怪我してる状態で連れて行くわけないだろうに。
「頼むよ。オレだってリモコとミロが心配なんだよ」
「ダメ。本当に二人のことを思うんだったら、完治するまで待つこと」
「ぐぅっ…。ぐうの音も出ねぇ」
出てんじゃん。
「えーと。そのことなんですが…」
と、その時。
いつから自分たちの会話を聞いていたのか、一人の看護師さんがおろおろとしながらディスプくんを見ていた。
「あの、もう大丈夫みたいです」
「…は?」
「ディスプさん、傷跡は残っていますがもう体に異常ないようなので…。もう、活動再開して問題ないと思います」
何だって。ちょっと待て、ディスプくんが大怪我を負ったのは確か二日前のはずだぞ。それがもう戦っても問題ないと?
…どれだけ凄いんだ、彼の回復力…。
「え、本当か?じゃあキード、もう何も心配ないな!オレ用意してくる!」
そう言うと彼は勢いよく部屋を飛び出して行った。残された自分と看護師さんだけが、少しもやっとしたような表情で佇んでいる。




