ギャンブル・イベント
30度超えが続く日が続いてます。暑い…。
「なら、一つ条件を追加してやろう。お前がおれ達に付いてくれるってんなら、その後ろの奴らを全員無傷で帰すことを約束しよう」
「何?」
「冗談だろってでも言いたいか?安心しろ、オレは約束を守る男だ」
そんなもの本当だという証拠がない。何だか益々胡散臭くなって来た。一か八かの賭けを考えていたが、これは降りた方が得策かもしれない。しかし、信じる信じないはともかく、こいつの機嫌を損ねるのはあまりよくない気もする。となると、やっぱり乗るだけ乗ってみるか?
「一つ質問させてくれ。無傷で帰すってのは、人間界へ返してくれるって言うことだよな」
「当たり前だろ。他にどこに帰す場所があるってんだ?」
「冥界に帰すだとか、ふざけた答えを出されたらたまらないからな。念のための確認だ」
「疑っているな」
「当然だろ」
お前たちに何人の仲間が殺されたと思っているんだ。そう簡単に信じられるはずがない。裏がないかどうか確認しておかないと、乗れるものも乗れやしない。
「仕方ない。良いものを見せてやろう」
「良いもの?」
魔王は何か呪文のようなものを小声で呟くと、突如おれ達の前方に巨大な魔法陣が現れ、まるで包み込むようにおれ達を通過していく。そして気がつくと、目の前にある景色が変わっていた。
城の中ではなく、森の中に。
「ここは」
「初めて魔界に来た時の森?」
恐らくそうだ。目の前にある石祠は見覚えがある。ということは、おれ達は魔王の城からここまでワープしたという事か。あの魔法陣を使って。
「どうだ?この周りに魔族なんていない。あとはそこから帰るだけだ」
「これもお前の力なのか」
「あぁそうさ。正確に言えばオレが唱えた魔法の力、だがな。それで…」
魔王は再び魔法を唱え始めると、何やら見覚えのある黒い魔法陣が現れた。ミズキコウがこちらに来る時に作った魔法陣とよく似ている。ということは、あれをくぐればおれ達は元の世界に帰れるって事か。
「さぁ、あとはお前次第だぜ?タイチョー」
「…」
「ここまでやったんだ。信用できないって言い訳は通用しないぜ」
確かにそうだ。それに信用するも何も、ここまで来たらこいつの返答なしで帰れるだろう。だが、一つだけわからないことがある。
「何でここまでする」
「ん?」
「おれ達を助けるメリットなんてないだろ。自分で言うのは癪だが、おれ達はお前とまともに戦えるかどうかも怪しいところだ」
「さっき言っただろ?お前が気に入ったんだよ」
「だったら力尽くで引き止めた方が早いだろ。わざわざ助ける必要はないはずだ。何か思惑があるとしか思えない」
「疑り深い奴だな」
「安心したいだけだ」
「はっ」
魔王はそうやって鼻で笑うと、そのまま何故か嬉しそうにおれを見つめていた。…まさかとは思うが、おれに惚れたとか言いださないだろうな。
「なら一つ付け加えてやる。オレはな、生にしがみ付く生き物が好きなんだよ」
「は?」
「生きたいと思う欲望、それを優先したなりふり構わない行動。そんな生物がオレは好きなんだよ。生きてさえいれば未来は切り開けるはずだからな。そこのお前は知ってるだろ?」
そう言って魔王が指をさした先にいたのはディスだった。
「オレ?」
「あぁ、最初に会った時に言った筈だぜ。『君たちが望む限り、俺たちは君たちを生かし続ける。約束しよう。』『君たちの未来は君たちが照らすのだ』ってな」
ディスはハッとしたような表情を浮かべた。よくわからないが、奴がそういう思考を持っているのは間違いなさそうだ。だとすると、奴はおれが生にしがみ付く生き物に見えたってわけか。…そんな振る舞いしてたか?
「意外って顔してるな。自覚がないのか?」
「…」
「確かにそうかもな。お前は自分だけの生にしがみ付いていない。人類全体の生、繁栄に重点を置いている」
「何?」
「そうだろ?そうでもなきゃ、そいつを創り出したりなんかしない」
次に魔王が見たのはミロだった。対魔族用生物兵器、おれが創り出した魔族と人間の子供。
「どうやって創り出したのかは知らないが、一筋縄では行かないはずだよな。生命を創り出すなんて」
「…」
「図星か、まぁいい。ともかくオレはお前が気に入ったんだよ。だから手元に置いてお前を見ていたい」
あぁ、そうか。大体わかった。
確かに今までのおれの行動を振り返ってみれば、人類全体の生に拘っていたと言えるだろう。だったら、それを踏まえた答えはたった一つだ。
おれはこいつらを、みんなを、人類を守りたい。そのためなら、この身なんて幾らでも差し出してやる。




