中途採用
頭痛と腹痛と吐き気がするという、やばい組み合わせに襲われてます…。病院に行くべきでしょうか…。
じりじりとおれ達の距離はなくなっていく。できれば後ろに下がりたいところだが、痛みのせいか足が上手く動かない。情けない話だ。
だが、幸いなことに頭と手は動く。なら問題ない。まだ戦えるということだ。
「ディス!」
「あぁ!」
助走をつけ、ミロに向かって駆け出したディスは、例の凹凸のついたグローブで殴りかかった。大きく足音を立てていたせいだろう。その攻撃はミロにばれていて、簡単に受け流されてしまった。
しかし、その行動のためにミロの意識はディスに向いた。その瞬間を待っていたのだ。
「くらえっ」
そのたった一瞬だけ、無防備になったミロへ発砲する。狙いは足だ。片方でも潰せば大分動きを封じることができ、それでいて避ける際は大きな動きをしなければならない。そう、例えば。
「そうやって飛ぶとかなっ!」
大きく跳躍したミロは、おれに向かって一直線に飛びかかってくる。読めていたさ、その行動…!
「もう一丁っ」
そしてもう一度足を狙って撃ち抜く。
空中じゃ鳥や虫でもない限り、急に動きを変えることなんてできない。それはミロも同じだった。おれに向かって襲いかかってきたミロはその勢いを変えることができず、放った銃弾がその足を貫いた。苦痛を堪えるかのような表情を浮かべるのと同時に、攻撃の勢いが落ちた。
チャンスだ、気絶させるなら今しかない。
「ディス!リコ!徹底的に押さえつけるぞ!キドはそのうちに眠らせろ!」
各々が頷くのを確認したあと、先ほどと同じように手首を押さえ、今度は体重をかけてのし掛かる。その隙にリコが足首を押さえつけ、ディスが顔を押さえる。
今度は抵抗なんてさせない。そうみんなの意思を繋ぐかのように、キドが持っている薬品が含まれたハンカチがミロの口に当てられた。1秒、2秒、3秒…!
「…寝たか!?」
やがて抵抗する力が弱まることを感じ、キドに問いかける。眉間に皺を寄せた険しい顔から、やがていつものおちゃらけた顔へと変わっていった。
「今度こそ大丈夫。寝たみたいっすよ」
「…はー」
思わず安堵の息が漏れた。何はともあれ、これで目的は達成だ。あとはこの魔王の元から撤退し、おれ達の世界に戻ればいい。
ふと、後ろからパチパチと小さな拍手が聞こえた。振り向くと、そこには何故か満面の笑みで拍手をする魔王の姿があった。
「素晴らしい、中々いい連携だった」
「…そりゃどーも」
これだけ心に響かない賛辞の言葉もないだろう。おべっかなのか本心なのかはわからないが、少なくともいい気分にはならなかった。
「特にお前。隊長とか言われていたな。お前がそのチームを纏める長なのか?」
「あぁ、そうだ」
「…へぇ」
何かを思いついたかのように含みのある笑みを浮かべ、魔王はおれに向かって指を指した。
「気に入った。お前、オレ達の仲間にならないか?」
「は?」
「お前ならば魔物の部隊だろうと、的確な指示を出せるだろうと思ってな。どうだ?」
どうだも何も、魔族につくわけがないだろう。何を言っているんだ。
…いや、待てよ。仮にここで魔族側の仲間になるフリをして、内部からこいつらを倒しておくっていうのもできるんじゃないか。
どうする。一か八か、賭けてみるべきか。




