終わりの時は近い
タイトル通り、終わりが近づいてきました。
「乗った。その勧誘、受け入れてやるよ」
「隊長!?」
後ろで驚愕の声が聞こえる。みんなの声が。当たり前だ。おれは今、人類を裏切る宣言をした。それがどういうことかは、こいつらが一番わかっているはずだ。
人類の繁栄を拒み、魔族の繁栄へと尽くす。おれが言ったことはそういうことだ。
「隊長!私たちのことは気にしないでください!」
「そうだ!そいつの言うことなんて気にしなくていい!」
そんな顔するな。リコ、ディス、キド。別に本気で裏切るつもりはない。やることやったら、すぐに戻ってやるさ。
その魂胆がバレるまで、…もしくはもうバレてるかもしれないが、その時までおれは魔王の側にいる。魔界の住人を根絶やしにするために。
「連れてってくれ、魔王。おれを、魔族たちのところに」
「おう、歓迎するぜ。タイチョー」
「いや、もうおれは隊長なんかじゃない。お前たちと同じ魔族だ」
「それは困ったな。その見た目では魔族を名乗れないだろう」
魔王は額に指を当て、「むむむ」と唸りながら考え込んでいる。その仕草はできの悪い芝居のようにわざとらしかった。やがて、良いアイデアを思いついたとでも言うように、これまたわざとらしくポンと手を鳴らした。
「よし、堕天使だ。そう呼ばせてもらおう」
堕天使か。
特に何か良いことをしたわけでもないのに天使の名を語るなど、何とも馬鹿らしいとは思うが、それでも良いだろう。今行っている馬鹿な振る舞いと比較したらマシな方だ。
「わかった、それでいい」
「じゃあ行くか、堕天使」
「あぁ」
魔王が振り払うように手を広げると、再び黒い魔法陣が現れた。そこに向かって魔王は足を進める。それに付いていくように、おれも足を動かした。
「隊長!」
また、おれを呼び止める声が聞こえる。今度はリコだ。一瞬足が止まるが、ここで振り向くわけにはいかない。だがリコは、おれに抱きついて強引に動きを止めた。
決心が鈍りそうになる。どうもおれはリコに弱いらしい。こいつに声をかけられると、どうも考えがまとまりにくくなる。
「私たちのことを考えているなら、行かないで」
「……」
「お願いです!私たちは、隊長と一緒に世界を守りたいんです!」
あぁ、それはおれも一緒だ。
だからおれも世界を守るために戦う。方法は違えど、目指す未来は同じなんだ。それを知ってもらうために、おれはリコに、小声であることを伝えた。
おれの思いを、そして最後の希望を。
それを聞いたリコは大きく目を見開いて、抱きしめていた手を離した。
「頼んだぞ」
「…はい!」
魔王がおれを見て、笑みを浮かべている。まるで何もかも見透かされているようだった。あいつのことだ、どうせおれが企てをしていることはわかっているんだろう。その内容さえ知られなければいい。
仲間たちを背後に、おれは魔王に向かって歩き出す。そして魔法陣を潜ると、そこは先程までミロと戦っていた魔王の部屋だった。
「それで、おれは何をすればいい?」
「まずはその姿を変えてもらおう。そうだな、翼でもつけてもらおうか」
あぁそうか。そういえばおれは天使なんだったな。その名前を使っても違和感のない程度には変装しなければならないということか。
「こっちに来い。お前の体に翼を埋め込んでやる」
「は、埋め込む?」
「おう。最初に言っておくが、お前の体は人間のそれではなくなる。仕方ないよな?お前はもう魔族なんだ」
…まぁ、そうなるよな。埋め込むだか人間じゃなくなるだか知らないが、なるべく痛くないようにしてほしいものだ。




