魔法戦闘
段々と強さのインフレが始まってきたような気が…。
竜人はギョロリとした目で鎧を睨みつけている。対して鎧の男は、どこ吹く風とでも言うように肩をすくめている。
「オレの目的がわかっている、ねぇ。それ本当か?他の生き物の気持ちなんてわかるわけないだろ」
「そういう話じゃないだろ。シオウ」
シオウ、だと?
流石におれでもその名前は知っている。魔族の中でトップの実力を持つ奴らの長、魔王の名前だ。ということは、あの鎧の正体は。
「いいから早くその鎧を返せよ」
「一々うるさいな。ただの安物の鎧じゃねぇか。一体どうしてこんな鉄臭い鎧が大事だっていうのかねぇ」
「どうだっていいだろ。大体、そう思うならどうしてその鎧を奪ったんだよ」
「おう、簡単だよ。一つは姿を隠すものが欲しかった。もう一つはお前に対する嫌がらせだ」
何じゃそりゃ。どこの世界も偉い奴はよくわからない考えを持っているものなんだな。
そう考えているのはどうやら竜人も同じなようで、深いため息を一つ吐いていた。
「一体お前は何がしたいんだ?」
「おや、オレの目的って奴を知ってるんじゃなかったのか?」
「さぁ、覚えがないな」
「都合のいいおつむじゃないか。どうしてもおれの考えが知りたいってんなら、力ずくで聞き出してみたらどうだ」
「そうだな、そうさせてもらう」
竜人は魔王に飛びかかり、まるで猿のように抱きつくと、そのままゴロゴロと転がっていく。しかし転がる中、鎧は竜人の体を突き放す。
突き放された竜人は一人で転がりつつも、すぐに体勢を立て直して再び鎧に飛びかかる。そして兜を取り外そうと鎧の頭に手をかけるが、鎧はその手を払いのけると、竜人の体に数発の拳を叩き込んだ。
だが、竜人は全く怯まない。数発のパンチを全て受けきると、腕の部分を掴み背負い投げをして地面に叩きつける。そして地面で仰向けとなっている鎧に馬乗りになると、再びその手を兜にかける。
その瞬間、一気に竜人の周りが燃え上がった。魔法だ。魔族の中には特殊な力を使うことができる奴がいるという情報が残っている。実際に見るのはこれが初めてだが。
「熱いな…」
竜人も流石魔族といったところか。燃え上がっている炎の中でも、一言そう呟くだけで何も苦しそうに感じられない。
「随分平気そうじゃないか。コウくんよぉ」
「あぁ、最近体が丈夫になってきてね。この程度じゃ死ねない」
「あぁそうかよ。ならこれでどうだ?」
燃え盛っていた炎が、鎧のその言葉とともに凍りついた。メラメラと燃える炎がそのまま氷の中にしまわれていく光景は少し幻想的だな、と感じられた。
そして氷の中に囚われた二体の魔族はその中で全く動かない。文字通り凍りついているからだろうか。まさか、二体ともこの氷の中で絶命したのか?もしそうだとしたら随分間抜けなのだが。
そう思って氷に近づき中を覗いてみると、何やら中で僅かに動いている影が見えた。それを認識した瞬間、炎と魔族を捕らえていた氷が弾け飛び、氷の破片が雨のように襲いかかってくる。
「うぉっ」
そして氷の中で凍りついていた二体の魔族も動き出す。
「氷の中でも平然と動いていられるとは、中々やるじゃないか。コウくんよぉ」
「そいつはどうも」
こいつらの体は普通の魔族よりかなり丈夫なんだろうな。魔族の中でこんなに熱や、寒さに強い個体など見たことがない。流石魔王といったところか、竜人の方は何であんなに丈夫なのかわからないが。
「それにしても、本当に惜しい。お前のその力を魔族に使えないことが」
「そう思うんだったら自軍の魔族を育てればどうなんだよ」
「おう。やろうとはしているんだがな。中々時間がかかりそうなんだ」
「知るか」
吐き捨てるようにそう言うと、竜人は再度鎧に近づく。戦いはまだまだ終わりそうにないな。




