援護戦力
8時投稿がもう守れそうにありません…。
近づいては離され、離れては近づき、また近づいては離される…。二体の魔物は幾度となくその状況を繰り返していた。
今の状況だけ見ると、身体能力は竜人の方が高いのだろう。あれだけ鎧の攻撃を受けても衰えを知らない様子だ。
対して鎧の方は手数が多い。次々と新たな技を見せ、着実に竜人へダメージを与えている。また自分の間合いを理解しており、竜人から直撃を受けることがない。
戦いは長く、終わりが見えない。どうにかしてこの場を離れ、応援要請をした部隊を救助して撤退したいところだ。しかし、下手に動くと奴らに目をつけられそうで、おれたちはその場を動くことができなかった。
…いや、この熾烈な戦いに目を奪われ、行く末が気になっていたと言った方が正しいかもしれない。
「爆ぜろ」
鎧が前方に手をかざすと、そこで大きな爆発が起きた。しかし竜人はその爆発を何事もなかったかのようにくぐり抜けてくる。
「おいおい、ずいぶんタフだな。一体どんな生き方をしたらそんな体になるんだ」
「知るか。お前たちと戦ううちにこうなっていただけだ」
「あらら、オレたちがお前を鍛えてしまったってわけかよ。こいつは余計なことをしちまったな」
鎧は一つ、嬉しそうにため息を吐いている。
「これ以上余計なことをする前に、俺に倒されたらどうだ」
「はは、冗談。これでも種族を統べる王なんだ、ここで負けるわけにはいかない」
「知ったことか」
吐き捨てるようにそう言うと、竜人は鎧に向かって飛び蹴りを放つ。かなり体重の乗った蹴りのようだ、鎧が凹んでいる。
「あいつ…」
それを見たディスがふっと静かに笑う。
「どうした」
「いや。…あいつ強くなってんなって」
「はぁ」
満足気に笑うディスを見て確信する。やっぱりあの竜人はミズキコウなんだろう。かつての戦友と会えたためか嬉しそうなディスだが、おれは内心焦っていた。
あの二体の戦いは次元が違う。今所持している戦力で、奴らに対抗できるだろうか。正直に言えば勝てるとは思えない。大体、現状の最大戦力であるミロが敗北している時点で、力が及ばないと確定したようなものだろう。
何とかしなければ。人類を守るために、人々を救うために、何かしなければ。
「終わりだ」
気がつくと、戦いに決着がつきそうになっていた。恐らく先ほどの飛び蹴りを避けれなかったことで、鎧の動きが鈍ったのだろう。動きに先ほどまでの余裕がない。
ミズキコウが地面を蹴り、飛び上がる勢いを利用したまま殴りかかる。突如強風が発生しミズキコウの勢いが弱まったが、それでも強い。パンチを食らった鎧の体が大きく吹き飛んだ。
「くっ」
岩の壁に叩きつけられた鎧が苦しそうな声を漏らす。
「風の魔法で俺の攻撃を防ごうとしたのかもしれないけど、力不足だったみたいだな」
「さぁ、ね」
「とにかく鎧は返してもらう。それとお前の考えってのも、一応聞いておこうか」
無理やり兜を剥いだミズキコウはその兜を被ると、顔がむき出しになった金髪の男の顔を掴んだ。あれが魔王なのか、パッと見る限りではかなり人間に近い顔をしている。
「仕方ない、話してやるか」
「随分素直だな」
「おぅ、オレは裏表のない性格なのさ。素晴らしいだろ?皆まで言うな、オレほど素晴らしい魔族はいない」
「茶番はやめろ。今この状態でどっちが優位か、素晴らしい魔族のお前ならわかるだろ」
「あぁ、そうだな。よーくわかってるさ」
魔王がそう言うと、何やら足音が聞こえた。
「ミロ!気づいたのか!」
そう、足音の主はミロだ。だが様子がおかしい。顔は俯いており、おれの声にも反応しない。そしてそのままミロはミズキコウの元へふらふらと歩いていく。
「おいミロ、何やってんだ!」
そっちは危険だ。そう叫ぶより前に、おれは地面を蹴っていた。ミロに向かって駆け出し、その体を抑えようとする。しかし、おれがミロに追いつくことはなかった。ミロも走り出したのだ、ミズキコウに向かって。
「おい!」
ミロの速さは収まることを知らない。その勢いは止まらず、やがてその速度を維持したまま、ミロの右手がミズキコウの体を貫いた。
「…は?」
魔王を掴む力が弱まり、その場に倒れるミズキコウ。対して魔王は高らかに笑い声をあげていた。まるで全て自分の計算通りだと言わんばかりに。




