組み合わせ
今年ももう3月ですか。と最近気づきました。そろそろコナンの映画の季節ですね。
「おい、ミロはどこいった」
「また魔族を倒しに向かったんじゃないっすか」
ミロが魔族を察知する力があるとわかってから数日、時折ミロは姿を消すようになった。監視の目は付けているのだが、それを振り切って外へ出ているようで正直手に負えない。発信機が仕事をしていることが唯一の救いといったところか。
「おいキド。ミロの場所は」
「また遠くに行ってるみたいっすね。フレパットン海岸の方です」
「海辺かよ。魔族の奴ら、本当に色んなところに出やがるな。何考えてんだ」
「魔族の勝手でしょ。いっそのことミロに聞いてみたらどうっすか、少しは話せるようになったんでしょ」
「ほしい答えが来るとは思えないけどな」
なんて、こんなくだらないやり取りに長い時間を使うわけにはいかない。キドに車を手配するよう頼み、念のため何人かの戦闘メンバーを招集する。念のためというのはミロが一人でどこかへ行った場合、大体一人で敵を倒してしまうからだ。今回運転するのは戦闘もできるキドだから、一人くらいいれば見習いでもそれでいいだろう。
しばらく待つと十代半ばほどの少年がやってきた。真面目そうな、遊び心を知らなさそうな少年だ。そういえば前にディスがこいつのことを高く評価していたな。
「えっと、君がキデンくん?」
「は、はい。見習いですが、戦闘メンバーのキデン・シミツビです」
キドの問いに敬礼しながら答える少年、キデン。三文字は長いな、じゃあキンでいいか。
「おい、キン」
「キ、キン?な、なんでしょうか隊長様!」
顔通り真面目な奴だ、ガッチガチに固まってやがる。こんな調子じゃ、もし戦闘が始まったときに使い物にならなさそうだ。ここはリラックスさせる一言でも言ってやりたいが、その手の物はどうも苦手だ。
「キド、後は頼んだ」
「はいはい」
こういうコミュニケーション系についてはキドに任せるのが吉だ。今までもそうしてきたが、人間関係のフォローについては高い技術を持っている。おれにこいつの話術があれば、もっと部下からの信頼の高い上司になれたのかもしれないな。ないものねだりしても仕方がないが。
助手席に乗り込み、後部座席にキンが乗り込んだことを確認してキドが車を発進させる。行き先は例の海辺だ。それにしても、こういう時にキドがいると本当に楽だな。キドが振る会話で、後ろで話しているキンの声がどんどん明るくなっていく。こいつの話術を学んでみたいものだ。真似できるとは思えないがな。
「っと。ここらへんですかね」
タブレット端末をカーナビにしていたキドが急に車を停めた。気が付くと車窓から見える景色は青一色に染まっている。海だ。どうやら例の海岸に着いたようだな。
「ミロの反応はどっちだ?」
「データ上はすぐ近く。目に見えるところにいるはずなんですがね」
「あの、自分探してきます!」
「は?」
ちょっと待て。そう言う前に、新人は勝手に扉から飛び出し、砂浜の方角へ走り去っていった。勝手なことをされては困る。単体で行動して魔族と鉢合ったらどうするつもりなんだ。正義感にかられるのは良いことだが、後先考えないで行動されるのは困る。
「追うぞ、キド!」
頷くキドを尻目に車から飛び出し、トランクからアタッシュケースを取り出してキンの姿を探す。すると砂浜を猛スピードで駆け抜けていくキンが見えた。なんて足が早い奴なんだ、戦闘では役に立ちそうだが今となっては厄介なだけだ。
車で追いかけていった方が早いか?そう思ったつかの間、背後でギャアギャアと何かがわめく声が聞こえた。キンが走っていった真逆の方角だ。まさか。
「キド、双眼鏡」
「はいはい」
手渡された双眼鏡で遠くを見ていると、そこには魔族と交戦中のミロが写っていた。しかし意外だ、あのミロが手こずっている。相手の数を見る限り、単純に多対一で分が悪いといったところか。
アタッシュケースから愛用のハンドガンを取り出し弾倉をセットする。予備の弾倉を順番にポケットにしまい、最後の一つの中身を確認する。間違いない、くすねてきた奴だ。
「キド、おれはミロに加勢してくる。お前はさっさとあいつを連れて戻ってこい」
返事を待たずに駆け出し、射程に入った魔族を次々に打ち抜いて行く。相手はどうやら魚人のようで、魚に手と足が生えていて気色が悪い。あんなのに囲まれたら気分が最悪になるだろうな、といっても今突っ込んでいるわけだが。
急に現れたおれの存在に驚いたのか、ミロの手が止まっている。ぼーっとするな!そう叫んでみるが、自分の発砲音と魔族の鳴き声が相まって声が届いていないようだった。その隙だらけなミロの背後に、魚人が一体近づいてきている。
「ミロ!」
ダメだ、やはり声が届かない。全力で駆け出し、走りながら発砲するがどうも狙いが定まらない。こうしている間にも魚人はミロへじわじわと近づいて行く。くそ、ダメだ。間に合わな─。
「ギョエェェ」
なんだ、何が起きた。
おれが場の状況を理解する前に間抜けな声と共に、魚人は血を噴出してばたんと倒れてしまった。辺りを見渡してみると、近くに見覚えのある車がある。そして窓から狙撃銃をもったチャラチャラした男がこっちに手を振っていた。
「キド!」
向こうでキドが何かを叫んでいるが、生憎おれには届かない。どうせ給料アップだのなんだの言っているのだろう。考えるだけ考えてやるか。
「はぁぁぁぁ!」
今度は魚人の方ではっきりと叫び声が聞こえた。例の新人だ。どうやら緊張は解けたようで、張り切って魚人と戦いを繰り広げている。ミロも落ち着きを取り戻し、魚を扱う料理人のように魚人の身を割いていた。
さて、ここで黙っているわけにはいかない。弾倉を新しいものに変え、再び魚人に向かって駆け出した。




