ただの一匹の獣に
2週連続はまずいな…と思ってます。すみません。
しかもざっと内容を見返したら今回全く話が進んでいないです。
束の間の静寂がオレたちの間に流れる。竜の悲痛な叫びを聞いたあと、オレはなにも喋ることができなかった。悲しみと怒りに満ちた目の前では、何も言ってはいけない気がした。
唯一木々の葉が揺れる音だけが聞こえる。まるでオレの心を表しているかのように。
「それでもまだ、俺を助けるって言うつもりですか」
流れ続ける静寂を打ち破ったのは竜の方だった。その言葉はどこか諦めを感じられるような声で発せられていた。こいつが人間を食っているのだとしたら、それはこいつが他の魔族と同じく、オレたち人類の敵だとい言うことを示している。
つまりオレがこいつを助けると言うことは、人間の敵に味方するということだ。守護隊だのなんだの言っているくせに、やっていることは人間を追い込んでいる。
「そうだな。お前を助ける方法を考えるってことは、オレは魔族に肩入れすることになる」
「だったら」
「それでも助けたいって思う。昔オレが信じたお前を」
「…カッコいいですね。俺がもし同じ立場だったら、そんなこと言えないですよ」
「そうか?意外と言えるもんだぜ。相手が大事な仲間ならな」
「それができるのはディスプさんくらいです」
そう言うと、竜は会って初めて顔を緩ませてくれた。緑の鱗に覆われている顔にシワが生まれる。
「さぁ、オレはお前を助けるって決めたぜ。お前はどうする?」
「どうって…」
「助かりたいのか、どうなのかってことだよ。助かる資格がないとか言うんじゃねぇぞ」
「…助かるって、なんなんでしょうね」
竜は顔のシワを消し俯いた。あぁ。こいつまた無駄に悩んでいやがるな。
「そんなの簡単だろ。お前が持っているはずの、本心の願いを叶えることだ」
「願いですか。確かに俺は人間だって認めてもらいたかった。でもそれは目をそらしていただけなんです。俺は結局ただの化け物で、今まで戦ってきた魔族となんら変わらない」
あぁ、わかってるさ。こいつ、さてはオレが言いたいこと伝わってないな。
「その上で、お前はどうしたいんだよ。魔族でありたいのか、人間でありたいのか。どっちか決めれるだろ」
「…」
ここに来て、再び竜は黙り始めた。何か変なことを言ってしまったのだろうか。自分では全く自覚がない。竜は目を閉じて思考を走らせているようだ。そんなに考えることか。いくら今の竜でもこの質問にはすぐに答えられるものだと思っていたのだが。
「おい、竜」
「俺はどっちにもなれません」
「は?」
待っていた末に返ってきた答えは、オレの予想を斜め上に行くものだった。
「どういうこったよ」
「…すみません。どっちにもなれないって言うのが、俺の答えです」
だから、何でだよ。
人が食いたいなら、襲ってしまいたいなら、魔族の一員となってしまえばいい。
魔族が憎いなら、許せないなら、人間となってしまえばいい。ただそれだけのことじゃないか。
「俺はやっぱり人間の味方でありたい。人を襲う魔族が嫌いですし、許せないなって思います。でも、体は人を欲している。食ってしまいたいっていう欲望を、俺は完全に抑えきれることができない」
…なるほど。
オレが考えていること、その2つの答えが竜の中であると言うことか。だから人間にも魔族にもなれないって言い出したんだな。でも、だったら答えは一つだ。
「わかったぜ、オレがお前のことを理解しきれていなかった」
「だったら答えなんて」
「なぁ、このまま両方の敵になってしまうってのはどうだ?」
「え?」
オレの答えを聞いた竜は、鳩が豆鉄砲を食ったような、すっとぼけた顔を浮かべていた。
「あぁ。人間にも魔族にもなれないんだろ。だったら第三陣営になって、両方の敵になってしまえばいい。お前が倒したいものだけを倒して、守りたいものだけを守るんだ」
『人類』『魔族』なんて大きなくくりで決めないで、自分が思ったものだけで判断する。いわば、心のままに行動する獣になると言うことだ。
もちろん、これが完璧な答えではないことはわかっている。何よりこれをするってことは、味方が一人もいなくなるってことだからな。
「さぁ、どうだ竜。他に何か思いつくか?」
竜は三度目の沈黙に入った。自らのこれからのことを考えているのだろう。オレが思いつかないだけで他の手段があるかもしれないしな。
木々の葉が揺れ動く中、やがて竜は口を動かし始める。
「ディスプさん、俺は」




