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死んだと思ったら魔界で生まれ変わった  作者: 鳥羽こたつ
第三幕
40/146

三つ足黒羽

インフルエンザになりました。のどの痛みが全く取れないです…。

人造生命体、魔族の遺伝子を持った対魔族用の兵器。隊長はミロのことをそう言った。そして、ミロを開発したということも。

そのミロは今、目にも止まらないスピードで廃墟を駆け回り、ゾンビたちを駆除している。この動き、速さ、まるであの時見たオーガを倒した竜みたいだ。


「ミロについての話なら、詳細は後から資料で配られるはずだ」

「それで知りたいことは確認してほしいってことですか」

「あぁ。悪いがあいつに関してはろくな思い出がないんだ。…そう言うより、開発については思い出したくない」


空虚な目で宙を見上げる隊長に、オレは何も言えなかった。子供を作るとはわけが違う。生命を自分の手で一から作りだしたなんて、いい思い出なんてあるわけがない。もしオレだったら、そんなこと耐えられない。


「あぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!」


そんなことを考えていると、突如咆哮が聞こえた。叫んだのはミロだ。よく見ると、そこそこの数がいたゾンビたちの骸が至る所に飛び散っている。ミロはというと、ぴくりとも動かなくなったゾンビたちの肉片を引きちぎり、グチャグチャと音を立てて口に入れている。口の周りを腐敗した肉が汚し、咀嚼した口からは時折食べかすがぽろぽろと零れ落ちていた。


「ミロ、帰るぞ」


隊長がそう言うと、さっきまでさかんに動いていた口が、電源を切った機械のようにぴたっと止まり隊長のとこへとてとてと歩いてくる。


「あー。ったく、汚ぇな」


スーツのポケットからウェットティッシュを取り出し、食べかすがついている口周りを雑にふき取っている。さっきまであんなに素早く動いていたのに、隊長が一声かけるだけでこんなに大人しくなるなんて。それほど教育されているってことなのか。

車を発進させると隊長はどこかに電話をかけていた。詳しい内容は聞き取れなかったが、恐らく今回のことを開発部にでも連絡しているのだろう。


「今回もですね」

「え?」


ずっと後ろばかり気にしていると、隣で運転中のイオマが話しかけてきた。


「ほら、初めて僕が出撃した時もそうだったじゃないですか。気づいたら誰かが倒してくれていた」

「あぁ。そういうことか」

「竜さんって今何しているんですかね」

「さぁな」


竜は一体何を考えてオレ達のもとを去っていったんだろう。

この2年間考えてみたが、最後に会ったあいつを思うと、あいつの心境に何か変化があったに違いない。あいつは大したこと無くてもすぐ悩む奴だから、少しは相談してくれてもよかったのに。

せめて一言何か言ってくれればなぁ。そんなに頼りなかったかなぁ。


「ん」

「…どうした」


考え事をしていると、後ろでミロが何かに反応したように窓を眺めている。釣られてオレも同じ方向を見てみると、そこにはカラスが数匹飛んでいるだけだった。


「あぁ。ミロ、あれはカラスって言うんだ。ゴミ捨て場を漁る面倒くさい奴らだ」

「それミロに言って通じるんですか?」

「どうでもいいが、あんま変なこと教えんなよ」


ミロがカラスに向かって指をさしている。そんなにカラスが珍しいのだろうか。そう思った次の瞬間、ミロは車から飛び出した。ミロはその勢いで道をゴロゴロと転がり、血を流している。オレたちは突然の行動に対応が遅れ、停車が遅れてしまった。


「おいイオマ!止めろ止めろ!」

「わかってますわかってますって!」


急ブレーキをかけた反動で体が前のめりになる。シートベルトをしておいて本当に良かった、とか考えていたが、そんなこと考えている暇などなかった。ミロが見つからない。ひとまず空を見てみるが、もうカラスは見つからない。

ふと思いつき、辺りを見渡してみると、先ほど見た赤い液体が点々と一つの方向に向かって続いている。ミロの血だ。これをたどっていけばミロのもとへ行けるだろう。だが、こんなに血を流しているということはよほど大きな怪我をしたということだ。急いで治療しなくてはならないな。

イオマに頼んで大きめの救急箱と紐を持ってきてもらい、その救急箱を背負って血をたどっていくこととする。

血は見る限り割と遠くまで続いており、このままいくと先ほどの町の跡地まで続いて行く勢いだ。

そういえば、隊長はどうしているのだろう。先ほどから黙っているが…。


「隊長、どうしたんだ」

「あ?何がだよ」

「いや、ずっと黙っているからさ」

「あぁ、まぁな」


相変わらず疲れた顔をしているが、不安はないようだった。あれだけの強さを持っているんだ。そう簡単には死なないということだろうか。

引き続き血をたどって歩いていると、不自然に地面が焦げていることに気が付いた。いや、地面だけじゃない、周りの木々も、一部の個所が焦げ付いている。そして肝心の血は、その焦げ付いた地面により続きが見えなくなっていた。


「まずいな」

「いや」


静かにしろ、とでも言いたげに隊長は自分の口に指をあてる。それにならい、オレとイオマも息をひそめると、遠くの茂みでごそごそと草木が揺れる音がする。ミロがそこにいるのだろうか。近づいて確かめようとした途端、その茂みから飛んできたのは火球だった。

すんでのところで体を反らし、直撃を避けることはできたが、わずかに触れた髪の毛がチリチリと燃えている。


「おぉぉぉあっつ!!」

「ばっか、気をつけろよ」


隊長は銃を構え、威嚇を兼ねて二発ほど茂みの手前に銃弾を発射した。その大きな音に反応したのか、再び茂みが揺れだした。また火球が飛んでくると思ったオレは身構えたが、次にそこから現れたのは黒い塊だった。


「ミロ!」


茂みから現れたミロはなぜか黒羽を至る所に付けていた。それでいて、あれだけ血を流していたはずなのに大きな怪我は見受けられない。ミロにとって怪我が大したことなかったのか、それともミロの回復力がすごいのか。答えを直接聞く前に、ミロは再び茂みへと視線を向ける。すると、ゾンビたちとの戦闘の時のように目にもとまらぬ速さで駆け出した。

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