この子の親は?
あけましておめでとうございます。そう言うのを忘れておりました。
多めに使った有休も終わりを告げそうです。やめてくれ、残業したくないんだ。
「ミロ、こいつらは仲間だ。わかるな」
イオマが運転する車の中で、隊長は後ろの席で何回もミロにそう言っていた。助手席に座っているオレは何度か振り向いてミロと隊長の様子を見るが、隊長の言葉に無表情で頷いているだけだった。本当に分かっているのかって言ったら、多分わかっていないだろう。
「それにしても、ディスプさんと戦いに出るのは久しぶりですね」
「ん、あぁ」
そう言っているのは運転席に座っているイオマだ。確かにイオマとオレはあのオーガとの戦い以来、あまり共闘する機会がなかった。竜がいなくなって以来、前線で戦えるオレは引き続き様々な魔物と戦い続けていたが、イオマは武器や道具の研究・開発メインに戻っていったからだ。
それでもちょくちょくこいつと戦いに出るし、守護隊の拠点ではすれ違って話をしたりする。同じ職場のメンバーの中なら、仲がいいほうだ。
「それにしても、久しぶりに隊長に会えるなんてなぁ」
「おれもお前らと会えて何と言うか、安心したぜ。最近は変なのとしかつるんでなかったからな」
「開発のお偉いがたたちのことですか?」
「あぁ。あいつらとは二度と一緒に仕事したくねぇ」
けだるそうにのけ反る隊長。ミロはそれを見て真似をしている。やっぱりこうしてみると親子だな。そう思ったが、また嫌そうな顔で否定されるから口に出すのはやめておいた。
「そういえば、これから向かうところって町の跡地なんだよな」
「えぇ。7年前くらいだったかな、スケルトンの群れが現れて1日で町を…」
「おい」
ドスをきかせた声で、後ろにいた隊長がミラー越しにこちらをキッと睨んでくる。直接見なくてもわかる、あれは相当怒っているぞ。でも、何でだ?
「その話をするな」
「は、はい。そうか、あの時に隊長がリモコさんを」
「するなって言ってんだろ、ぶっ殺すぞ!」
「す、すみません」
詳しいことはよくわからないが、リモコが絡んでいることは間違いないな。隊長がキレるときは大体部下関係だが、リモコのことになるとそれが顕著だ。キードが親バカだからだって言ってたな。
それよりも…。
「まるで待っているみたいだな」
「あ?」
「あれを見てくれよ。小さいとは言っても、結構な数だ」
町の跡地に着いたオレ達を出迎えてくれたのは、報告にあった小さなゾンビたちだ。まるで自分たちの町だとでも言うようにそこら中を徘徊している。しかし、この車を見つけた奴らはその歩みをこちらに向けた。
「さて、戦いましょう。今後ろから催涙ガスを出してきます」
「あぁ、たの…」
頼む。そう言おうとした瞬間、後ろの席から誰かが飛び出した。
目の前で動く黒い影。肉塊を飛び散らせ、目に見えない速さでゾンビたちをなぎ倒している。もしかして、あれは。
「おい隊長、あれって」
「あぁ。…ミロだ」
嘘だろ。あんな子供が?
いや、ずっとただの子供だと思っていたが、普通の子供ではないのか。オレは何を考えていたんだ?そもそも普通の子供だったら戦いの最前線に連れていかないだろ。
それならば隊長がミロのことについてあまり話そうとしなかったことにも納得がいく。もしかして。
「ミロって、改造人間?」
「…いや、もっと最悪な部類だ」
隊長は話しずらそうに何度か瞬きをするが、やがて覚悟を決めたように目線を一点に絞る。その目の先には、戦い続けるミロがいた。
「あいつは人造生命体。魔族の遺伝子を持った人間だ」
「は?」
人造生命体?魔族の遺伝子を持った人間?
何だよそれ、一体どういうことなんだよ。
じゃあ、今まで隊長がしていた開発って。
「おれが開発した、対魔族用兵器だ」




