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死んだと思ったら魔界で生まれ変わった  作者: 鳥羽こたつ
第三幕
37/146

変わらぬ願い

明日で今年も終わりですね。今年もお世話になりました。

来年もよろしくお願いいたします!

--------------------

竜がいなくなってから2年が経った。

あの日、囚人用の腕輪の発信機は起動せず、反応がなかった。この場を出る前に腕輪を破壊したのだろう。監視のために付けられていた、あいつと人間達との距離感の象徴を壊したということは、あいつは魔族の仲間に戻ってしまったのだろうか。

最初はそう思っていたが、どうやらそうでもないらしい。あれから竜人の発見情報がなく、常に鎧を着た人間の目撃情報もなかった。

確かにあの鎧はどこにでもありそうな簡素な鎧だが、顔が一切見えないフルフェイスの兜を全く外さないような人間がいたら噂にはなるだろう。それがないということは、奴は今、人に見つからないところでひっそりと暮らしているのではないだろうか。

そうだといいけどな。

誰にも聞こえないように一人呟き、周りを見てみる。守護隊は2年の月日でかなり大きくなり、新たにたくさんのメンバーが加入した。オレは今、その修行のコーチをしているところだ。

とはいえ、オレは教えるのはあまりうまくないんだけどな。


「ディスプさん?」


唐突に声をかけられて慌てて振り返ると、そこにはリモコが立っていた。2年前と比べると背も大きくなっており、だいぶ大人びた雰囲気をまとっている。


「あれ、リモコ。どうしてここに?」

「今日は私も休みなので、手伝いにきたんです」

「休みなのにオレの仕事を手伝うのか?休みなんだから休めばいいのに」

「とは言っても、やることがなかったので」


小さく笑うと、リモコはオレと同じように各自修行をしているメンバーの方を見る。しかしこいつ、意外と無趣味なんだな。長い間一緒に戦っているが、全く知らなかった。


「ディスプさん、あの子見てください。中々素早い動きをしていると思いませんか?」


そう言ってリモコが指さしたのは、サンドバックに回し蹴りの練習をしている、まだ十代半ばほどの少年だった。その蹴りは風を切るように素早く、ヒュッと音を鳴らしている。


「あいつか。でもあいつはまだまだだ」

「何でですか?」

「素早い蹴りだが、威力が乗っていない。もっと体重をかけるように練習させないとダメだな」

「…ならそれを伝えればいいのでは?」

「一応伝えていて、本人も改善しようとはしているんだ。だが体質のせいかな、筋肉があんまりつかないんだ」


そう思うと、竜の蹴りはすごかったな。大体飛び蹴りだったのもあるが、あの攻撃が効かなかった相手はあまりいなかった。強いて言うならあの時のオーガくらいか。

…待てよ、だったらこいつにも。


「おい、お前」


少し思いついたことがあり、未だ回し蹴りを続けているそいつに声をかけてみることにした。

しかし、名前が思い出せない。確か結構最近に入隊した見習いなんだよな。何て名前だったか…。


「え、ディスプコーチ!?じ、自分ですか?」


少年はまさか自分が呼び止められると思っていなかったようで、かなり緊張した表情を浮かべている。期待半分、恐怖半分といった目だ。褒められるか怒られるかを考えているのだろう。どっちでもなくて申し訳ないけどな。


「あー、その、なんだ。まず名前、名前何だっけ?」

「じ、自分はキデン・シミツビです。えぇと、ここから東の大陸から…」


そうだ、キデンだ。緊張のためか自分の出生について語りだすキデンの肩にポンと手を置き、狙いを告げることとする。


「なぁキデン。一回お前の回し蹴り、受けさせてくれないか?」

「え、自分のですか?」


キデンはポカンとした顔でオレを見ている。見えていないが、恐らくリモコも同じ顔をしているだろう。その間に、蹴りを受けてもケガをしないように衝撃吸収用のグローブを用意する。それを見て素に戻ったのか、キデンはステップを取り、攻撃の体制を整えていた。


「よし、いつでもいいぞ」

「では、いきます!」


掛け声とともに、空気を切り裂いた蹴りがグローブに炸裂する。破裂音のような音が響くが、実際はやはりそこまで威力はない。少々体が傾くが、余裕で耐えられるくらいだ。


「よし、じゃあ次は飛び蹴りをしてみてくれ」

「飛び蹴り…ですか?」

「あぁ。こう、ずんって感じで」


竜がそうしていたように、助走をつけ、一点を狙って蹴りをすることで自然と体重が乗った攻撃ができるのではないか。という予想だ。回し蹴りとどれくらい威力の差があるか、体感で測ってみようと思う。


「じゃあ、そこから。いったんオレが下がるから、そしたらグローブめがけて蹴ってみてくれ」

「は、はい。やってみます!」


元の位置から7歩ほど下がり、しゃがんでグローブを構える。丁度後ろにリモコがいるような形だ。

キデンはイメージトレーニングをしているのか、その場でジャンプして蹴りの練習をしている。オレが声をかけると、不安を宿した目を一度つぶり、オレに向かって駆け出して飛び蹴りを行った。

やはりこっちの方が効くな。思わず後ろの方に倒れそうになるのを何とか持ちこたえた。それよりも、飛び蹴り後の着地に失敗してその場で倒れ込んだこいつの方が心配だ。今はリモコが駆け寄って怪我がないか聞いている。

それにしても、こいつの飛び蹴りは中々威力があったな。今度出動要請があったら一緒に行ってみるか。


〈魔族観測。魔族観測。南東のセコンドタウン跡地より魔族らしき存在を観測。守護隊の出動を命じます。繰り返します。魔族観測。魔族観測…〉


タイミング良く、ウー、ウー、とサイレンが鳴り、守護隊の出動が報じられる。直接指名されないということは、一度編成をうかがう必要があるな。

丁度いいと思ってキデンを見るが、奴はまだリモコが手当てをしていた。こいつは着地の練習が足りない。怪我をされたら困る、今回は見送るか。

修行中のメンバーには待機を命じ、一度キードのもとへ向かうこととした。

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