チーム結成
昼飯はとれなくてもまぁしょうがないかなと思えるようになりました。
体を壊す原因にもなりますので、三食きちんと取りましょう。
「おぉぉぉぅらぁぁっ!!」
交戦中のリザードマンに駆け寄り、むき出しとなっている頭部を目掛けていつものように飛んで殴りかかる。拳が当たったリザードマンは脳みそを揺らせごろごろと地面を転がっていった。
「あ!」
「てめぇ!遅いんだよ!」
隊長はそう言うと、俺の兜に銃弾を一発発射した。いくら体に傷はないとはいえ、振動は身体に響くからあまりやらないでほしい。
「すみません!今から加勢します!」
「リコ!お前は転がった方をやれ!」
「はい!」
よろめきながら立ち上がるリザードマンのもとへ向かい、再び殴りかかる。しかし、同じ手は食わないといったかのように、リザードマンはのけ反って俺の攻撃をかわした。
「おぉぉぉっ!?」
間抜けなことに、攻撃を避けられた俺は攻撃するときの威力を落とせずズザーッと滑るように転んでしまう。その隙を見逃さなかったリザードマンは俺の背後に忍び寄り鎧の関節部分による肩の隙間に剣を突き刺した。
「うぁぁっ!」
突き刺された剣はオレの肉の筋を破り、噴出した血がアンダーシャツをジワリと染めていく。リザードマンはグリグリと剣を小刻みに動かした。その振動が起きるたびに、文字通り身を引き裂くような痛みが俺の体を走る。
その度に滲み出る俺の悲鳴が心地よいというかのように、リザードマンは興奮した鳴き声を上げた。
しかし、鳴き声はじきに興奮から悲鳴に変わった。同時に振動もなくなった。
「大丈夫ですか!…大丈夫じゃないですね!」
ポケットからハンカチを取り出したリモコさんは、手首をスナップさせてバッと広げ、俺の傷口を止血する。なれた手つきだ。彼女の性格からすると、色々な人を助けてきたのだろう。
「戦闘中です。安静にしてと言えないのは申し訳ないですが、なるべくそっちの腕は動かさないように」
「ありがとうございます。わかってます!」
剣を突き刺されたのは右腕だ。利き手をつぶされたのは痛いところだが、ここで引くわけにはいかない。剣を構えたリモコさんと並び、左手を構える。
「私が前線に出ます。あなたは隙を見て攻撃してください!」
彼女は返事を聞く前に切っ先を向けてリザードマンへ駆け出す。敵も剣を構え、振り下ろされた彼女の剣と激しくぶつかり合った。
剣と剣がぶつかる度に火花が舞う。隙なんか無い。攻防は終わらない。そう思われた。
終わりは唐突に訪れた。悪い結果として。
「ぐっ…!」
やがてリモコさんの剣はリザードマンに弾かれてしまった。リザードマンは満足げに鳴き声を上げ、舌なめずりをしている。
──今だ!
「うぅらぁぁっ!」
完全にリモコさんにしか目が向いてないリザードマンは俺の攻撃を予測できていなかったようで、今度は俺の飛び蹴りをもろに食らった。このチャンスを逃すわけにはいかない。すぐさまリモコさんの剣を拾い、倒れたリザードマンの上に乗ってマウントポジションを取る。
そして、鎧をまとっていない頭部を手にした剣で思い切り突き刺した。魔物であるからこそできることだ。普通の人間ならば魔族の頭蓋骨を貫通させるほどの力など持ち合わせていないだろう。
「一体片付きました。隊長たちに加勢しましょう」
「は、はい」
リモコさんの表情を見ると驚愕の表情を浮かべていた。我ながらまずいことをした。こんなことをして普通の人間でないことを感づかれたら…。
「すごい…。こんなに戦ったのに刃こぼれしてない。流石新しい剣!」
武器の質に驚いていたようだった。多分問題ないだろう。
「何いちゃいちゃしてんだ」
「こっちは終わったけど」
リモコさんに剣を渡すと、隊長とキードさんがやってきた。隊長に至っては銃をくるくると回して遊んでいる。そんなに余裕のある戦いだったのだろうか。
「しかし、上手くいったな」
「地震みたいに揺れを起こしたら中から出てくるだろうって奴っすか。いやまぁ出てきたのはいいですけど、結局普通に戦ったっすよね」
「おびき出すのが目的だって言ったろ」
「いやー、運がよかったら遺跡に潰されて勝手に死んでくれちゃったりしないかなって思ってたんで」
「馬鹿か。そんなことしても死にぞこないが出てくるぞ」
「それもそうだ。さて、帰りましょ」
キードさんを筆頭に車へ向かい、来たときと同様の席へ座る。
その帰り道で、リモコさんはしきりに俺の腕をちらちらと見ていた。
「俺なら大丈夫ですよ」
「あなたの大丈夫は信用できません」
その言葉は先ほどの遺跡での出来事が原因だった。確かに、俺はあの時も大丈夫と言っておきながら彼女に助けられることとなってしまった。
「今度は本当に」
「大丈夫、って言うつもりでしょ」
信頼を得るために戦おうとしていたが、その真逆の結果となっている。
「あなたのこと何となくわかった気がします。よくも悪くも嘘つきですよね」
「ま、顔を隠してるくらいだからな」
隊長は助手席から顔だけをこっちに向けた。その眼は兜越しに俺の眼を見ている。
「おれから言えるのは、お前とチームを組むことはできないってとこだな」
「…そうですか」
「厳重注意の戦闘員って言ったところか」
「え?」
俺の眼から顔をそむけた隊長は話を続ける。
「リコ。帰り次第囚人用の腕輪を用意しろ。発信機と電気ショック機能が付いている奴な」
「はい!」
「こいつの素性はわからないが、力は役に立つからな」
それって、つまり。
兜の中で大きく目を開いた俺に、リモコさんが小さく耳打ちした。
「あなたを認めたってことだと思いますよ。隊長、言い方が不器用だから」
信用は得られなかったが、彼らの仲間として俺は迎えられることができた。




