視えない敵
初めて主人公以外の視点で話を作りました!
口調とか、少し意識したのですがちゃんとできてますかね…?
「ダメですよ!だって、ディスプさんは怪我をしているじゃないですか」
「馬鹿野郎、こんなのはもう何ともねえよ」
そう言って、ディスプさんは再びバンバンと拳を打ち付ける。しかし、やはり未だに傷が残っているようで、いたた、と言葉を口からこぼした。
「ほら、だから言ったじゃないですか!」
駆け寄って手を見せてもらおうと、ガントレットに手をかけた。だがディスプさんはそれを振りほどく。
「いいから、お前はその祠の方に専念しろ。ここから引き返すよりも、無理やりにでもそこから逃げた方が早いだろ」
「そうとは言い切れないんです。一応人間の世界へ行くための呪文はわかっています。でも、その呪文の詠唱に失敗したりしたら結局は時間がかかってしまいます」
「だから言ってんだろ。オレがここを食い止めるって」
大きく胸をドンと叩き、そしてその胸を張る。何故だか、それがとても頼りに見えた。任せられる、本当にそう思えるくらいに。
「何回もうじうじ悩むなって。本人がいいって言ってんだ。おとなしくオレに任せろって!」
そう言うと、ディスプさんは俺を突き飛ばし、石祠の方へ押し出した。
ここは彼の言うとおりにしよう。俺は石祠の扉を開き、どこか神々しい雰囲気の神像に向かって呪文を唱え始めた。
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すぅ、と一つ息を吸い目を閉じる。五感のうち一つが失われていくように目のまえが暗くなる。
人間は五感の中で何かが失われるとどれかが発達すると言われているが、その疑似体験のようなもんだ。
今のオレは残りの四つの感覚、特に聴覚を研ぎ澄ませて集中している。
オレの耳に聞こえるのは木の音、風の音、そして後ろにいる竜の出す何かよくわからない音だ。あいつは今、人間の世界に行くために何かよくわからない呪文のようなものを唱えている。オレに詳しいことはよくわからないが、祠に来るだけではダメなんだな。
…そして、遠くの方でヒュッという音がした。
さっきからオレ達を襲う矢を放った音だろう。不幸中の幸いというか、顔を隠すために全身を覆う鎧を着込んでいて助かった。そのおかげで、急所を意識することなく防御をすることができる。
音がした方角は奥の斜め右上。一度矢を伏せぐためにその場でしゃがみ込んで丸くなる。矢は先ほどのようにオレの顔を狙っていたようで、頭上を通り抜ける。狙いは完全にオレ一人なようで、竜に矢が当たらないような角度から狙われていた。
目を開き、視界の悪い兜から音が聞こえた方角を見てみると、丘のような形になっている場所があった。つまり、奴を倒すならばその丘を登らなければならないのだ。そんなことしてられるか。今はここを守り抜いて人間の世界に帰る、そっちの方が圧倒的に早い。
しかし、何で今オレを狙うんだ?人間の世界へ行くことを阻止するとしたら、オレじゃなくて竜を狙ったり、祠を狙ったりした方が早い。オレを倒すのが目的だとしても、さっきまでの兜を脱いだ時ならともかく、今のオレは金属の塊みたいなものだ。いくらあいつが弓矢で攻撃しようとも、致命傷には至らない。直接鈍器で殴って鎧ごとぶっ壊した方がよっぽど早いはずだ。
オレを的にして楽しんでいるのか?それが一番可能性が高いか。
ふと竜の方を見ると、一心不乱に詠唱を唱えている。どうやらもう少し時間を稼ぐ必要がありそうだ。




