分岐点の発生点
最近とうとう仕事が本格化してきました。残業の日々が始まりそうで私は怖いです。
さて、夏も中盤(終盤?)ですね。ばてないように頑張りましょう!
黒い石の塊を見つけた。ただの塊ではない。上は屋根に似た形に作られており、中央には扉が付いている。
いわゆる、石祠と呼ばれる形の祠だ。扉の中には神像が祀られていて、どことなく近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
「で、これがその祠ってわけか」
ディスプさんが祠の屋根に手をぽんぽんと乗せる。どうやらありがたみも何も感じていないようだった。
「しかし、あっさりここまで来れたな。城の中でこそこそやってた時より時間かかんなかったんじゃねーか?」
「ばれないように脱出できた…ってことですかね」
実際のところ、どうなのだろうか。正直に言うと上手くいきすぎなところがあると思う。
だが、仮に脱走がばれていたとして、俺たちを見逃す理由は何なのだろうか。奴らは人間の世界に行く方法を知っている。俺たちを泳がして得られる情報なんてないはずなのだ。
何も思いつかない。赤い首輪の男が言っていたように、何かの余興にでもされているのだろうか。ここまで来た俺たちを一斉に攻撃する、とか。
いや、こんなこと余興にもならないだろう。だとしたら、一体?
「おい、竜。そろそろこれ取っていいか?」
ディスプさんはそう言って兜を取り外した。
「あー、すっきりだ」
「言う前から外しているじゃないですか…。まぁ、もう大丈夫だと思いますけど」
この祠は森に囲まれた場所に存在している。つまり、周りには木々しかないのだ。木々の揺れる音以外、何も聞こえない。
これだけの緑の中で生物の鳴き声一つも聞こえないのはどことなく不気味ではあるが。
「それで?どうやってオレたちの世界に行けるんだ?」
「それは」
その方法は口に出すことができなかった。口が動く前に背後から何かが通り過ぎたからだ。
俺を通り過ぎた何かは、そのまま向かいの木に刺さった。矢だ。
「おい、なんだ今の」
「静かに!もう一度兜をかぶってください。死にますよ」
さっきまで自然の音しか聞こえなかったのに、突如として現れた道具。俺が聞き取れないところから攻撃されたか、音を立てず今も間近から見ているか。
どっちにしても不利だ。こっちは相手の存在を検知できていないのだから。
「被ったぞ竜。んで、これはさっさとオレたちの世界に行って逃げちまった方がいいんじゃねーか」
「…確かに、そうなんですが」
人間の世界に行くには、俺たち魔族が持つ魔力を使った魔法を使わなければならない。
その魔法も面倒なことに、詠唱が必要なのだ。しかもそこそこ長い。隙を見せればその間に攻撃されることは間違いないだろう。
どうせなら敵を倒してから魔法を唱えた方がいい。焦って詠唱を失敗しても意味がないからだ。だが、敵がどこにいるかわからない以上、それも一つの手だ。
どうやって切り抜ける?
「あーもう!お前はいっつもそうやってうじうじ悩みやがんな!」
考えているうちに後ろから大きい声がした。そして、声の主が俺の目の前にやってくる。
「竜、お前がさっさと行動しないってことは、さっきオレが言ったことって簡単に実行できないんだろ?」
「…はい」
「やっぱりか。お前ほんとにわかりやすいな」
呆れたように、頭をかくような仕草をするディスプさん。その彼の頭に再び何かが襲い掛かる。
「ディスプさん!」
ディスプさんは俺の声に即座に反応し、上半身を反らしてその何かを避けた。避けた何かは継続してまっすぐに進み、直線状にある木の幹に刺さる。
「また矢…」
「お前が言ったように、黙っていても死ぬんだ。だったら」
バチン!といい音がなるように、ディスプさんは右手を怪我した左手にたたきつける。
「オレがここを食い止めるから、お前はオレたちの世界に行けるようにしろ!!」




