第6話 騒動
ルキナ達が着いた宿は、薄暗いが温かな灯りが付いていて、どことなくムードがあった。
家具もオシャレで、女の子が喜びそうな物で出来ていた。
「何か場違いだな…。」
ダイルが気まずそうに口を開く。
「そうだな…。」
ルキナも顔を赤らめてしまう。
「あぁ~ちくしょう。可愛い娘と来たかった。何が悲しくてこんな無愛想な男と来なきゃいけないんだ~~~~!!」
ダイルが叫ぶ。
「ほらバカな事言ってないで先に寝ますよ。先輩。」
「う…うぅ」
砂漠越えで疲れたルキナは、すぐにふわふわのベッドで眠りに落ちた。
朝の光がキラキラと地面を照らしていた。
ルキナ達は今、この街の中心街にいる。
この街はラマールとは違って品の漂うオシャレな街並みだった。空は青く澄み渡っていて、最高の朝だ。
今、ダイルと共にこの街を観光している所なのだ。
「おい、少年。あのカフェで休もう。」
ルキナはダイルに連れられ、これまた洒落たカフェに入る。
「ふ~何というか広いな…この街。」
ダイルが深く椅子にもたれる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
可愛いらしい店員が注文を聞きにきた。
「えっと、ホットコーヒーとロイヤルミルクティーで。」
ダイルがメニューを見て注文する。
「かしこまりました。」店員が帰っていった。
「あんた、ホットコーヒーか。」
ルキナはダイルに尋ねた。
「何言ってんだ?俺はロイヤルミルクティーだよ。俺、苦いの無理なんだよ。」
「は?じゃあ俺がホットコーヒーかい!俺はてっきりロイヤルミルクティーかと…!」
「まぁいいじゃないか。俺は甘党だ。」
「それって胸張って言う事か?俺のオーダー勝手にするなよ!」
「ガチャン!バキバキ!」
ルキナ達が喋っていると、何か食器が落ちて割れる音がした。
「何だ!」
音のした方に目をやる。
そこには、さっきの可愛い店員が立っていた。
割れた皿が床に散らばっていた。
少女の方に視線を移すと、少女の前に座っていた男の客の顔面に店員の足型がめり込んでいた。
一部始終を見ていた店のオーナーが少女の所に駆けつける。
「お客様!大丈夫ですか?すいません。すいません。」
店長が必死に頭を下げる。
「店長、こんな奴に謝る必要ありませんよ!コイツ、私のお尻触ったんですよ。立派なセクハラですよ。」
少女が、店長に説明する。
「お前!よくも俺の顔面に蹴りを入れてくれたな。俺はアビスソルジャーだぞ。こんな事して許されると思うなよ。」
「何よ!もう一発お見舞いしてあげようか?」
少女は怖じ気づく事もなく男を睨みつける。
「もう、許さねー。女だろうが何だろうが、関係ねぇよ!」
男は腰に差した刀を抜いた。
周りの客達が悲鳴をあげて逃げ出す。
流石に少女の顔にも恐怖の色が見られた。
「おい、ルキナ。俺達、紳士代表としてあれは許せるか?」
「いいや、男の風下にも置けないぜ。」
男が刀を振りかぶる
と同時にダイルが剣を抜いて、襲いかかる。ルキナも鞘に収まったまの剣を片手に走る。
「ちょっとぉぉお待てぇぇ!」
ダイルが叫びながら男の刀を剣で叩き落とす。
「なっ何だ!?お前!」
男は刀を叩き落とされて、驚いていた。
ルキナは、右から周りこみ男の背中に剣(鞘に収まったままだ。)を叩き付けた。
「がっ…!」
男の声にならない声。
男はその場に倒れ込んだ。
アビスソルジャーなので、激しい痛みはあるだろうが、重傷にはならないだろう。
「まっまだだ…!」
倒れ込んだ男はこちらを睨み付けて立ち上がろうとする。
「お客様、お帰り下さいませ!」
立ち上がろうとした男をオーナーが上から踏みつけた。
男は、地面に全身をひれ伏したまま気絶した。
「うちの店員を助けて頂きありがとうございました。」
オーナーがルキナ達の方に向き直り頭を下げる。
「ほら、アーニャもお礼を言いなさい。助けて貰ったんだから。」
アーニャと呼ばれた店員を改めて見ると、茶髪のショートで後ろで髪をくくっており、背は平均的で、スタイルも良い。
うん、可愛いらしい。
「助けて頂き、ありがとうございました。」
少女も礼を述べた。
「いえいえ、紳士として当然の事ですよ。」
ダイルが調子に乗り始める。
(あぁ始まった。)
「何かおっしゃいました?」
アーニャが首を傾げた。
人助けの礼を述べられ、ルキナ達はカフェをあとにした。
月の光が教会に差し込む。教会の中には教会の神父とアビスソルジャーが1人が居るだけだった。聖職者の衣を纏った男の足音がカツカツと誰もいない教会に響き渡る。
「で、計画は進んでるのか?蒼槍のキリンよ。」
キリンと呼ばれた男が顔を上げる。
「ええ。月が満ちる夜、決行する予定です。」
「そうか。上手く進んでいるようだな。」
「ええ。完璧です。全てはあなた様のために。」
キリンが片膝をつく。
「フフン。面白い夜になりそうだな。」
神父は窓の外の夜空に目をやった。今夜の月はまだ欠けていた。




