第3話 暗闇の過去
少し暗い話になりますが、ダイルの過去に迫ります。
ルキナとダイル=テアードは町を抜け、砂漠に出ていた。
ルキナたちは、今この延々と続く砂漠の先にある聖都ニクスに向かっている。
説明すると、俺は契約をする際に記憶をなくした。
きっと消し去りたい過去があったのだろう。
だが皮肉な事にルキナは今現在その記憶を取り戻すために手がかりを探して聖都へと向かっている。
ルキナが今持っている物と言えば、綺麗な緑に輝く石。
可愛らしい笑顔のルキナと少女とが2人で写った写真。
アビスソルジャーの契約の際に首輪と一緒に与えられた銀色のこの剣だけ。
ダイルはある男を探しているらしい。
ルキナ達はお互いの話をしていた。と言ってもルキナは記憶が無いのだからほとんど話す事が無いのだが………
ダイルはルキナにアビスソルジャーになった理由を教えてくれた。
「俺はリアナって辺境の街に住んでたんだ。どこにでもある幸せな家族だった。 あの日まで…」
気のせいか、ダイルが少し涙声になっていた。
「あの日、あの夜、星天の盗賊が俺達の街を襲った。」
星天の盗賊と言うのは、この国に居座る最悪の盗賊団だ。
奴らは、街単位を相手に襲撃する事もある。奴らが襲撃した後には何も残らない。何もかも。
「当然俺の家族も襲われた。両親は奴らに殺された。俺は瀕死の妹を背負って必死で逃げたんだ。でも妹は助からない…それは分かってた。でも俺は諦められなかった。」
「その時、俺の目の前に奈落の門が現れたんだ。俺は…大切な街を守るためにアビスソルジャーになる事を誓ったんだ。」
俺は重い口を開いた。
「だ…代償は…?」
「代償は………」
ダイルの目から涙の粒が流れ落ちる。
「妹の命だ…。妹は助からなかったんだ…どんな事をしても…そして妹が言ったんだ…『私の命を使って』って、俺は苦しんだんだ…何千回も、何万回も、俺は妹を殺してアビスソルジャーになった。」
ダイルがしゃがみ込む。
「俺は奴らと戦った。ただひたすら。でも間に合わなかった。街は全壊した。生き残りは俺だけだ。その街は後に悲劇の街として語り継がれる事になった。」
ダイルの重過ぎる現実…過去にルキナは掛ける言葉を見失っていた。
時に言葉はあまりにも無力だ。軽い慰めの言葉、安い同情の言葉は虚しく響き渡るだけだ。
人は同じ痛みを同じ経験をしない限り相手の痛みを理解出来ないだろう。
どんな同情の言葉も安い文句になってしまう。
だから人は軽々と言葉を使うべきでは無い。
恋人達は「愛している」と挨拶のように言う。
けれど、愛って言葉は、歪み裏返れば、束縛、暴力に走り、戦争に繋がる事もあるだろう。
だから、苦しみを分かち合い、相手の全てを無条件に受け入れられる、認めあえる、その時まで使うべきじゃない。
そう思うんだ。
ルキナはダイルに何も言葉を掛けることも出来ず、彼が口を開いた。
「だから、俺は奴らに復讐する。それが俺の目的だ。」
「そうか…。」
「さて、俺の話は終わりだ。さぁ行くか!ここに留まれば煮干し二匹の出来上がりだ。」
「そ…それは困る!非常に」
「だったら行くぞ。ほら!」
ダイルが立ち上げった。
真昼の砂漠は、太陽がジリジリと焼きつけていた。
地面にはサソリが一匹いた。
乾いた砂に2人の足跡だけが残されていた。




