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執着と独占欲、狂気のショートストーリー集〜僕が君を愛してあげる  作者: 水波瀬 凪


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3/4

君を忘れた世界~彼女を守る怪異の正体は僕の生霊だった

最近、彼女の調子が悪い。


目の下にクマを作り、怯えている。


僕は心配でたまらない。


彼女は僕に相談する。


最近、仲の良かった友達が急によそよそしくなったの。


家族も何だか私を避けてる気がして……



「次は私の番かもしれない」


僕は彼女を抱きしめ、優しく励ます。


「大丈夫だよ。僕がずっとそばにいて、君を守るからね」



夜中に窓を叩く音がする、誰もいないのに生臭い匂いがする。


僕は彼女を安心させるため、毎日のように彼女の部屋に通い、手料理を振る舞い、彼女が眠るまで手を握ってあげる。


「怖いから帰らないで」


「もちろん」


「私、あなたしか頼れない」


と涙を流す。


「警察に相談しようかな」


「もちろん相談してもいい。でも、君が傷つくようなことを言われたら嫌なんだ。まずは僕に頼って」



ある夜、彼女の部屋で二人で過ごしているとき、ついに決定的な怪異が起きる。


停電が起き、暗闇の中で、恐ろしい女が彼女に襲いかかろうとする。


彼女が悲鳴を上げて僕にしがみつくと、その怪異はピタッと動きを止め、闇の中に消えた。


彼女は恐怖でガタガタ震えながら、あることに気づく。


「あの化け物、私があなたに抱きついたら消えた……? もしかして、私を襲っているんじゃなくて、私から【他の人間を遠ざけようとしてる】……?」


彼女は怯えた目で僕を見る。


僕は何も言えなかった。


そう言われてみれば、あの影が現れるたび、僕は不思議な安心感を覚えていた。


彼女が他人と親しくすると、胸の奥が焼けるように痛んだ。


そして、その直後に誰かが彼女から離れていった。


ああ、そういうことだったのか。



「ねえ、あの化け物……あなたの『生霊』なんじゃないの……?」


彼女の言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かがかちりとかみ合った。


「あぁ、そうだったんだ。僕の愛が、君を守るために動いてくれていたんだね」。




僕は自覚的に生霊を飛ばしていたわけではない。


しかし、彼女を独占したい、誰も近づけたくないという「僕」の無意識の狂愛が、怪異の正体だった。


彼女は恐怖のあまり部屋から逃げ出そうとするが、玄関のドアの前に、僕の姿をした黒い影(生霊)が立ちはだかる。


「もう怖がらなくていいよ」


僕は彼女を抱きしめた。


「君のまわりから離れていった人たちは、みんな君のことを忘れてしまった」


彼女の顔が真っ青になる。


「そんな顔しないで」


僕は優しく髪をなでた。


「これで本当にふたりきりだ」



その日を境に、彼女のことを覚えている人は、この世界に僕以外いなくなった。




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