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死ねない彼らに天国はない  作者: 曇天海月
【第三章「現在」ようこそ、戦場へ】
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第10話

 一緒に暮らし始めてから数年経ったある日の夜、少年は俺に言った。


 ——金属は人よりも頑丈だから、どんな型に嵌めるかで、時には人を支配する道具に変わってしまいます。

 ——この鉄の首輪も、鍛え直せば、もっと人の為の道具にできます。


 少年は自らに嵌められていた鉄製の首輪を握り締め、力強くそう言った。

 俺はその時に理解した。


 〈神能者しんのうしゃ〉を殺し続ける俺の行いと、この少年の信念は必ず衝突すると。

 俺の存在はきっと、〈神能者しんのうしゃ〉ひいてはそれに類する者たちへの鉄の首輪なのだ。


 ともすればそれは、少年からの宣戦布告だったのかもしれない。

 俺は頷いて、少年の元から離れた。衝突するのが怖いわけではなかったとは、言えない。この時の俺は、少年を傷つけることも、自らが傷つくことも恐れていた。


 そこには確かに愛情があった。


 その数年後、俺は少年に敗れ。彼と共に国創りの旅をすることになった。

 長い旅だった。


 ヴァシリオスは言っていた。天国みたいな良い国を作りましょうねと。

 


 記憶の海に深く潜りそうになったことに気が付く。

 それに気が付くことができたのは、目の前のグレースのお陰だ。

 グレースは不思議そうに俺を見つめていた。

 声をかけないでいてくれたようだ。押すだけではないらしい。そんな配慮ができるところを、素敵だなと素直に思った。


「ごめん、考え事してて」

「あのさ、ちょっと話変わるんだけど。いや、あんまり変わらないのかな……わたしが知らないリベルのこと、もっと教えて欲しい」

「いいよ。でも長くなるよ?」


 ちょうど昔話をしたい気分だった。


「その……奥さんのこととかも?」

「そうきたかー」


 俺は顔を覆った。

 正直に言うと、グレースにはとても話し辛い。


「でも、良いよ。グレースなら」


 覚悟を決めるべきだ。

 聞かれたことには話さないといけない。そうしなければグレースと向き合っているだなんて言わないだろう。


「よし! それじゃあお風呂入ってきて! 今夜はお泊まりでおしゃべりしよう!」


 あ、泊まる流れなんだ。長くなるって言ったのは俺だけど。

 意を唱えようとして、やめた。

 こんな日があっても良い。

 間違いは起きないし起こさない、はずだ。


 その後、お風呂に入っておしゃべりをして、なんやかんやあって一緒のベッドで寝た。

 何もやましいことはしていない。誓って本当。

 添い寝をして欲しいとせがまれた。拒む理由は特にないから、よくないよなぁと思いながら従った。


 今は、蝋燭の光の中、グレースの背中を一定のリズムでトントンと叩いている。

 その間、俺はずっとこんなことを考えていた。

 真摯に受け止めると決めたはいいけど、本当にこれでいいのだろうか?

 あと、これまじで子供の寝かしつけじゃない?

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