第2話
東門に現れた〈神能者〉は、なんと王城への招待状を持っているとのことだ。
事態が飲み込めないまま、俺とグレースは王都の東門へと向かう。
〈神能〉で展開された金属キューブは簡易的な座席の形になり、言うなれば空飛ぶ椅子だ。少し横幅を確保して作られたそれに座る。金属だから無論、
「硬くて冷たい」
「文句があるなら、箒みたいな形状にするよ。そっちだと魔法使いみたいでしょ?」
「それはフィクションでしょ?」
冗談を言って笑い合うと、先ほどの空気の重さがなくなるのがわかった。夜の散歩が、その涼やかな空気でお互いの頭を冷やしてくれる。次から空気が悪くなったらこうしよう。。
左隣に座るグレースはちゃっかりクッションを敷いて座っていた。
え、ずるい。
なんでクッション持ってきたのかと思ったらこの為か。
「出発しまーす」
グレースの軽快な掛け声と共に空飛ぶ椅子が動き出す。重力を忘れて浮遊する金属の塊は、まさに陣地を超えた神の御技。
「気楽すぎるんじゃない」
咎めるように言うと、グレースが首を傾げた。
「そう?」
「レイチェルさんが言うには敵意は無いみたいだけど、油断は禁物だよ」
「そうだけど、……でも、大丈夫じゃないかな?」
昨日ぶりのガキ笑い。あどけない、年相応の笑顔だ。ん? でもグレースは一八歳。本当に年相応の笑顔か?
「なんで?」
「だって貴方がいるから」
グレースは自信を感じるような笑みで俺を見た。
危機感が足りないなと思った。
もしかしたら、東門に現れた〈神能者〉が俺を殺したやつかもしれないのに。
招待状を持っていたとしても安心はできない。俺を殺してから持ち物を奪った可能性があるからだ。
左手に無造作に持った剣を一瞬だけ見て、俺は再認識する。
対話よりも大切なものが今は直ぐそばにいる。
「そうだね。大丈夫だ」
「でしょ?」
グレースが屈託なく笑うのを横目で見て、これでよかったのだと安心した。
「ねぇ、それちょっと邪魔なんだけど」
グレースが俺の左手にある剣を指差す。
「あ、ごめん」
剣を右手に持ち替えると、グレースが少しだけこちらに寄ってきて、肩と肩が触れ合う。
夜風のせいで少し冷える。だから、お互いの体温はわからない。
でももし、今〈神能〉を解除したら、グレースの気持ちが、手に取るようにわかるのだだろう。もし君の心臓の鼓動が聞こえたら——。
「できる限りで良いから……もう死なないでね」
「……わかった」
そう一言交わして、俺たちの会話は終わった。




