第1話
〈復生体〉が何者かに殺された。
その訃報は、王城内を駆け巡ると同時にある推測をもたらす。
〈復生体〉を殺すことができる〈神能者〉がいる。
その推論は当然であった。
その〈復生体〉が、〈神能者〉絡みの任務の最中だったからだ。
七百年ほど昔には〈復生体〉を、——リベル・ダ・ヴェントを殺すことができる〈神能者〉はいた。しかし、それは七百年前だ。
〈神能者〉にとって、蓄えられた戦いの記憶と稀有な身体能力は、まさに悪魔そのもの。
テロ願望の〈神能者〉という、他国では最悪の存在すらも、〈復生体〉がやってくるという暴力装置の前にはあまりに無力だ。
〈復生体〉を殺すことができる〈神能者〉の存在など、少なくともグレースが生まれてからは起きていない大事件。少なくともグレースは知らないだろう……。
そこまで整理した俺は、意を決して目の前の少女に話しかける。
正直、先日の件も解消できていないと思う。
その矢先にこれだ。
気が重い。
「大丈夫?」
俺が訊くとグレースは髪を揺らしながら答えた。
「平気」
淡白な返事だ。元気がないのは明白。だが俺にはどうすることもできない。俺自身が、グレースが元気のない理由だからだ。
数時間前、俺は復生した。
今はすでに夕方で、窓から差し込む光が、夜の到来を予告している。
もうすぐ蝋燭が必要になるだろう。どうすれば元気になってくれるのか、グレースと話し合う時間が欲しい。
「ねぇ、わたしのこと考えてるでしょ?」
「もちろん。グレースのことで頭がいっぱいだよ」
聞かれたことに正直に答える。すると、グレースは机に突っ伏してしまった。
「そうじゃなくてぇ」
耳が赤くなっているのは、きっと夕日のせいなのだろう。今だけはそれのせいにする。
「よし。今日は特別授業にしようか」
ぱんっと手の平を打つ。流れよ変われ。この陰鬱な空気よ去れ。そして早く元気になっておくれ。
「特別授業?」
グレースが突っ伏していた顔を僅かに上げた。
「特別授業。そう、内容は——」
「グレース様! 大変です! 王都の東門に——〈神能者〉が現れました!」
そう意気揚々と話しを始める直前。
息を切らしたレイチェルさんがノック無しで駆け込んできた。
「へ?」
そんな間抜けな声を漏らしたのは、他でもない俺であった。




