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死ねない彼らに天国はない  作者: 曇天海月
【第二章「現在」優しい人がそうあれるように】
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第1話

〈復生体〉が何者かに殺された。

 その訃報は、王城内を駆け巡ると同時にある推測をもたらす。

 〈復生体〉を殺すことができる〈神能者しんのうしゃ〉がいる。

 その推論は当然であった。


 その〈復生体〉が、〈神能者しんのうしゃ〉絡みの任務の最中だったからだ。

 七百年ほど昔には〈復生体〉を、——リベル・ダ・ヴェントを殺すことができる〈神能者しんのうしゃ〉はいた。しかし、それは七百年前だ。


 〈神能者しんのうしゃ〉にとって、蓄えられた戦いの記憶と稀有な身体能力は、まさに悪魔そのもの。

 テロ願望の〈神能者しんのうしゃ〉という、他国では最悪の存在すらも、〈復生体〉がやってくるという暴力装置の前にはあまりに無力だ。


 〈復生体〉を殺すことができる〈神能者しんのうしゃ〉の存在など、少なくともグレースが生まれてからは起きていない大事件。少なくともグレースは知らないだろう……。

 そこまで整理した俺は、意を決して目の前の少女に話しかける。


 正直、先日の件も解消できていないと思う。

 その矢先にこれだ。

 気が重い。


「大丈夫?」


 俺が訊くとグレースは髪を揺らしながら答えた。


「平気」


 淡白な返事だ。元気がないのは明白。だが俺にはどうすることもできない。俺自身が、グレースが元気のない理由だからだ。

 数時間前、俺は復生した。


 今はすでに夕方で、窓から差し込む光が、夜の到来を予告している。

 もうすぐ蝋燭が必要になるだろう。どうすれば元気になってくれるのか、グレースと話し合う時間が欲しい。


「ねぇ、わたしのこと考えてるでしょ?」

「もちろん。グレースのことで頭がいっぱいだよ」

 聞かれたことに正直に答える。すると、グレースは机に突っ伏してしまった。

「そうじゃなくてぇ」

 耳が赤くなっているのは、きっと夕日のせいなのだろう。今だけはそれのせいにする。

「よし。今日は特別授業にしようか」


 ぱんっと手の平を打つ。流れよ変われ。この陰鬱な空気よ去れ。そして早く元気になっておくれ。


「特別授業?」


 グレースが突っ伏していた顔を僅かに上げた。


「特別授業。そう、内容は——」


「グレース様! 大変です! 王都の東門に——〈神能者しんのうしゃ〉が現れました!」


 そう意気揚々と話しを始める直前。

 息を切らしたレイチェルさんがノック無しで駆け込んできた。


「へ?」


 そんな間抜けな声を漏らしたのは、他でもない俺であった。

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