第88話 謁見にやってくる魔物達
そこから1週間の月日が経った。
この大陸では約2500年振りの魔王謁見式の日が到来したのである。
かなりの急ピッチな建設作業だと思ったのだが、そもそものフィジカルなどの面で人間より遥かに高次元の猪人族達と鋼魔蟲族達は僅か6日で建設を終わらせた。
正確には分担を変更しており資源採取を鋼魔蟲族が、実際の建設を猪人族達が担当した。
結果的にこの分担が凄まじい効率を生んだのだろう。
そもそも猪人族達は、身体は大きいものの人間並の器用さと片手で1トンを持ち上げられる腕力を持ち合わせているので建設作業に向いているのだ結果的に建設は4日で完了。
鋼魔蟲族はカブトムシ型とクワガタ型の二種類存在している。
クワガタ型は木々の伐採、カブトムシ型は地形を均したり岩の加工を担当する事で測量・土木工事は2日で完了した。
やはり適材適所、役職分担こそが最高効率で仕上がりの良い仕事を可能とするのだ。
さて、階段状の石畳を登るとそこには宮殿の様な謁見会場がそびえ立っている。
アリシアは豪華にしなくても良いと念押ししていたが貧相な造りでは舐められる。
無論威圧解放すれば舐められる事はないのだが別に怖がらせる場ではないのだ。
と言う訳で、豪華な造りならば魔王そのものの権力?を象徴できるので無駄な勘違いを謁見に来るであろう彼等がすることもないのだ。
ちなみにアリシアに下手に舐めた態度を取ると私からの命令で悪魔達に連行されるのである。
私は警備担当を引き受けているので本当に立場を弁えずに来たものがいれば拷問、虐殺お手の物たる悪魔達の連行である。
はっきり言えば連行された時点で御愁傷様である。
ちなみにウガイ教官が謁見式限りの警備悪魔隊の司令担当をしている。
ウガイ教官はアレでも教官を名乗っている分鬼教官なのでかなり審査が厳しかったりする。
怖いね。
中央の玉座に座る魔王アリシアは足を組み頬を手に乗せて鎮座している。
私はアリシアの後方にて腕組み待機である。幹部四名もアリシアの後方にて待機している状態である。
万が一の事はないだろうがあった場合は即消滅殺しか悪魔隊が殺りに来るのである。
警備はコレでもかというほどに万全であった。
最初に来たのは下位の魔物達つまりは小鬼族やその為色々である。
最初にやって来たのは豚人族の部族長と十名の連れである。
正直気休め程度の人数なのだろう。魔王本領土と言うことを理解している者達であった。
しかし部族長らしき者は堂々と胸を張って入場して来た。
入場後、アリシアの目の前まで到達すると片膝を全員が付き挨拶を行う。
かなり丁寧な挨拶であり若干驚いたが、一度だけ謁見の時の動きを教える時間を設けておりそこで学んだのだろう。
他の部族長も同じ様に挨拶を行なっていた。
しかしアリシアとの会話にも詰まりながらではあるが回答しておりその中で気になったのは、一部族に付き15000名の豚人族がいるという点だ。
人間の国があった為か他の種族や本来群れることのない魔物が群れを成していた為、生き残るべく部族同士の統合が度々起こっていたらしい。
その結果部族と化したようだ。
平均15000の部族が50はあったのでとんでも無い数である。
後で魔王大陸会議で住む場所及び領土分配が行われそうだ。
次に小鬼族達、オーク程の余裕は無さそうな彼等だが教えられた通りにアリシアに挨拶を行なっている。
ゴブリンというと理解力皆無、知能皆無に思えるが別にそんな事は無さそうであり寧ろ下手なプライドで教えを聞くつもりが無いような人間よりも覚えが良い。
下位種族は繁殖能力が高いのだろう、豚人族よりも遥かに多い数のゴブリンが謁見に来たので10部族づつに別けその10部族から1名の代表者を選んで貰う事になった。
それでも49部族であった為、490部族のゴブリンが謁見に参列したのだろう。
あとから聞いた話では498部族だったらしいが、。
と言う訳でゴブリンの謁見も終わり次にやって来たのは狼牙族である。
森にも狼系の魔物はいたが知能が高いのだろう。
思念伝達での会話を行えており戦闘能力も鍛えればそこそこ強そうだ。
小声だったのだが私が「鍛えれば使えそうですねぇ。」と言った事で悪魔達から殺意を向けられたようだが横目でチラっと彼等を見ると直ぐ様殺意を引っ込めた。
飛行能力のない【緑鬼軍団】の移動用の騎馬として使えそうである。
馬ではないので騎狼?かな。【蒼竜軍団】には騎竜部隊がいるので割と乗るタイプの部隊は欲しい所である。
と言う訳でアリシアに交渉をお願いした結果、魔王様の御命令とあらばと了承を得た。
機動力確保である。
さてお次は人狼族であった。
見た目としては狼が人型になったという形であり銀と青の混ざった様な色合いの毛並みである。
しかし、プライドが高かったかな?ちょっと怪しい雰囲気をだしながらズカズカと入ってくる。
1週間前に説得した部隊とは別の部隊であるらしいがコレは一悶着ありそうである。
そして、
「魔王という割には貧相な配下しかおらんではないか!
今の配下など捨て去り我等人狼と手を組むが良い。我等に逆らうような種族など皆殺しにしてくれよう!!」
と威勢よくはっきりと言いやがった。
完全にコイツはアリシアを利用しようとしたつまり死刑である。
他の部隊の人狼の血の気が完全に引いているがこの場の全魔王配下に喧嘩を売ったのだから連帯責任である。
仲間を侮辱され歯ぎしりをするアリシアよりも今にも飛び出しそうな悪魔達よりも早く私が動いた。
「おや、随分と威勢の言い犬ですねぇ、そんなにいうなら…試してますか?」
そう言いながら私は石畳を下っていく。
「は!お前の様な女如きに何が出来るというんだ?恥でもかきたいのか?」
と立場を弁えずに煽る人狼。
「どうぞ?やれるものなら。」
私がそう言うとソイツは飛び出し5本の爪を高速で私に振り被る。
Bランク程度なら致命傷になりかねない攻撃ではあるが…当然当たることもなく空を切り石畳に直撃する。
しかし石畳自体も壊れる事なく寧ろ人狼の爪を破壊した。
そもそもこの石畳の産地は私の転生場所の洞窟ないの魔力岩盤である。
普通にクソ硬いだけの岩石だがアスファルトの数万倍程度の強度なのでこの人狼の攻撃では壊れるわけがないのだ。
「腕、腕が俺の腕がーッ!!!」
と叫んでいるが直ぐに後ろにいる私に攻撃を加えようとする。
胆力だけは一丁前な犬だな。
そう思いながらその攻撃に軽く手刀を添える。
すると腕が切り飛び鮮血が舞う。
何とも弱い、脆い、最近戦った相手がクソ耐久ばっかりだった為触れた感触すらない。
その後、チエさんの全力制限を受けた私の剛腕から繰り出される裏拳で人狼は吹き飛ぶ。
軽く肋が10本といったところだろう。
「ンフゥ、あとは貴女達に任せますよ?クリスタ少々懲らしめて上げなさい。"肉体的"に殺さなければ何をしても構いません。」
私の言葉の意図を理解したのか、ゴミを拾うように片手で人狼を拾い上げ転移するクリスタ。
後でどうなったか報告してもらおう。
さて、その後は順調に進んで謁見は進んでいった。
恐らく人狼達が血の気のない顔をしながら出ていったことで恐怖を覚えたのだろう。
誰も逆らおうとはせず順調に進んで行く。
そして問題種族が現れた。
人魚族である。
どうやら完全人化のスキルで陸路を移動してきたらしいが開口一番、
『先日は我が娘の多大なる無礼な振る舞い誠に申し訳ございません!!!!
何卒お許しいただきたく出来る限りの謝礼品をお持ち致しました!!!
どのような命令でも承る所存でございます!!』
と長老の様な者と妖艶な美女、そして私を煽り散らかした先日の人魚娘、そして数多の人魚達が全員本気で謝罪してきたのである。
特に人狼娘は死にかけた様な顔をしており本気で大変な事をしたと理解したようだ。
アリシアが追い打ちで魔王覇気を出したことで更に彼等は死にそうになっている。
謝罪の品については塩湖の塩や魚、鉱物などとにかく量が多い。
謝罪の意思はあるようだ。
アリシアから解決してくれとの思念伝達を受けたので私が前に出ると彼等は更に苦しそうになった。
私何もしてないよ?
さて、丁度海戦専用の軍団が欲しかったんだよね。
「ふむ、私の率いる軍には陸海空全てもしくは陸空の二つが得意な軍団と陸のみ得意な軍団の3種類存在しますが…海と空が得意な一点特化型の軍団がないんですよ、ねぇギメル?」
私がギメルに話をふると、
「ハッ!ですが海戦が得意な種族かつアリシア様の魔王軍総指揮者であるヴァイシア様の設けた最低ラインのB−級の魔物、それも知能持ちとなると見つけるのは困難を極めます。」
「そうですねぇ。
陸海空全てを得意とする【蒼竜軍団】は本軍ですし海の一点特化型の軍団の条件に当てはまりませんからねぇどうしましょうか?」
私とギメルは息の合ったコンビネーションで彼等人魚族をチラチラと見ながら彼等の真ん前で話す。
もはや入れと言っているようなものである。
そして、
「我が娘はまだまだ未熟ではありますが必ずお役に立つと思われます!!
つきましては5000名程の配下をつけます!」
と族長の者が言うので
「おや?良いんですか?
娘さんの意思を聞いてませんし、本人の意思に背くかもしれませんよ?それにそんな数の者を集められますか?」
私が問うと他の部隊にも話を付けます!とのことで数の問題はどうとでもなりそうである。
リーダーに推薦してきた人魚娘に関しても先日の謝罪と私に認めてもらえる様な圧倒的強さと配下を完全に従えられる人脈を持った存在になりたいと語ったので魔王軍下に入って貰う事となった。
一応私の傘下である為、名前をセイレンとした。セイレーンの伸ばしを取っただけであるが進化により人魚族から狂人魚族へと進化しA+級程度にはなっていた。
取り敢えず本人に配下を集めさせる事にし他の者には一切の手出し、手伝いをさせない事とした。
一ヶ月以内に100名は集めることを条件に軍団昇格である。
それまでは軍団ではなくお荷物である。という説明を行うとやる気を起こしたようで一ヶ月以内に1000人は集めると豪語してみせた。
ギメルは元より強かったが尊敬を集めたのは人魔大戦時である。まぁ元より素質はあったのだろうがそれでもギメルですら特筆した輝きがなければ、あそこで輝いていなければ私の右腕には至っていないのだ。
茨木は元より配下を動かして戦場を駆けていたらしいがそれでも最初は100人程度から始まったそうだ。
私がおかしいだけである。
つまり何が言いたいかと言うと古参の軍団長達からセイレンは目をつけられたのである。
私の従える魔王軍も賑やかになってきそうな予感を胸に次の種族がやって来たようだ。
区切りが良さそうなので続きは次回です。




