第84話 悪魔軍団の初任務
ヴァイシアと人造竜との激戦が行われている最中、ダナシア帝国は緊急防衛戦を強いられていた。
それもそのハズ、突如として受肉した悪魔が2000柱しかも鑑定により恐らく全てが上位個体という最悪であった。
「バカ…な…まさか最古の魔王が来たとでもいうのか…。」
と悪魔学に詳しい学者が呟いた事で、一気に貴族達や学者間で混乱が広がる。
それは誰しもが知る"御伽噺"であり、最古の魔王にして【最悪王】の二つ名を持つ魔王サタンが魔王となる前に成した偉業のお話である。
悪魔には絶対的な年功序列制度があり、その中でも【最古の七閥王】と呼ばれる七派閥を束ねる【王】七名が最も強く尚且つ絶対権力を持つ存在とされる。
そもそも悪魔族には成長限界がなく無限に成長する特性を有しているが、それでは均衡が崩れかねないが故に悪魔界においては上将が最上位とされてきた。
しかし長年の技量や経験は制限されておらず結果、長き時を生きた存在は最上位とされ下位の悪魔は七柱の王に対して"絶対に勝つことなど出来ない"とされて来いた。
ハズだったというのに…。
100万年前、その【最古の七閥王】そのうちの【破壊(赤壊閥)】と【崩壊(黒崩閥)】の二柱が突如として殺害される。
魂核が残っていれば復活可能だったであろうが殺害した一柱の悪魔はその魂核を捕食していたらしい。
二度とその二柱は復活することなくその長き時に終わりを告げた。
他の五柱は突如の二柱消失気づくも既に時遅く、大罪称号者二柱の襲撃に遭い殺された。
誰の既述かは不明だがエルフの文献に記されていた話でありその"100万年前に何かがあった"ようだ。
現に魔王という存在が始めて記されはじめたのはまさに100万年も前である。
しかし、この話には記されては居ないがもう一つの裏の話がある。
殺されたと明確に記されてはいたがどうやら五柱の王はその後、復活していたらしい。幸いな事に魂核だけは守り抜き消滅は免れたがそこからは追われる身となり五柱の王は合流協力することとなり今日この日まで生き抜いて来たというものだ。
そして自身よりも階級の高い悪魔を殺したサタンは最悪王と呼ばれる魔王となった。
そして悪魔を従えている魔王は現状ではサタン以外に存在していない為、彼等は最悪王が襲来したと思っているのだ。
2000という数は決して多くはなく寧ろ帝国200万にとっては圧倒的に少ない程の数である。
しかしフェネルフィシア王国の防衛戦に大半のS級の英雄を派遣してしまった事で決して無視できない数であった。
上位悪魔は個体差はあれど存在値はA級つまり(1万〜100万)の存在である。
それが約2000柱現れた事で帝国全軍指導者ハスナー将軍は全軍に指示を下す。
「装甲戦車による一斉砲撃並びに広域魔法阻害領土を起動せよ!!対象を悪魔族に絞りつつ我々は魔法武器で対抗する!!付与を掛けろ!!!」
悪魔族は何よりも魔法が得意な種族であり超広域の魔法使用不可領域を対象を絞って発生させられる 広域魔法阻害領土を起動させたのは良い判断であった。
現に悪魔達は、最大武器である魔法を封じられたことで本体の実力を発揮出来なくなったのだ。
更に精神生命体たる悪魔族にとっては最大の弱点である。
しかし…。
「おや?魔法が封じられたね。どうする?」
黄髪の高校生のような風貌の悪魔が他四柱に語り掛けると
「めんどくさー。まぁ近接以外なくない?」
紫髪の悪魔が答え
「ガーディアンとかいう者共の死体で受肉させていますし、不死性というスキルも部下達が得ている様なので問題ないでしょう。」
緑の悪魔は冷静に語る。
「さっさと終わらせましょう。」
青髪は早く終わらせたいらしい。
「我が君に言われた通りこの国の人間を皆殺しにしますよ。初任務で失敗は許されませんし幻滅され悪魔界に返されては我々にとってはマイナスでしかない。
一柱、最低でも10名殺しなさい、行け。」
白髪の美女悪魔の一言により彼等の配下の悪魔が即座に地上の人間を狩るべく我先にと急降下していく。
「しかし白〜どう見る?」
「どう、とは?」
白い悪魔、白と呼ばれる美女が聞き返す。他三柱も残っており皆ヴァイシアの話を行いたいようだ。
「そうですね、あのお方は恐らく我々の正体に気づいていますね。
解析及び鑑定能力は我等の中で一番高い緑よりも高いでしょう。」
緑の悪魔も頷く。
「それに多分、私等が相当使える人材って判断した上でこの任務を私達に任せたよね?最初から期待値高いのは嬉しくない?」
紫の悪魔はかなり嬉しそうであり、実力を初対面で見抜き即任せてくれる存在として認識したらしい。
「そうね、使えるものは全て使うタイプの方でしょうね。
あの若さであそこまで大胆な判断ができる事は尊敬の念に堪えませんし何より、あの方の既存の配下達は全て名持でした。
ここであの方が到着する前に任務を完了させれば…。」
全員が息を呑む。名持になるということはつまり進化制限が解除されるという事である。
下位の悪魔達はより高位へと至り、自分達の持つ潜在能力への制限も解放されるので結果的にあの最悪王が万が一にも攻めて来た時に対象できる。
そして何より。
「あのお方にお褒め頂ければどれほどの幸福感を得られるのかしらね。」
白は現在それしか考えていない。
他の四柱は横目に同格が遂に狂ったかと思っているが口には出さない。
ここで揉め事はさけるべきであり白程ではなくともそれ相応の対応を受けた四柱も認められたいという自己欲求を持ち合わせていた。
「では私と青は両脇から魔法妨害装置を壊しますので――」
緑が言い掛けると被せるように
「分かっている。私と紫で住民だろ?んで白が真正面の軍だな!」
「フフ、ヴァイシア様に褒めれるたら、フフフ。」
どうやら自分の世界に入っているようだ。
「白様って部下にはキツイですけど、主を得るとこうなるんですね。」
「私もう白ダメだと思う。」
「奇遇ですね私もです。」
「あぁ、私もだ。」
満場一致である。
「とりあえずいきましょうか。我が君の本軍も後から来るそうなのでそれまでに片付けますよ。」
緑の一言で四柱は散開しそれぞれ殴殺を開始する。
一人残された白は落ち着きを取り戻し、一息着くと同時に中央に瞬間移動する。魔法は封じられているので純粋なフィジカルである。
白は何も言わずに左手をかざす。
すると周りの悪魔達は一斉にその場から緊急離脱を試みるも時は、既に遅かった。
白は、人差し指をほんの少し動かした。すると彼女の眼下の兵士達が一斉に死んでいく。
正確に言えば数秒の間悶え苦しみ事切れた様に死んでいく。
まるで伝染するかのようにも"死"は広がり続け最終的には200万はいた筈の兵士達はものの数秒で100万まで減ってしまった。
何が起きたのかなど理解出来ない兵士達は恐怖に染まり絶望した。そこへ白の攻撃に巻き込まれつつも直ぐ様、人造種から採取した希有能力「不死性Lv1」にてその場で蘇生した悪魔達が襲い掛かる。
「フフフ、さて後は任せますのでとっとと片付け次に行きますよ。」
そもそもの系統として生と死を司る彼女は、潜在能力である生と死を十分に扱えてはいない。
しかしそれでも人間程度であれば重要な神経と心臓を破壊してしまえば死ぬので扱いが十分でなくとも殺す事が出来るのだ。
「何者だ貴様ッ―。
目の前に突如現れた侵入者に向けて、兵士がクロスボウを持ち上げると同時に兵士の首は弾け飛んでいた。
「面倒なので、さっさと動力部を教えなさい。死にますか?」
青い髪の女が睨みつけると怖じ気付く兵士達、しかし彼等は一瞬で仲間が殺されたことでパニックを起こしており会話が出来る状態ではなかった。
それを理解した青は…。
「精神が弱いですね。まぁ記憶情報を抜き取って調べましょう。」
そういうなり一人の頭を鷲掴みにしそのまま握り潰す。
「なる程、丁度2箇所で起動していましたか。緑なら気づくでしょうしこのまま行きますか。」
どうやら魔法妨害装置と生活用の二種類の主力動力部があるらしい。青は近場の魔法妨害装置用の動力部を潰しに動いた。
青は地面に拳を振るい下階層にある動力部まで直通で到達した。当然ながらその場にいた兵士や科学者は巻き込まれ死んでいった。
青は一目見ると同時にその構造を理解し触れると同時に動力部を停止させる。
停止の権能を司っているのでこの程度なら造作もない。停止させた事で魔法を扱える様になりそのまま氷結広範囲魔法:氷河爆にて青を中心とした半径500mが絶対零度近い温度で氷結した。
「あっけないですが、こんな所ですかね。」
青は直ぐ様、空間転移で緑の元へと向かった。到着するとどうやら既に終わっていたらしい。
「もう終わったの?緑。」
青が問うと緑は当然だろうという顔をする。そもそもこの二柱はほぼ同等格なので仕事のスピードもほぼ同じである。
「A級程度の者が少なからずいるようですが…別に苦戦しませんし終わります。」
緑はあまり感情を表に出さないものの青は知っている。緑が内心では承認欲求の塊である事とそれに他の王達が気づいていないと思っている事を。
実際言わないだけで全員が気づいているのだ。
そんな事を知らない緑は
(最も褒めなさい、もっともっと!私は出来る悪魔!!)
と言うクールビューティとはかけ離れた褒めて伸びる子供の様な精神性であった。
そんな彼女の特性を理解する青は…。
「流石、真面目だし仕事も出来るね。」
と一言呟く。
「当然です。貴女も真面目に取り組んでください。」
「えぇ~、緑がいるし良いかな〜。」
青は知っている。
緑が頼られる事を何よりの喜びとしている事、そして褒められて伸びるタイプの存在だと言うことを――。
「黄〜アンチマジック消えたねぇ。」
「そうだな、良し終わらせるか。」
「りょうか~い。」
人間国は大抵が魔物からの侵入を避けるべく壁を造っている。それは地上から侵入する魔物には効果的だが空を飛ぶ魔物にとっては侵入は容易い。
そしてアンチマジックエリアが消え迎撃システムである連射固定銃も彼女達には通じない為要因に侵入を許す結果になった。
そして黄は右半分、紫は左半分と真ん中で区切りそれぞれ蹂躙していくこととなった。
黄は上空にてナニカを両手で掴む動作をした後に持ち上げる。しかし彼女の手自体には何も握られていない。
あくまでもそれは事前動作に過ぎず本命の殺撃はこれからである。
そして、雑巾でも絞るかの様に捻じる。それはもう捻じる。
するとどうだろう?地上の空間が歪に変化していきそして一歩、住民が動いた瞬間に肉体がバラバラに全く関係のない場所にテレポートしていくではないか。
突如肉片が現れ少し動かしただけで腕がなくなる光景を目にした住民達は直ぐ様パニックを引き起こした。
黄がやったのは座標の入れ替えである。
例えるならばA地点B地点C地点という順に座標があったとして本来ならこの座標通りに移動していくものがBとCが逆であるが為に空間的断裂現象が発生。
結果として動けば動くほどに防御力関係なくバラバラの肉片となり拡散するのだ。
「ふむ、絶好調だな!コレなら直ぐに終わるだろう。」
彼女はまるで宿題がもうすぐ終わる高校生の様な笑みを浮かべていた。
紫はなかなかにエグいなと思いつつ取り合えずばら撒いた広範囲殲滅魔法の一つである猛毒魔法:死霧の効果を確認する。
本来なら長時間吸うことで絶命に至る魔法なのだが、彼女の司る因果の効果により即死を強制出来るのだ。
更に思い付いた様に風魔法:微風を発動しより広域に散布していく。別に人間しかも民間人相手に本気を出す必要性は皆無である。
その為、最短にして最高効率で殺し尽くす方法を選んだだけである。
結果として
黄は6000万
紫は7000万
白は900万
青は45万
緑は400万の命を10分もかからず刈り尽くした。
更に配下の2000柱の悪魔達も各自500以上、上将であり王の側近達は2000累計で100万もの人間を殺し尽くしていた。
王達は残りを配下に任せることとする。
配下達の経験値を稼ぐには良い機会だからである。
こうしてまたたく間に帝国は陥落する事となった。




