第82話 一撃必殺
今回は少し短めです。
ヴァイシアは超高速飛行を行う造竜の背に矛を突き差しつつ考えていた。
チエによる演算にて造竜の中に魂が閉じ込められていると知り助けられるなら助けようと思ったわけなのだが、助ける助けないのどちらの選択をとるにしても一度殺さなければならないのである。
この巨矛が出来てからようやくまともにダメージが通る様になったが、それでも人造種の特性上、再生能力以上の攻撃を行わなければ死なないのである。
7つの究極能力級の権能を持ったこの"矛"でようやくダメージが入ったのだから"再生速度を上回る攻撃"を繰り出すのは火力不足ではないだろうか?
そもそもの話、この造竜に眠る魂に意思があった場合にはコチラに被害が出る恐れがあるのでチエには引き続き"魂の解析"を行って貰っている。
「てか、速いな。」
造竜の飛行速度は恐らくヴァルアの本気の速度と同等速度とヴァイシアは判断したが、実際の速度としては最高速度は造竜、持続的な速度はヴァルアと速度と言っても系統が違った。
要は短距離走と長距離走の違いに近いので比べるだけ無駄というものだが、そもそもの速度がお互いヴァイシアの速度よりも遥かに速いので比べる対象としては正解であった。
しかし解決策が思い浮かばないが突如、『傲慢之罪』で『強欲之罪』の即死効果にバフを掛ければいけるのではないか?と閃くヴァイシア。
そもそもの『傲慢之罪』自体が半端じゃないバフ系の能力でありスキルに対するバフ効果も出来なくはないのではないかという閃きである。
『その場合、再生阻害程度の時間稼ぎにはなりますが不死体を持つ造竜に効く時間は僅かです。』
チエからの報告を受けるとどうやら即死効果を"不死体"で再生阻害程度まで抑えられる可能性があるらしいが寧ろ好都合である。
何しろ一次的に殺しさえすれば問題ないのだから。
そうなると再生が間に合わないレベルの攻撃に関しては再生阻害効果が実質通るならいくらでもダメージを入れられる。
「思っていたよりも早く言われそうだな造竜。」
チエさんより二つの攻略法を開示された。
一つは虚無エネルギーを造竜の体内に直でぶち込む方法、もう一つは究極能力全盛りの虚無を纏った"巨矛"による一撃必殺の攻撃であった。
どちらの選択を取るにせよ、虚無エネルギーを使用しなければ"致命傷"を与えられない造竜の不死性に驚きつつも二つ目の攻撃を選択した。
何故なら一つ目の攻略法だと虚無エネルギーを大量に体内に入れ内部崩壊を起こさせ殺すのだが、その場合広範囲に虚無エネルギーが充満し生命が住めなくなる。
しかし二つ目の攻略法ならば虚無エネルギーは少なくて済む。
まだ完全制御化が出来ていないエネルギーであるからこそ慎重に扱わなければならないのである。
――ウォンッ!!!
造竜がいきなりの加速を行った事で巨矛の刃は造竜の背から抜ける。当然矛刃に血は付いていない。
ヴァイシアは二対の大小の翅を広げホバリングを行う。
当初の目的としてはあのまま一撃必殺の攻撃を放つ予定だったのだが振り落とされてしまったのでヴァイシア自身に突進して来た瞬間にカウンターとして放つ事を決めた。
一撃で仕留めなければならず絶対に当てなければならないが、自分の思考で動いていないせいか造竜の動きが単調過ぎて対応自体楽勝なヴァイシアにとっては一撃確実に叩き込む程度造作もない。
そもそもヴァイシア――いや、黒沢 日向がVRゲームとはいえ戦っていた存在に規格外のバグ存在が身近に居た事とそれと同格と言われている程度には対応力が高かったので本当に問題ないのである。
あんな化物と"本気"で攻防戦を行うことに比べればプログラムされた戦闘しか行わない造竜などカスである。
ヴァイシアは巨矛を構え造竜の突進するその時を待つ。
そしてコチラに向け進路を変更しエネルギー球弾を放ってくる造竜。
(ふぅーッ!あの攻撃は――ッ!!)
しかし鎌腕二本でその攻撃など斬り飛ばし連続砲撃にも一切焦る事なく攻撃を相殺する。
実際には莫大なMPの塊を超速で連射しているだけの攻撃だがヴァイシアはただの物理攻撃によって生じたエネルギーと衝撃波により相殺していた。
いわゆる神業というやつである。
「―生命奪取―生命力奪―強制簒奪―慢心神深―連撃一集―筋線滅脚―暴嵐魔法:集束嵐―停氷魔法:停光氷―名をやろう:斬暴蟲の矛―一撃必殺:」
爆発的な身体強化並びに荒怒之王の最大出力、最大火力の魔法による速度補助、大罪の究極能力二つによる概念的な超火力を付与した神巨矛:斬暴蟲の矛による一撃必殺の極大攻撃。
造竜がヒットアンドアウェイ戦法に切り替えたのか進路を上空に変更するが転移魔法によってヴァイシアは造竜の飛行進路を先回りする。
回避などもはや不能である。
「暴荒怒斬爆!!!!!」
それは言ってしまえば威力のおかしい横薙ぎの斬撃である。
放たれた"グリドルア"は一瞬にして造竜を両断し更に少なくとも地下数km、幅500m、長さ数百kmの巨谷を生み出した。
谷の壁にあたる部分は永久凍土が形成されており、それ以上の崩壊はない。
グリドルア、とは"概念的干渉級の超身体能力強化"と"圧縮された嵐"の解放による速度補助、大罪系最上位に位置する7つの大罪の究極能力二つの即死効果と停止効果のある氷結による再生阻害、更に神器級上位の火力を誇るヴァイシアの"神巨矛"による超即死撃である。
「ハァ―ハァ―フゥ、しっかし、MPと、SPの半分消し飛ぶとは…。思ってなかったわ。しんどッ。」
現在急速に回復が進むも"兆"の域に到達仕掛けているヴァイシアのエネルギーの半分が消し飛ぶ程の一撃であった。
「ハァ、でもまぁ、これぞ斬魔蟲族でしょ?」
それは、斬撃を得意とする虫型の魔物の頂点に君臨する大厄災であり本来なら限界がくるとされる物理攻撃の威力は概念的存在すら崩壊させるに至る破壊力を持つ。
斬魔蟲族の支配者階級である。
《物理的な斬撃攻撃による一定以上の破壊行為を確認しました。
条件を満たしました。
隠れ要素:固有スキル解放が行われます。
成功しました。固有:神格能力断裂神之力を解放しました。》
神格能力とは、ある条件をクリアする事で獲得可能な究極能力とは比にならない程強力な力である。
《断裂神之力》は高次元的切断攻撃を可能とする能力である。
詳細は省くが要は視覚に移る景色を"絵"とすればその"絵"をなぞるだけで絶対的な防御を持っていたとしても切断出来る様になる能力である。
九滅魔王の面々も一撃でも喰らえば即死する可能性のある者がいるほどに危険な能力である。
ヴァイシアはグリドルアを受けて尚再生しようとする造竜の再生を氷結魔法にて妨害しつつチエの解析終了を待つ。
この待ち時間の間に半減したMP、SPは9割まで回復していた。
しかしアレだけの消費でも十分程度でほぼ回復するとはヴァイシアは自身の再生能力がかなり高いことに改めて気づく。
だが再生能力はステータスの高さに比例するためアリシアやラリアナの場合だと10秒で全開する程度の消耗である。
要するに上には上がいるという事である。
造竜の上半身以外は消失しており、斬撃というにはあまりにも攻撃規模が違う一撃であった。
そして、
『魂の覚醒に成功しました。一次的に回廊を生成、会話が可能です。』
私はチエさんからの報告を受け造竜の魂との会話を試みる。当然再生は妨害させて貰う暴れられたら困るもんね。
「んん、どうかな、聞こえるかな?」
―――ふぇ?ん、ん〜ふはぁ〜。だいぶ眠っていた気がするのです〜。―――
ん?なんか知ってるぞこの喋り方…。無わけ無いか。
「聞こえていたら返事してくれない?」
―――ふえ?!頭の中に声が?!ヘッドギアは被って、ない?!てことは現実?!―――
ヘッドギアだと?!え?そしてこの声、間違いない、いやそんな筈は…。
「もしかして瑠奈?」
私は疑問に思いながらその名を口にする。確信はあるこの声を私が間違える筈がないのだからそして…。
―――もしかして…ヒナタ義姉ちゃん…?―――
「ハハッマジか〜。なんで居るのさ、こんなとこ…。」
―――ヒナタ義姉ちゃん…嘘、じゃないよね?夢じゃないよね?!ずっと、ずっと話したいこと、沢山―――
「色々話そっか久しぶりに再会だ、義姉妹が。」
どうやら私の前世の義家族の妹が造竜に転生していたらしい。全く、予期しない再会だよ。




