第79話 血骨と伝染病
残酷な描写があります。お気をつけください。
『主、結界の維持をする結界晶を埋め込まれた強者を殲滅完了しました。
これにより結界が崩壊しますので』
いよいよ大詰めか。
『はい。』
けど、結界内の人間達って軽く見積もっても億単位でいるよね?私の軍団ならいけなくはないけど…。
やっぱ多いな。
私は国王とこの地に根を張るヤバそうな奴を狩りに行くし、召喚者達もまだまだ居そうだから回収するか…。
どっちにしてもそろそろ人間達には消えてもらう。
この人間国内の人間は殲滅するからね。
人間軍と領土内の人間を殲滅するからには、女王をそろそろ動かすか。
民間人には、手を出さないのが戦争だろうけどそんな事言っていたらまた核だの何だの平気で落とすからな。
生き残りが誰一人存在しないようにすればコチラに今後の被害はない。
という訳で、戦地入りを果たしている女王312体にも働いてもらおうかな。
『女王と同時に二人ほど殲滅戦に参戦させてはどうでしょうか?』
二人?その二人を参戦させたらどうなる?
『戦地に二人ほど殲滅能力の高い者がいますので、通常より数倍早く殲滅戦が終了します。』
マジで?!
なら是非とも参加して欲しいな、コッチの被害も想定よりも多いし。
場所は?
『一番Lvが高い女王蜘蛛の頭の上です。』
はいよ。
チエより座標が送られてきたので、直ぐ様向かおうとしたその時、
〘そっち終わった?ヴァイシアちゃん。〙
アリシアから連絡が入る。
(とりあえずアリシアも結界晶持ちは全員討伐したし結界が崩壊した。
これから最後の仕上げに入る予定だよ。
アリシアも来る?
来てくれたら楽に終わるんだけど。)
〘いや、それが急用が出来てさぁちょっとラリアナと出てくるからアリシアの判断でよろしく!〙
(了解、心配無用だろうけど気を付けて。)
〘そっちもね。〙
魔王二人が出る用事ってなんだ?と思いつつも亜空間から排出されたのでチエから送られてきた座標に向かう。
空から軽く戦地を確認すると、人型魔蟲達の平均Lvが25くらい上がっていた。
軽く全員が上位クラスまで成長しており凄まじい成長っぷりである。
更に暴れさせていた私の眷属である上将個体複数が女王へと進化している。
というか私が究極能力『傲慢之罪』を獲得したことで私の正規の眷属達の成長に補正が掛かったようである。
軽く経験値取得率1800%、つまり通常の18倍である。
一応、Lvが低いものを中心にしているがそれでも凄まじい成長速度となっていた。
そして復讐しか見ておらず色々目を向けていなかったが故に今視えてきたのは…。
なんか…敵側から見れば仲間が倒されれば倒される程敵がLvアップして強くなっていき対象出来なくなっていく地獄の詰み状態。
人間の経験値量が多いからだいたい一人倒せば下位の魔物は進化するからね。
いやはや凄まじい。
それから空海母艦内の敵は殲滅済み。
緑鬼軍団のメンバー全員が鬼人に進化しているね。
ん?鬼人…。
全員がA級オーバーに進化している?!どうなってんの?は?WHITE?!
え?二段階…進化したんすか?流石に気になり過ぎるぞ?行くか?行っちゃおうかな?よし行こう。
私が看板にいるシオンに話を聞くと
「はい!
全員が約10名程人間を討伐したらこうなりました!いきなり経験値取得量が増えたのでその御蔭でもありそうですが…。」
とのこと…。
いきなり経験値取得量が増えた?まさか傲慢之罪の権能になんかある?そう思った私は傲慢之罪の解説を観たすると…。
うん、間違いなく原因コレだわ。
究極能力『傲慢之罪』
権能
経験値取得 所有者の経験値の取得量に補正が掛かる。
熟練度取得 所有者の熟練度の取得量に補正が掛かる。
身体補正 所有者の全ステータスに補正が掛かる。
能力補正 所有者の全保有スキルに補正が掛かる。
配下之成長 保有者の全ての配下に"経験値取得"熟練度取得"身体補正"能力補正"の4つの効果を付与する。
負惜復活 負けを認めない限り無限に復活する。
この"配下之成長"という権能の御蔭で眷属というか血族?の斬魔蟲族だけではなく全ての軍団に補正が掛かったんだろうね。
うん、ちょっと蒼龍軍団の方もみてくるか。
やっぱA級オーバーじゃねぇか!!分かってたけどAランクの壁ぐらい超えて来るのは分かっていたよ?
けど、まさか龍人族全員がLv平均20を超えるとは驚いた。
ガーディアン掃討戦をしてくれているしもう少しだけ粘ってもらおう。
軍団の中で個人個人が最強なのは恐らくこの【蒼龍軍団】だろうな。間違いない。
という訳で、色々戦局確認も終わり一番Lvの高い女王蜘蛛の頭の上にやって来た訳だが、。
「君たちかぁ〜。」
私は驚いた。
連れて来た覚えがないんだから仕方がない。
「ヴァイシア姉様だー!!」
「お、なんだ〜可愛い奴め〜ワチャワチャワチャ!」
そう言って勢いよく突撃ダイブを仕掛けて来たのは血鬼族の"メアリス"である。
かなり自分を出してくれるようになり一安心である。
しかし可愛い。
ホントにウサギとかそっち系のゆるふわ感である。
「お疲れ様です、ヴァイシアお姉様。」
「ん、別にかしこまらなくてもいいんだよ?まぁやりたいようにやってくれればいいけどさ。」
しっかり者のお姉ちゃんクロリスも来ていたらしく紅茶を差し出されたのでスッと一口で飲み干した。
「美味しいなコレ。」
そう言うと顔が露骨に明るくなった。
やはり姉妹、うん、どっちも可愛い。
でも、この二人に殲滅戦をより効率的に行う為の能力があるようには視えないよ?チエさん?
『クロリスは「感染者」と呼ばれるユニークスキルを保有しておりその名の通り感染させたものを操る事が出来るようです。
メアリスは「血骨王」と呼ばれるユニークスキルであり存在値の低い者から無条件で血と骨を抜き取り操作出来るようです。』
ちゃんと!ヴァンパイア!!
すんごいえげつない!!
え?てことは感染ってことはホントに人から人へと伝染って広がるし…血骨操作は魔王軍側がほぼB級超えを果たしている今、人間に刺さる…。
あれ?今の状況に最適か?
…一応聞いてみるか。
「二人に相談があるんだけどいいかな?」
二人は直ぐに耳を傾ける。
「今回の戦争では人間全員を殲滅、つまり一人残らず根絶やしにするってのが目的に入っているんだけど二人にも出来れば協力して―――
「やる!!」
「やらせてください。」
あるぇ?食い気味だなけど子供の成長に悪影響…ヴァンパイアなら普通か?
「分かってる?人を殺す事になるんだよ?しかも大勢。」
「はい。ですが問題ありません奴等には勝手に召喚されましたし子供だからと何も出来ないのは嫌ですから。」
そうか…。
まぁ本人の意思を尊重していこうかな。
「それじゃぁお願いするけど無理はしないこと。いい?」
「分かった!」「分かっています。」
とりあえず大丈夫だとは思うがとりあえず私は私の仕事に戻らせてもらおう。
シュンとカカオンに近くにいてもらっているので万が一の時でも安心である。
しかし私はまだ知らなかったこの選択が後に二つの厄災を産む事になるなどとは…。
結界が崩壊し民間人達は一斉に地下へと避難する。
更にこんな場合の為残されていた警備隊が厳重警戒体勢に入った。
フェネルフィシア国上空に一人の少女が現れた。
警備の者達が弓や銃、剣を構える。
少女は紅く輝く髪に瞳鋭くとがった爪を持ち紅い衣装に身を包んでいる。
一見すれば可愛らしい少女であるが背からはコウモリの様な巨大な翼が生えており口からは鋭い牙が見えている。
「スゥーーー。出ておいで」
少女は深く息を吸うと瞬間小さく囁いた。
その瞬間、地上の警備隊の身体に以上が現れる。
骨が砕け、全身の穴から血が噴き出てきたのだ。
それだけではない全身の砕けた骨がまるで鋭く肉を引き裂き一瞬で肉塊が形成される。
そこには内臓と肉のみが残され他は全て宙を舞う少女の高さまで上昇していく。
メルシアには希有能力『全探知』が備わっており更に血鬼が持つ固有スキル「超感覚」により地下の建物の中のあらゆる場所に隠れている民間人の居場所が手に取るように分かっている。
そして
「死んじゃえ!血骨武器雨!!!」
それは生命追尾効果のある血と骨で生成されたナイフ型の武器を雨のように射出する技である。
生命反応に自動でロックを行い放つので本人の見つけれていない存在も対象にする事が出来る。
そもそもの話だがこんな技を使う必要はない。
血と骨を対象にした「血骨王」ならばそもそも生命探知能力が高く射程範囲内に入れば即能力を発動しミンチにする事が出来るからだ。
本人はよく自身の能力について分かっていない。
しかし、警備隊の目を惹くという点においてはこれ以上ない程の効果を発揮しておりクロリスが地下避難通路に侵入するには十分であった。
「なるほど、この避難経路には側に水が流れているのですね。」
そう言うと少し指を水に付け歩き始めた。
水の流れる速度より遅くゆっくりとした歩行であった。
人は生きる為に最低限水が必要である。
それ故にこの避難所には水のパイプが張り巡らされてある。
地下避難所には合計1000人が収容可能であり空気の通り穴もあるので窒息の心配はない。
更に非常用食量もあり備えは万全であった。
しかし水を飲んだ男の様子がおかしかった。
最初は咳をしていたのだが明らかに咳の量が多く更に時間が経つと吐血肺炎の症状が現れ始めた。
そしてそれは一気に周囲の人間にも広がっていった。
「な、何が起こっているの?いやぁ、来ないで、いやぁ!!」
人々がいきなり起きた感染症にパニックに陥る中で複数人の男が避難所の防護扉を開けてしまった。
そして現れたのは人形の様な見た目の少女であった。
しかし直ぐに全員が悟ったこの少女がこの状況を作り出した張本人であると。
でなければこの状況で15歳にも満たない少女が恐怖に怯えないわけがないのだから。
「もしや、君が!」
「恨みはありません。
ですが、殲滅対象ですので死んでください。」
少女は少しの感情も見せずにそう言った。
「貴女、何なのよ貴女がやったというの?!わ、私の夫を返しなさいよ!!」
パン屋の女婦人が叫び他の者達も突如現れた黒髪の少女を睨見つける。
「はい、というかこの状況でそんな事も分からないのですか?知力まで弄った覚えはないのですが…。」
少女は尚も不思議そうな顔をして顔を少し傾け婦人を見つめていた。
「この!!」
男達がこん棒や剣を持ち少女に殴りかかるしかし少女は微動だにしなかった――まるで当たらない事を知っているかの様に…。
少女は振り上げられた剣やこん棒を数秒見つめ婦人の元へ歩き始めた。
「な、なんで!身体が動かなッゴフッ!!」
こん棒を持っていた男が不意に剣を持った青年の顔面を殴りつけた。
青年の顎は砕け左目は失明し血が流れる。
「な、なんで…なんで俺の身体が勝手に!」
男は恐怖にかられているが真っ直ぐに他の者へとこん棒を振り上げていた。
そして奇妙な事に他の者達にも異変が現れた始めたのは少女が婦人の目の前まで歩いて来たまさにその瞬間であった。
警備隊の者達や20歳前後の青年達が一斉に殺し合い始めのである。
友同士、父と母同士、子と親同士、年齢も性別も関係なく殺し合い始めた。
まさに地獄である。
「恨みはありません。
ですが私と、私と妹と同じ様に異世界から召喚された者は大勢、貴女方の良いように扱われるだけの奴隷となります。
もうそんな事にならずに済む。お姉様にも褒めていただける、コレ異常の至福があり得ますか?
パン屋のメフラさん?」
「いや、嫌ぁぁぁああああ!!」
メフラは狂った様に逃げ始めた。会った事もない様な少女が自分の名を知っていたからではない。
この状況を何らかの力を使ってあの少女が発生させたからではない。
そもそも初めて会った訳ではないと思い出したのだ。
フェネルフィシアでは異世界から人を召喚した際、檻の中に入れ大通りでパレードが行われる。
それは一重に彼等の心をおりつつ住民達に異世界の者達の有用性を示す為である。
そしてそのパレードの時、紅い髪の少女と二人一緒にいた黒髪の少女の事を観た。
「あの時が感染源です。」
クロリスの特有能力「感染者」の権能は4つ
空水感染 〘空気感染もしくは水を媒介に感染を拡大させられる。〙
感染操作 〘感染させた対象の症状を操作する事が出来感染させた対象への支配力と洗脳能力を持つ〙
生死操作 〘感染させた対象の生死を自由に操る事が出来る。〙
感覚共有 〘感染させた対象のあらゆる情報や五感を共有可能。〙
というものであり一度感染さえさせてしまえばあとは好きな様に対象を支配する事が出来る。
元よりこの場の者達はあの時、あのパレードでクロリスを観ていた。
いうなれば空気感染でのスキル発動、既に条件は満たされておりいつでも殺せる状況であった。
しかし、それでもクロリスが行動にでなかったのは生死の境が分からない子供であったから。
殺すという明確な殺意も彼等への恨みもなかったというだけの事であり本当に彼女にとっては恩人であるヴァイシアに認め褒められたいが為に殺すだけの存在であった。
(大方、この国の領土から逃げる者が大半でしょうからある程度の人間はそちらと同行させてありますし直に空気感染をさせれば終わりですね。)
そう思いつつクロリスは横の案内版を見つめた。
(成る程、構造はこんな形でしたか、なら)
クロリスはメアリスに思念伝達を行う。
〘メアリス、私の目の前の死体を出来るだけ小さくしてくれる?目にも視えないぐらいに小さくね?〙
〘分かった!〙
メアリスからの返事と共に死体が砕け散る音が響き渡り骨が塵の様に砕け小さくなった後、
〘後は、この砕けた死体をこの空気孔に吸い込ませれば他の避難所にも感染させられる。〙
〘お姉ちゃん凄ぉぉおおい!!けどもっと深い所にも人いない?〙
確かにクロリスよりも遥かに深い所にも貴族達が避難する避難所があるにはあるが…。
〘褒めてくれてありがと、けどそこは問題ない。
ヴァイシアお姉様が片付けついでに処理するでしょうから。〙
〘そっか〜。〙
そう、人造種のエネルギー供給源を断つ為にヴァイシアは地下にて高速移動を行いつつ片っ端から避難所の施設ごと貴族達を皆殺しにしていたのである。
そして…。
「終わったな、あの女王達が動き始めた国も滅びるぞ。」
まるで日焼けしたエルフの様な見た目のエルフが天空城の鉄格子越しから国王ガルデナに向けて言い放つ。
ダークエルフとエルフの違いはステータスの高さでありダークエルフとは言うが実際の見た目はほとんど通常のエルフとは変わらない。
しかし男は変わらぬ口調で語る。
「だろうな。だが人造種の能力制限を解除し天空島の主砲を連続放射すれば多少の時間稼ぎにはなるだろう。
その時間で人造竜を起動させる。」
国王ガルデナの口調が一切変わらないので面白くないダークエルフのダナシア。
しかし、ダナシアはここまで男の精神が強靭な事に驚いていた。
しかし何故、ダナシアが無傷で生存しているのかというとそれは協力関係の存在がいるためである。
(ダナシア殿、身体に異常はどうですか?)
落ち着いた口調の青年の様な声がダナシアの脳内のみに響く。
(問題ないな、悪いなかなり長い期間も助けてくれて)
(契約ですからねぇ。貴女は私を悪魔界より顕現させ受肉させる事を私は貴女の安全を守る事が契約条件。
ですがその関係もそろそろ終わりそうですがね。)
まるで懐かしむ様な口調である。
しかしこの契約関係によりダナシアは、人造種化させられることもなく監禁のみでダナシアへの干渉は止まっていた。
(姉様が来ているようだし怒られそうだけど…まぁ命があるだけマシか…。)
その様にダナシアは思いつつ同時に確信していた。
もうすぐこの大陸の人間は全滅し魔王の自体が到来すると…。




