第78話 荒怒強欲VS傲慢爆拳
ラリアナの生成した亜空間内で向かい合う両者、一つは二本は鎌、二本は人の手の多腕の魔蟲ヴァイシア
対するは、筋肉質な長身の男であり肌に青白い脈動が流れる男であった。
それは過去にブランク含めた召喚者200以上を連れその後消息不明となったアームスである。
「お前、確かアームスとか言う奴だったっけ?
…なるほど、人造種化したのか人間の業は同族の人間にまで及んだか。
まぁ同族同士で戦争をするような種だし、そんなもんか。」
私はそう言うと鎌を開き戦争体勢に入った。
アームスもまた戦闘の姿勢である。
その場から消える両者、瞬間空間が爆ぜ爆炎が広がり轟音が轟く。
生じた煙はヴァイシアの鎌の一閃により吹き飛びアームスの腕に迫る。
もはや高速の数千倍以上の速度の攻撃であり回避など不能。
更には究極能力:『強欲之罪』の権能:生命奪取と特有級のスキルである『耐性大貫通LvMAX』を乗せた一撃であり姉三名や魔王アリシア以外の者が喰らえば即死である。
本気では当然ないが、無論アームスも例外ではなく一撃で完全消滅する、その筈だった。
特に苦戦することもなく勝てる。ヴァイシアは絶対の確信を持ち放った。
しかしアームスは無傷で立っておりヴァイシアは驚愕の表情を浮かべる。
(マジか。)
回避不能、防御も無意味、当たれば全て破壊し普通に即死の一撃、そんな攻撃を原型を保ち更には無傷で耐えるなど考えてもみなかったからである。
(チエさん、どうなってんの。)
ヴァイシアは即座にチエに向け問う。
1秒が数カ月に感じられるほどの超思考の時間の中チエから語られたのは
『究極能力を確認しました。』
権能は?
『一つは『堅爆之王』ウネヴァの『堅牢之王』と同等格の防御系の究極能力で爆発能力があることが先程の攻撃より確定しています。
もう一つは大罪系』
大罪系…。
『主の『強欲之罪』と同等の『傲慢之罪』と推定されます。』
傲慢、私の希有能力『慢心』の上位互換…。
なるほど。
私の攻撃を無傷で耐えたのは『堅爆之王』の防御によるもので
即死に関しては『強欲之罪』由来のものだったし多分『傲慢之罪』で相殺したのかな?
どちらにしても一筋縄ではいかなそうだ。
ヴァイシアの見立て通り同等格の大罪もしくは大罪の対となる美徳系ならば互いに相殺が可能である。
その為、大罪もしくは美徳系のスキル持ち同士の戦闘に置いてそのスキル由来の権能と即死効果は通用しない。
アームスは鎌を押し返しその勢いのままヴァイシアを殴る。
拳が当たると同時に爆発が生じた、その威力はヴァイシアの肉体を変え一度は瀕死にまで追い込んだ魔核弾頭と同等クラスであった。
更に拳程度の面積に圧縮された爆発であった為、レーザの如く一筋の線となりヴァイシアを数km吹き飛ばした。
踏ん張る練習しとけば良かったな。と思いつつ直ぐ様反撃の為、地を蹴りアームスの元に到着し連撃を浴びせるもやはりダメージが少ない。
『堅爆之王』には"的確防御"という権能があり攻撃に併せて防御効率を変える事が出来るのだ。
しかし、所有者の思考能力が高くなければ最大効率での運用は難しくアームスの戦闘iQの高さが際立っていた。
しかしヴァイシアの戦闘iQもまた凄まじく前世の経験則から直ぐ様対応し硬化時のアームスの身体を"削る"方向の攻撃に移った。
1の攻撃しか通らないならその1を何十何百と重ねれば倒せるのである。
再生能力は基本SPを消耗する。
まずはSPの枯渇を狙う。そう決めたヴァイシアは四本の腕による予測不能かつほぼ即死に等しい物理的連撃を放ち続ける。
しかしヴァイシアの部分硬化から進化した"集硬化"を施した鎌が少しづつ欠けていく。
(まずいな。チエさん何とか出来そう?)
『了解しました。ユニークスキル『創造者』より"万物創造"を再取得しました。
更に鎌の生命素材を変更します。』
そう言うと私の鎌は虹色に淡い光を放ち始めた。
そして虹色に光る鎌による一撃が直撃すると、先程までは掠り傷以下の損傷しか与えられていなかったアームスに明確なダメージが現れた。
その威力に満足したヴァイシアはさらなる猛攻を仕掛けつつチエの説明を受ける。
『鎌の生体素材を神鋼虹鉄に変化させました。これにより従来の強度、威力を1とするならば1万まで性能が向上しました。』
いきなり攻撃力が爆増し驚くヴァイシアだったが逆を言えばこのレベルの攻撃でも、アームスの防御を完全に破れない事に気づく事に更に驚愕する事となった。
更にチエさんが"魔道之書"を用い攻撃を開始した。
どうやらラリアナの亜空間を解析し外の太陽光を回収するべく宇宙空間にレンズを作成していたらしい。
更にレンズに集められた熱光は空間魔法を通じてこの亜空間に送り届けられる。
更に『耐性大貫通LvMAX』をフルで搭載しておりアームスにダメージは与えられずとも再生を妨害するには十分であった。
熱炎、真空、水貫、雷撃とヴァイシアの鎌、更に殴る蹴るの攻撃の応酬が続き少しづつだがヴァイシアが優勢となっていく。
しかしアームスも負けてはいない。
自己の再生と肉体のキャパを上回る程の一撃によってヴァイシアの腕を左2本を肩ごと吹き飛ばし右の手をへし折ったのだ。
しかし所詮は自己破壊前提の攻撃であり肉体のキャパを超えた攻撃でありヴァイシアの猛攻も止まらない。
そして死闘は10分間続き先に膝をついたのはアームスであった。
しかしヴァイシアもMPをほぼ全消費し再生効率も半減しており満身創痍であった。
コイツは楽にしてやろう、もう改造されているし言葉も通じないだろう。
そしてもう自分の意思で生きられないんだから。
人造種は自分の意思では生きられない存在である。
自分の意思で食べることも寝ることも楽しむ事も出来ず繁殖能力もなくただ利用されるだけの存在、奴隷よりも遥かに酷いであろう。
そんな人造種への改造により、人格を削除され食事も睡眠も必要としない存在へとなったアームスに最後の一撃を加えようとしたその時。
「あぁ、待った。少し話さないか?魔蟲族の者よ。」
あり得ないことにアームスの口からその様な言葉が発せられた。
人格は削除されている筈であり自由に喋ることなど出来る筈もなかった。
『恐らく期間が短かった事で完全に人格が失われなかった事と死期に近く人造種としての能力が働かなくなっていると予測されます。』
なるほど。
「遺言くらいなら聞いておく、安心して逝け。」
私がそう言うと
「ま、10分ぐらいは苦しみそうだが、アイツ等は無事か?」
アイツ等とは恐らくアームスの連れて来た召喚者達の事であろう。
「無事だよ。少しづつだけど自分の意思で行動できて来てるし。」
「なら安心だ。そういえば名前は?」
「ヴァイシア、魔王幹部の一人グウルの配下で軍を動かす元帥って役職のカマキリ女、一応アンタと同じ異世界出身。」
それから私は日本出身の高校生であることを話した。日本ではフルダイブ型VRゲームでかなりの実力であった事もその話が終わると納得した様に頷き。
「なるほど、どうりで出鱈目な強さな訳だ。
所でヴァイシア、お前元帥って話だがそこまで責任感を感じていないようだな。」
そっちの話になるのね。
「う~んそうだね。私は実際の所は副官にほとんど任せているから責任感はないかな。」
「なるほど、どうりでカリスマ性を感じないわけだ。」
「煽ってんの?」
「事実だが?」
コイツ、殺してやろうかな。と考えたがどうせ死ぬなら長く苦しんで貰いたいので生かしておくことにした。
「所で話は変わるがお前は日本の高校生だったそうだが家族はどうだった。何か言っていたか?」
恐らくは、異能大戦を私がやっている事について家族がどう思っているのか。という意図の質問だろう。
けど、
「私には実の母親も父親も居ないよ。被爆して死んだから、私も前世では片目が視えなかったり色々障害抱えて生きていたよ。」
中学まで施設にいたしその後養子に取られたけど義両親からは何も言われなかったな。
しかし障害に関しては思い出すだけで怒りに飲み込まれそうになる程には嫌な思い出しかない。
「被爆、そうか、また祖国は核をそちらに落としたか。」
また?祖国?てことは
「お前、第二次世界大戦時ののアメリカの人間か?」
「そうだ。
しかしよく第二次世界大戦の生き残りだと分かったな。
まぁ怒りを向けるのも無理はない八つ裂きにするなり怒りが収まるまで好きにしろ」
そう言いながら肩をすくめるアームスだが、
「別に、正直第二次世界大戦に関しては往生際が悪かった日本が悪い。
あのまま核を落とさなければ本土での殲滅戦になっていただろうし日本も戦後、あそこまでの回復はなかった。
…というか日本って国があったかも微妙だろうね。」
思い掛けない一言に驚いたのかアームスは驚いた顔をしていた。
しかし私は続ける。
「けど、それはあくまで戦争集結の為の切り札として使われたから、私の時代とは訳が違う。
あの野郎共はロシアとの戦争の地に日本を選び、ロシア兵を殺す目的で平気で日本領土で爆撃しやがった。
しかも『日本がロシア軍に侵入されその上資源と土地を奪われたのが悪い。』と言って巻き込んで核まで平気で落としそこに住む民間人もろとも皆殺しにしてくれたよ。
そもそも日本はそこまでの軍事力ないしアメリカに関しては助ける助ける言いながらロシア軍が完全に日本に上陸するまで放置、しかもアメリカとロシアの戦争で日本ほぼ関係ないしね。
んで、流石にヤバいだろって事で"あの"中国が、あの中国がイギリスとかのヨーロッパ諸国と一緒にロシアとアメリカに直談判してようやく終戦したんだよ?
その癖してアジア人は劣等人種だって馬鹿にしてるしさぁ。」
私は今まで思っていた事を全部ぶち撒けた。
それは物心ついた時から考えていた事である。アメリカが嫌いである。異能大戦の世界大会出場が決まったあの時も私はアメリカの野郎共を倒して鬱憤を晴らそうとしていた。
日本人も嫌いだった。
昔は礼儀正しいとか言われていたがもはや見る影もなく被爆し死んだ両親から障害を持って産まれた私みたいな奴の事をまるで虫でも見るような眼で見やがった。
それか、可哀想だと同情するふりをして自分がネットで良く観られたい奴もいた。
もはや私に関わる全ての人全員が敵で誰も信じられない、信じない、そのレベルで大っ嫌いだ。
けど、世界大会に出場する前に死んでコッチの世界に来た。
それでも、結構楽しくやれていたが、恨みは消えず、次第に楽しくも無くなっていった。
「そうか、子孫が済まなかった。謝って許される筈もないことだが、。」
「別に良いよ。アンタは関係ない。」
もうどうでも良い筈の事何だから。
「んで、お前これからどうする?」
これから?
私は首を傾げた。
「このフェネルフィシアもしくはこの大陸の人間達の事だよ。」
「皆殺し…かな。正直、核を使って来ている時点で生かす理由がないし。」
「ならその後は?人類をこの大陸から消し去った後はどうする?」
「そんな後の事、。」
私の言葉はそこで詰まった。
考えた事、あったか?前世でも今世でも…前世の時は復讐以外は考えていなかった。
今世では色々やる事があったし…けど、人間共に核を落とされてからは皆殺しにすること以外…何も…。
ちゃんと見てたか?その先の事、今の周りの事…。
自分勝手に振る舞って、結局私に何か残るものがあんのか?それって屑共と同じじゃないのか…?
「色々、考えている所悪いが一つだけ恐らくお前のこれからを左右する事を、言う。」
私はその言葉に耳を傾ける。
「お前にはカリスマ性がないと言っ、たがアレは軍を動かす者としてのものだ。
生物として、個人としてのカリスマ性は群を抜いている。
強い者に従う魔物や魔人の特性からしてもそれは大きな武器となる。
しかし、そんなもの、信頼も何もない紛い物、、大将がその様な器ではいずれ誰も付いてこなくなる。
今までは良かっただろうけどな。」
…確かに、別に良いって思っていたし別に従うなら従えって思っていた。
裏切ったら殺せば良いって…。
「恐らくこれからも生き、元帥として君臨し続ける。
しかし軍のない将には意味がない。生きる目的など自分で見つけるものだがそもそも存在しない者にカリスマは身に付かない。
そこで、お前に必要なのは責任感だ。」
「一人の魔王配下としての責任。民を守る軍を動かすという責任その責任を大切にすれば良い。
そして更に傲慢になり強欲に生きなさい。」
最後の言葉に疑問を持つ
「なんでだ。その二つは別に関係なっ―――
「関係ない。
そう思うか?だが俺は少し違うと思っている。
王たる器、軍を動かす者の器、家族を大切に思う器、全ての器にはその器に乗せられた全ての"もの"を守り抜くという強欲と傲慢がある。
そして、その強欲と傲慢は生きる意味となり、それに全力に生きる者の背にはカリスマが宿る。」
「カリスマ…。」
「分かってきたようだな。
生きる事に全力で結構、そして家族を守る事、趣味に全力になる事大いに結構!
その全力を出す行為こそが"強欲"であり突き詰めるべき自信となり、誇りに思い胸を張れることこそが"傲慢"でありさらなる自信の為の努力を産む。
お前はこれから、魔王の一配下としてもしかしたら他の魔王ともしくは神やそれ以上の存在と戦い死ぬかもしれない。
しかし、そんな時に何もない人生であったと思うような生き方をするか、、、最後の最後まで誇りを捨てず強欲で傲慢で意地汚く足搔く、それでいてカッコいい存在になるのか…。
決めるのは貴女だ。」
意地汚く足搔く…か…。
前世でもそんな生き方が出来ていたら…少しはマシだったのかな?…てかマジで未練有りまくりじゃん私、笑えてきたな。
でも、
「分かった、全力出して生きてみるよ。振り回される生き方じゃなくて、全員纏めて振り回して我儘いっぱい聞いて貰おうかな。」
私がそう言うとアームスは笑った。
「そうか、今まで溜めていた分存分に生き足掻きなさい。」
私は、アームスの言葉に救われたのかもしれない。
こんな大人が周りにいれば私も…。
そんな事を思いながらアームスを見送り背を向けて歩き始めたのだが…。
「あ、それと最期に一つ、、俺を…この国で召喚をしまくる国王ガルデナの野郎を殺しておいてくれ。
散々従わされてきたんでな。
あとこの手向けの腕は要らんし傲慢之罪を持って行け。何なら堅爆之王も持っていけ。」
まだ生きてたんかアームス、けど、。
「言われなくてもガルデナって野郎は殺すよ。
人間は皆殺しにするって決めてるからね。例外はないよ。
あと、そんなに言うなら貰って行くぞ。究極能力二つとも、。」
私は傲慢之罪で二つとも奪い取った。
「んじゃ、」
私は短く別れを告げたが恐らくもう届いていないだろう。死んだんだから。
きっちり10分は生きていた。
《エクストラスキル「慢心LvMAX」がユニークスキル「傲慢王」へと進化しました。
条件を満たしました。人間の魂およそ10万を確認しました。
特有能力「傲慢王」が究極能力『傲慢之罪』へと進化しました。》
どうやら資格を経たらしい。
色々、変化はあるだろうが後で確認しよう。
「さて、チエさんこれからは我儘沢山聞いて貰うから、よろしく。」
『今より酷くなるんですか…。しんどいですが付き合いますよ。』
苦労かけるねぇホントに。
まぁ、とりあえず
「ガルデナねぇ。私が殺してやるから待ってやがれ。」
私は、気持ちを新たにし次の戦地へと赴くのだった。




