第68話 絨毯爆撃
先に申し上げます。
黒沢日向の居た世界は我々のいる地球ではありません。パラレルワールド的な感じの世界とでも思ってください。ついでに戦争孤児です。
知型は直ぐ様違和感に気づいた、しかし時既に遅し艦内の人間が一斉に空間転移したのである。
知型は直感的に理解したコレは交渉を餌にした"罠"である…と。
死ぬ。
そう判断した"知型"は直ぐ様自らの王たるヴァイシアへの情報伝達を優先した。
彼等は人型とは言え"所詮"は昆虫である。
故に自らの命に対して何の執着もないのである。
しかし、爆発直前、ほんの0.001秒前に"拳型"と"毒型"が"知型"に飛びついた。
そして"筋型"がその上から覆い被さり更に30匹の上位達が球体のように"知型"を覆った。
それは自らを壁とした天然の防御壁である。
七体蟲人は希有能力「多重結界」を平均Lv3で獲得している。
三体が主力となり一番生存確率の高く王の役に立つであろう人材を保護したのである。
直後、艦は大爆発を起こした。
………………………
「んな!爆発だと?!」
最初に反応したのはギメルであった。
一番近場にて何かあれば即座に反応出来るように自らの部下含め"空母艦"の3km離れた地点にて待機していたのだがまさか自爆するとは思っても見なかった。
〘元帥ご報告が〙
〘ん、だいたい把握している自爆しただろ艦が〙
〘はい。〙
〘状況確認を最優先で救助は別で出す。〙
〘御衣に〙
元帥の"感知"範囲の広さに興味を持ちつつも直ぐ様部下と共に状況を確認するべく爆発地点へと向かう。
状況は芳しくなかった。
半径300m程の森が衝撃波で倒され燃焼していた。
更に空気が悪い。
吐き気がする。
しかしギメルは直ぐに違和感を覚える。能力でも魔法由来でも無い爆発であると。
直ぐ様部下に周辺調査を行わせつつ自身は爆発原因の調査を行う。
すると奇妙な液体と粉の付着した木片を発見した。
"鑑定"するとそこには〘ニトログリセリン〙と〘火薬〙と表示された。
どちらも爆発性の物のようで魔素にてその危険性を高められていた。
この様な物であの様な爆発を起こせるものなのかと思いつつ部下達からの報告を受け危険物を分解する"魔粘生物"を集めさせる。
この危険物を残していては後々危険であろう更に"魔粘生物"は分解吸収という固有能力を持っているので処理には適しているのである。
そして救助として投下されたのは七体蟲人の一体、飛型が来たらしい。
オニヤンマなる昆虫を喰らい続けその特徴を体現した形状をしている人型魔蟲である。
直ぐ様何かを発見したのか急降下していった。
そこには肉の塊が転がっていた。
爆発によって生じた熱量に耐えきれなかった上位と七体蟲人三体の身体が熱により融合している。
もう既に死んでいるようだ。
しかし中に生命反応がある為"飛型"は急いで肉塊を引き裂いていく。
すると薄くなった肉塊を突き破り"知型"が這い出してきた。
相当の負傷を負い右腕は肉塊と融合していたので即座に切り落とした。
元々、各強力個体には"シルヴァ"より防爆、防炎繊維で出来た衣類を渡されており防御能力が爆発や火炎系の攻撃にはある程度対応出来たようだ。
だがそれでも大ダメージを負ったようでHPが半分以下まで消し飛んでしまった。
おかげでHP高速回復とSP高速回復更にMP等速回復が融合し希有能力「超速再生Lv1」を獲得したようで数分後には全開復するようだ。
飛型の案内で一度陣営に戻ろうとしたが自らを守った物達に思うところがあるらしく筋型と毒型、拳型の無傷な部位を切り離して回収し陣営に戻っていった。
陣営に戻ると糸型に頼み肉片を組み合わせ失った右腕の代わりとした。
「超速再生」となった事で部位再生も可能だというのに何故その様な事をするのか不思議に思う普通達を横目に動きを確認すると満足気であった。
そして直ぐ様出撃準備に取り掛かる。
間違いなく軍を動かすからである。
………………
さて、まさか自爆艦だったとはね。
なんか仕掛けてきそうな雰囲気はあったけど最後の最後でやってくれたな。
おかげでアリシアが報復に動きそうな所をラリアナさんが止めるという魔王が魔王を止めるという珍光景が見られたよ。
さて…担当直入に言おう。
ぶっ殺します一人残らず。
物騒?
先に手を出したのはアチラですが?
てか魔王の領地でド派手にやらかしてくれたし犠牲も出てるんでね?
無論殲滅するよ?
異論は認めん。
振りかかる火の粉は全力でぶっ潰すというのが私のスタイルである。
とはいえ下手に動けないので里長と上司に許可を求めたところ潰せ潰せとのこと。
ノリが軽いね。
まぁ元々人間は殲滅するのが魔王達の間で決められていたらしく気は熟したのである。
てかそれなら酒呑童子が魔王時代に勝手に動いてキレられた理由は何故かと言うと。
魔王の集会の日に戦争始め更には人間とヴァルアお姉ちゃんにボコされたのでキレられたらしい。
あとは幹部のメルシアさんに援軍要請を行ったものの1万単位で援軍を送ってくれるらしい。
頼りになるぜ!
まぁ到着まで1週間は掛かるけど…。
さて、会議なんぞいらんわ!
てか集まらずとも"思念伝達"でどうとでもなるしな!
メンバーを決めてさっさと進撃じゃ進撃じゃ〜!!
うん?
『100km程先にて大規模空間転移の座標固定を確認しました。
100隻の大規模艦隊です。』
なんか来たわ。
よし見せしめに叩き落とそう。
飛行能力持ちの竜長軍団と人蟲軍団更に緑鬼軍団を出しますかね。
え?様子見とか手加減はないのかって?
え?
それ必要かな?
確かに元人間だけど、私が5歳になるまでは普通に"第三次世界戦争"中だったし。
私のしていたゲームは全意識没入 型で超グラフィック。
つまりは殺すって言う行為が身近だった訳で人間だろうがなんだろうが知らん死ね。と言う感じである。
つう訳で行けそうかな?ギメル、ヴァイア、茨木童子?
『いつでもいけますぞ!』
『問題ありません元帥』
『余の軍もいつでもいけます。』
既に動けるようだ。良かった良かった。
まぁいつでも動けるようにしとけとは言っていたたからね。
緊急時に動けなくて何が軍だって話である。
さて…行くか。
…………………………
軍を移動させると言うのは大変である。てか大変そうだよね。
道が悪路なら尚の事、
私の軍勢は、普通に万は超える量だから仕方ない…が!大多数は人型魔蟲達である。
コイツ等普通に飛べるからね。
おかげで飛行能力を持たない緑鬼軍団の面々と竜長軍団の蜥蜴人族達を担いで空輸する事が出来ており何と時速200km以上で爆速移動が可能なのである。
それでも上位勢(私含めて)はだいぶ速度を落として飛行しているわけ何だけどね。
さぁて視えてきたぞオルァ!
大艦隊だな。迫力があるよ凄いし欲しいな戦艦。
…よし。
『ギメル君!先陣は君の部隊に任せよう!
さて、全軍に次ぐ!緑鬼軍団の移動用としてあの戦艦が欲しいので最低でも半分は傷つけずに制圧せよ!
中の人間?皆殺しだ!!』
『了解!』
『御衣!』
上空からの一斉攻撃にて撃墜した方が良いと判断したのだろう。
ギメルとヴァイアの指揮の元"竜長軍団"と"人蟲軍団"は初陣にも関わらず一糸乱れぬ隊列にて"上"を獲った。
「お嬢様、戦艦の上に沢山の何かがありますが…。」
私の側近をして貰っているマザーが出撃命令直後にその様な事を言う。
ん?
戦闘機じゃね?あれ…。
まぁ空母だしそんなもんでしょ。
しかし空母だけじゃなく戦闘機まで開発しているとは…。
しかも空母は飛んでるし…私のいた2122年では考えられないぐらいの利便性だね。
しかしあれを回収出来れば人魔大戦を有力に進められるしガチで欲しい。
お?さっそく戦闘機が何機か離陸したな。
速度は超音速ぐらい…。
龍人族の最高速度より遅いな。うん勝てるわ。
戦闘機は無視しよう。
空母の先端部分が開いていき何か金属性の筒が現れた。明らかに主砲だなアレは。
案の定かなりの量のMPが収束している間違い無く主砲だね。
ギメル達は…まぁ躱すだろ。
どんなもんかな?受けてみよ。
主砲から放たれたのは魔法によって加速した鉄砲弾であった。
私は真正面からそれを受け止める。
…期待していたよりも威力低いわ。
砲身の部分を真空にして抵抗を減らし、爆発系の魔法と爆風系の魔法で速度を上げ、更に状態異常系の魔法刻印を施した一撃ではあるけど…。
そもそも私にダメージを入れるには"耐性大貫通"が無いと意味がないからね。
でもまぁギメルとヴァイアが喰らったらHP半分ぐらいは削れそうだな。
まぁそもそも砲身自体動かないっぽいし自分に撃たれても躱すだろ…てか躱せ?
結果的に竜長軍団の精鋭達が戦闘機の相手を
人蟲軍団と緑鬼軍団が空母戦艦に侵入し人間を狩る戦法に落ち着いたようだ。
このまま油断せずにいこうかな。
『警告、MPが急速に吸収されています。抵抗に難航中。』
は?
……………………
ギメルはこの戦いにて他軍団を観察する余力を得ていた。
と言うのも希少龍人族たる彼にとって戦闘機などただの遅い空飛ぶ鉄の棺桶であった為である。
ギメル自身、試した事はないが"平均速度能力が240万"を超えており音速も超音速ももはや遅い以前の問題ではなかった。
一応装甲には多重装甲が使用されているようだが、自らの愛用武器:渦薙刀ならば獣の油を熱した鉄板でスライスする様な感覚で何の抵抗もなく両断出来るのだ。
それにしても流石は軍団長。人蟲軍団を束ねる存在と言うだけありヴァイア殿は成長速度が早い。
そう感じていた。
何より自分より遅いものの一撃で戦闘機を3等分に斬り裂いており更に戦艦の主砲、部下達の脅威となる豆鉄砲を片っ端から無力化している。
マザーと呼ばれている魔蟲族の者よりは弱いと侮っていたが判断力は流石としか言いようがない。
既に十隻は制圧した様なので直ぐにでも制圧出来よ、う?
なんだ!MPが奪われたのか?!
………………
突如としてその場の全軍全員のMPが半分以上奪われた。
更に能力による飛行補助が著しく低下した事で起動力が消え全軍が降下して行く。
原因は恐らく突如高度1万mに空間転移してきた50隻の艦隊だろう。
いきなりそんな攻撃を受けあまつさえ究極能力を保有するヴァイシアのMPさえ抵抗させる間すら与えず奪い取るなど…。
『原因が判明しました。
敵方のなにかしらの強力兵器の起動の為、大気中の魔素濃度が減少しています。
生命活動維持の為MPが放出されたと推測。
更に魔法関連の能力使用が制限されました。』
ヴァイシアは本能的に理解した。
−−−−コレ…ダメなやつだ…と。−−−−
チエさん!
『了解しました。
究極能力『魔導之書』にて軍用魔法:全軍座標転移の生成が完了しました。』
全軍座標転移とは自らが支配する軍勢を好きなタイミング、好きな場所に集団転移させる大魔法である。
コレは戦争観念を覆しうる魔法であった。
何故ならこの魔法があれば軍の指揮官一人が敵陣に侵入さえできれば全軍がその場に転移出来るのだから。
座標は異禍群の軍用エリア!
対象は全軍!
3秒後に飛ばせ!
『主を転移させるだけの余力が敵の魔法妨害によりありませッ』
了解、私は耐えるから全員飛ばせ!
死なれたら胸糞悪いからな!
『了解しました。全軍座標転移を発動します。』
異禍群の軍勢はその場から全員消え去った。
直後。
戦場は影すら残さぬ白光に包まれた。
魔核弾頭兵器の威力は想像を絶する威力であった。
簡単に防御力が億を超えHPも億を超える存在であっても直撃すれば9割程削り取る事が出来る兵器である。
更に無効級の耐性を貫通し再生すら阻害する。
そんな物を受ければ例えヴァイシアであれど無事では済まない。
そんな兵器が合計100発。
何より…
(アァー。ソレモ作ッテタカー。)
ヴァイシア…もとい黒沢日向は核戦争孤児である。




