第49話 大国エネルフィシア
…ふん、こうなることは分かっていたし覚悟もしていたがどうやら正解だったらしいな。
そう思うと同時に
「概ね、予想通りに動いてくれたようだねアームス?」
と薄暗い石畳の部屋にその低い声が響き渡った。
ここは恐らく天王宮より下地にある場所だろうなと俺は考える。
あの魔蟲族は恐らく俺を解放しようと先に解析してくれたのだろうが呪いがよっぽど高性能だったらしい。
俺は強制帰還させられ更に鎖で繋がれていた。
そもそもこの大国エネルフィシアは天空都市である。もっといえば都市部に該当する区画のみが浮島にて構築されている。
貴族階級や納税率の高い者が優先的にこの天空都市での生活権を得ることが許される。
では何故"天空都市"なのか?コレは言ってしまえば簡単な話で"魔物は空を飛行可能な種族が少ないのである"。
地上型の魔物から襲撃されるのを恐れるなら何処が一番安全かを考える時、人は空に国にとって重要な施設や王宮を飛ばすことを考えた。
しかしこの異世界であっても浮島などあり得る訳がない。
魔法ならば可能か?とも思うがそれも違う。魔法の行使には"術式の構築"、"術式にMPを流す"、"術式にMPを流す為のMP"と魔法の行使にはMPが欠かせない。
この都市部だけでも、100km³の面積があるし当然"面積"だけでなく体積も凄まじい。
物を浮かせる魔法はあるその前にそんな大量のMPが何処にある?
…そう思ってはいたのだが、ようやく納得がいく答えを見つけた。
この部屋にはMPが気体となった魔素が充満し過ぎている。
更に石畳の石と石の隙間の溝だがコレが蒼白く発光している。床だけではない壁も天上も全ての隙間が蒼白く発光しているのだ。
そして俺の「魔力感知」ではコレはMPである。
恐らくS級オーバー級の存在がこの地下に眠っている。
そんなこの部屋に一人の男が現れた。
この大国エネルフィシアの55代国王にして人造護種製作と異世界からの人員確保に拍車をかけた狂学者野郎。
−−−−−−−ガルデナ・エネルフィシア−−−−−−−−−
ガルデナは軽く部屋を見回したあと俺の目の前に立つそれと同時に近くの大国エネルフィシアの英雄メドアが片膝をつく。
「やはり召喚者を野放しにするのは良くなかったのではないでしょうか?王よ。」
その言葉に笑顔で答えるガルデナ、どことなく上機嫌である。
「メドアよ何を言うか。彼は立派にこの大国エネルフィシアの為に十分な情報を集めてくれたのだぞ?」
俺がお前等の為に情報なんぞ集めた覚えはないは!!と叫びたかったが口に枷がつけられており喋れもしない。
クソったれが。
「まず一つは、あの大鬼だ。
アレは異世界から取り寄せたモノでは無くたまたまそこにいた存在だ。
たまたまいたので捕まえ転移者共と同じ空間に入れていたがアレの周りでは魔法の一切が行使出来なくなる。故にアームスに転移者共と共に連れて行かせたのだよ。」
メドアはその言葉に少し疑問を持ったのか質問をする。
「しかし王よ。あの時は確か魔蟲族の新系統の"抹殺"あるいは"排除"を目的としてアームスに召喚者を200名連れて行かせたと記憶しているのですが。」
「そうよな。確かに魔蟲族は脅威である。
千年前の勇者と魔王の戦いに突如乱入した魔蟲族はどちらも相手にしながらどちらにも大打撃を与える程の実力を持っていた。
だが、魔蟲族は現在まで森人の結界にて洞窟を出られない状態にあった。
それ故に、アレは虚言よ。真の狙いは魔王の領地にアレを連れて行かせる為のな。
現に見よ!魔力回廊の運用効率が上がっているわ!」
高笑いするガルデナ
「更に二つめだが、魔王領の戦力の確認だな。
魔王を名乗るからには魔王本人は、S級オーバー個体である事は大前提であろう?
だが他戦力の確認は出来ておらんのでな。
その為のものよ。
呪いには、その者がどのくらいの存在値の者と接触したのかを記録する者も含まれておってな?
魔王領の森のなかでさえS級オーバー個体が4体と通称のS級モンスターがいたようだ。」
S級オーバー個体というのは恐らく俺を助けようとしていた。あの魔蟲族だろう。更にその後ろにいた。下半身が蜘蛛の白髪の女性や紫髪の子供、金髪の高圧的な者が恐らくS級オーバー個体の4名だろう。
しかし戦力を把握したからと対応できる強さではないぞあんな者。
「なんと!S級相当がそんなに?!」
「どうなっているのですか?!」
「千年前に台頭した魔王と侮っていたがそれほどの戦力をどうやって?」
「落ち着くのだ皆の衆。
案ずる事はないぞ?まず勇者とその軍を少しばかり魔王の軍にぶつける。
次にある程度の所で一度勇者達には帰還してもらう。
こうする事で敵は恐らくだが我等を敵と認識するだろう。
そうなればあとは容易い、我が国に向かって侵攻して来るであろう?
我が国の領土内ならば我が国の兵器たる人造護族が使用できる。
弱い物でもC級相当つまりソレ以下の人造護族は存在しないということなのだよ。」
そこからガルデナは語り出した。
エネルフィシアには生命複製技術があるがコレは異世界の技術である事。
異世界の人間が造れる技術を我等が造れないはずもなく完成し更に改良した結果、食料問題の解決にも繋がったこと。
そして一度、強い魔物を討伐さえしてしまえば生命複製技術で複製し我が国を護る為だけに改良さえしてしまえば運用が可能だということ。
しかしここで問題があった。
一つは、食事だ。彼らも生物である為食事が必要である。
二つは、生命複製を媒介にしている為の能力の取得難易度が高いこと。
しかしコレはガルデナの研究部隊とガルデナの屈指の頭脳により覆る事となる。
一つ目の食事に関してだが、MPを生命活動の根源として改造することで突破した。
コレによって人造護族は食事の必要が無くなった。更にMPさえ補充すればいくらでも蘇る性質上、人造護族には希有能力「不死体」が備わっている。
「不死体」は、肉体の一割さえ残っていれば死なないと言う能力らしい。
次の能力だが、能力というのは主に本人の意思で獲得可能なものと、本人の行動によって獲得可能なものの二種類ある。
コレばかりは、本人意思のない、本の少しの本能も与えてはいけない人造護族にとって攻略不能であった。
しかし外部から"外付け"で能力を与える事は可能だった。
その為、B級相当の人造護族には希有能力を複数保有している物が多い。
しかし何処から能力を引っ張り出してきたのか魔物からでもいけるが、効率と安全面を考慮するならソレは悪手だろう。
だがいるではないか異世界に沢山の逸材が、異世界の者がこの世界に呼び出される際、最低でも希有能力を獲得する。
その為、人造護族に召喚者の人格を排除した状態で合成してしまえば能力持ちの人造護族が誕生する。
人格の排除が大変ではあるが効率的な方法も日々研究されているらしい。
コイツ、俺の目の前で良く言えたものだな。
だが余裕そうなのもわかるぞ?俺のこともするつもりだろう?その人造護族にな。
結局俺はなんの発言も出来ずにガルデナの命令で動くようになった肉体で自らの滅びの場に案内される事となった。
ガルデナはアームスの人格の排除をする為の部屋に騎士達を連れて行かせたが自分は別の場に赴いた。
天空都市の直下にあるもう一つの都とも言えるこの都市の地下には、人造護族のMPを製造する為の物。
いや製造ではあるが厳密にはこの惑星のエネルギーの脈を回収する為の存在の確認である。
我がエネルフィシア最強の人造護族であり切り札たる人造護龍族である。
世界最強の龍種とその対極たる竜種の生命情報を元に様々な魔物を媒介に製造したものである。
竜種は、十匹分の生命情報を使用した奴等は、物質生命体である為、鱗一つでもあればよいのだ。
だが龍種は違う。奴等は精神生命体であり生命情報の引き出しが出来ない。その為、古龍を生け捕りにしその古龍を素体として製作したのだ。
龍種には惑星のエネルギーの脈に干渉する力がある為ソレを利用しエネルフィシア全土にエネルギーを送り出すことにも成功した。
更に龍種の擬似的なエネルギー吸収を機能とした物を開発し他国に売りつけたことで人類はまた一歩、魔物の恐怖から怯える時代から抜け出したのである。
「コレこそが人間族の生き残る最後の希望なのだ。
クロノス様もみておられることだろう。」
魔物や魔族からすればこの行為は宣戦布告である故に人魔大戦まで残り一ヶ月の時間的猶予は進み続けている。
………………………………………………………………
作者メモ 世界樹について
惑星に9本ある世界樹ですがコレ結構重要ポジションです。
まぁ世界樹なんてゲームとかでも重要なんですがね。
基本的に世界樹の役割は二つです。
一つ、惑星の地下に脈のように流れる膨大なエネルギーの循環。
コレがないと惑星でヤバい魔法ぶっ放した野郎がいてその魔法で大陸消し飛んだとなっても惑星が再生もその魔法の防御もできません。
二つ、世界基盤の多世界進出の手助けですね。
基本的に世界樹がある世界には能力や魔法がありますが世界樹に何らかの他の世界線や宇宙、惑星に干渉する能力がありその能力でその世界に寄生。
寄生した世界に世界基盤が生える仕組みです。
生えてきた世界基盤はその世界の生物に能力や魔法などの世界基盤効果を付与します。
世界樹って誰かの意思で動いているとも言われていますよ。




